第118話 旧アクア鉱山探索⑫

「つまりセレナの生属性と組み合わせたおかげで、ネロの水魔法が効いたってことね」


 僕の説明でフィアが納得してくれた。


「そんな手があったんだね。う~んスイムが無事で良かった~」

「スピィ~」


 エクレアが嬉しそうにスイムを抱きしめていた。スイムもエクレアの腕の中でとてもぷるぷるしている。


「ネロ。相手はまだ動いてます! 気をつけて!」

「うん。そうだね」


 セレナが注意を呼びかけてくれた。スイムは助けたけど、あの化け物はまだ生きている。


「Айббба――」


 相変わらず理解の出来ない不快な声を発し、化け物の無数の目玉がギョロギョロと蠢き出した。


 更に全身から触手が伸び先端の口がこちらに向けられる。


「あの溶解液で攻撃するつもりか。だけどその前に決着をつけるよ! 水魔法・噴水!」


 僕の魔法で化け物が吹き上がった水に呑み込まれた。これで決まってくれたらいいんだけど――


「жаБбв――」


 駄目だ。まだあいつは動いている。


「なんなのよあいつしつこいわね」


 うんざりしたようなフィアの声。確かにしつこいけど――


「だけど見て、煙が上がってるし何だか苦しそうだよ」

「はい。生属性が付与された水が効いてる証拠です!」

「スピィ!」


 うん。エクレア、セレナの言うようにこれまでと違って全く効いていないわけじゃない。スイムもそれは感じ取っているのかさっきまでの恐れも薄れてきているようだ。


「бббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббббб――」

「あいつ、様子が変――」


 エクレアが青ざめた顔で言った。明らかに様子が違うのは僕にもわかる。


 発せられているのも唸り声のようなもので単調な音が連続して鳴り響いてた。


「体が――膨らんでる」


 震える声でフィアが言い化け物に指を向けた。


「ス、スピィ――」

「何か、嫌な感じです」


 スイムの不安が再燃しセレナも嫌な空気を感じ取ってるようだ。それは僕にしても一緒。


 あのままだと不味い! 悠長なことを考えてる場合ではないだろう。


 予感でしか無いけどあと一発で決めれないとこの場から生き残れないようなそんな嫌な空気だ。


 だけどそんなこと出来る? 重水弾でも厳しい。恐らく噴水のように全身にダメージが行くタイプじゃないと……だけど噴水だと威力不足だ。

 

 考えろ何か――ふと化け物が鎮座する場所の水面を見た。何か渦を巻いている。今の動作に関係しているのだろうか?


 いや、まてよ渦――回転、それで勢いが増せば……。


「閃いた! 水魔法・水竜巻!」


 僕は頭に浮かび上がった新たな魔法を行使した。さっきの噴水と違い回転を加えたことで勢いが増した。


 イメージはまさに竜巻。螺旋状に回転し伸び上がる水に化け物が呑み込まれた。


「――――д!」


 化け物の全身から煙が上がる。これまでよりも大量の煙だ。そして化け物の全身も徐々に崩れ始めていく。


「――やった……」


 僕は勝利を確信した。その時だった右手の賢者の紋章が発光した。まるであの化け物の最期を見届けるように――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る