第117話 旧アクア鉱山探索⑪

 スイムを助けるために僕が思いついたのはセレナとの共闘だった。


「あの、私は何をすればいいでしょうか?」

「うん。セレナの生属性と僕の水魔法を融合させたいんだ。そうすればきっとあの化け物を倒せる!」

「え? 融合? でもそんなこと試したことないのですが……」


 セレナを見ると黒目が小刻みに揺れ動揺しているのがわかった。僕も正直言えば初めてだ。


 だけど間接的にならこれまでやっていた。そう僕の水だ。セレナはこれまでも僕の生み出した水に魔法を込めて生命の水を作ってくれていた。


 それならば直接でも可能なはず。僕はそう判断したんだ。


「いつも僕の水に魔法を込めるように今度は僕の体に直接力を注いで欲しいんだ。どう、かな?」


 僕の問いかけにセレナがハッとした顔を見せた。


「そういうことですね! わかりました。それならネロに直接力を注ぎます!」

「ありがとう。一緒にスイムを助けよう」

「はい! 待っててねスイムちゃん!」


 そしてセレナの手が僕の背中に触れた。何か温かい物が僕の中に注ぎ込まれていく感覚。


 これがセレナの生属性――まさに生命の神秘が感じられるそんな心地よさだ。


 後は僕がこの力を上手く水属性に組み込んで――あの化け物にぶつけるだけだ。


「スピィ――」」

「しまったスイムが化け物にッ!」

「そんな、嫌だよそんなの――」


 フィアとエクレアの悲痛な叫び。触手に縛られたスイムはそのまま化け物の口に放り込まれていた。


 あいつスイムを喰うつもりなのか。だけどそんなマネさせない!


「スイム今助けるよ――水魔法・重水弾!」


 再び僕の魔法によって生まれた水弾が化け物向けて突き進む。


 さっきまでの魔法なら吸収されて終わりだった。だけど、今度の魔法には生属性が注がれている!


「бйбйА――」


 化け物の触手が水弾に立ち塞がり先端が傘のように広がった。それで僕の魔法を飲み込もうということか。


 だけど――


「――ッ!?」


 あの化け物の様子が明らかに変わった。僕の放った重水弾を触手は呑み込むことが出来ず貫通してスイムを呑み込もうとしていた本体の顎付近に炸裂したからだ。


 化け物がジタバタと暴れだし触手の拘束も解かれスイムが空中に投げ出される。


「水魔法・水ノ鞭!」


 伸長した鞭がスイムを絡め僕の下へ手繰り寄せた。


「スイム良かった!」

「スピィ……♪」


 スイムも嬉しそうだけど元気がない。やはりあの触手の影響か。


「スイム、はい水――」


 少しでも元気を取り戻してもらおうとスイムに水を飲ませて上げた。今の水は生命の水と一緒だs。


 これで効果あるか――?


「スピィ――スピッ! スピィスピィ~♪」

「あは、よかった元気になったね」


 するとスイムの体に何か艶が戻った気がしてかと思えばスイムが鳴き声を上げながら全身で僕に擦り寄ってきた。


「ネロ良かったスイム無事なんだね」

 

 エクレアが駆け寄ってきてスイムの無事に安堵していた。

 エクレア涙目になってるよ。よっぽど心配だったんだね。


「二人とも無事でよかった。だけど、どうして今度は魔法が通じたの?」


 フィアも僕たちが助かったのを喜んでくれている。同時にさっきまで通じなかった僕の魔法があいつに効いたことを不思議がってもいた。


 だから皆にどうして魔法が通じたか説明することにしたんだ――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る