第111話 旧アクア鉱山探索⑤
「危なかった……」
あの化物から逃れることが出来て何とか一息つけた。
「灯りは一旦消しておいた方がよさそうですね」
ただ見つかる恐れがあるからとりあえずセレナがランタンの灯りを消した。かなり暗いけど致し方ない。
「スピィ~……」
スイムも流石に疲れた顔をしているしプルプルというよりはブルブルといった震え方だ。何かあの化物に対して恐れを抱いているようにも見えるよ。
「流石に無限に湧いてくるのは勘弁して欲しいわね」
フィアも疲れた顔をしているね……爆発の魔法をつかってくれたおかげでかなり倒せたけどそれでも倒しきれないほどに溢れてきたからね。
「でも、これだと戻ろうにも戻れないね」
エクレアが不安そうな声で呟いた。確かにここから戻るとまたあの異様な化物の大群に襲われることになってしまう。
さっきと同じように霧で上手くいけばいいけど一度試した手が再度通じるかは疑問だよね。
「暗いけど奥に進んでいくしかないわね――」
フィアが息をひそめるようにしながら呟いた。
僕たちは慎重に神経を研ぎ澄ませながら奥へと進んでいく。
「あれ? 灯り?」
ある程度進んだところで仄かに明るくなってるのがわかった。
――フゥゥウウウウウ。
それと同時に何者かの息遣いが聞こえてくる。
「えっと、誰かいる?」
「と、思うけど流石に人間じゃないと思うわよ」
「生命力の反応も人のとは違いますね……」
エクレア、フィア、セレナの三人はとても不安そうだ。これまで暗闇を進んできたしあんなのに追いかけられた後だから精神が疲弊してきているのかも知れないよ。
「僕が見てくるよ。皆は待ってて」
「え? でも……」
「ぞろぞろ行っても見つかるだけだから任せて」
「スピッ!」
エクレアが申し訳無さそうな顔をしていたけど、こういう時ほど僕が頑張らないとね。
「気をつけてねネロ」
「無理はしないでください」
フィアとセレナも気遣うように声を掛けてくれたよ。
「スピィ!」
スイムが僕の肩の上で張り切っている。ここに残るつもりはないようだ。
スイムと一番長いのは僕だし出会ってからは常に一緒に行動してきたしね。
だから僕はスイムと一緒に息の聞こえる方に向かた。
洞窟の先は少しずつ広くなっていた。天井も高くなり見渡しがいい。灯りの正体は――蝋燭だ。
壁に蝋燭が建てられていてその知覚に立っていた巨大な怪物が――
「三、いや四メートルはあるかも。見つかったら厄介かな……」
「スピィ……」
姿形は人に近い。だけど筋肉の塊みたいな体躯で肌は青白かった。白い髪が生えていたけど目には包帯が巻かれている。
そして手には骨で作られたような巨大な斧。頭蓋骨がところどころに残っていて不気味でもあった。
息遣いが荒いね。これだけ巨大だと吐く息の音も大きい。どうりでここから皆にも聞こえるはずだよ。
「もしかして目が見えてない?」
「スピィ……」
目に包帯しているあたり見えてないか見る力が弱いのかもしれない。
なら上手くやれば無駄な戦闘は避けられるかな?
その時だ――ふとあの怪物の近くに一匹のトカゲが見えた。口を開けて舌を伸ばし微かに鳴き声を上げた。
『グォオォオォオオオン!』
途端に怪物が動き出しトカゲに向けて斧を振り下ろした。何度も何度も何度も親の仇のように斧を振り下ろしている。
なんだかとても狂気的に思えた。トカゲに対して反応が過剰過ぎる。おそらく音に反応してるんだ。
しかも自分以外はすべて敵とみてそうだしこれは慎重にいかないと――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます