第110話 旧アクア鉱山探索④

 フィアの魔法で道がひらけた。崩落したと思われる場所の岩が砕け散ったからだ。


「結果的には奥に進めるようになったからよかったよね」

「スピィ~♪」

 

 結構な爆発だったし坑道が崩れたかもしれないってセレナがフィアを注意してたけど、崩したおかげで先に進めるのも確かだからね。


「もうわかったわよ。どっちにしてもこうやって先に進めるようになったんだから結果オーライよね!」


 フィアが洞窟の奥を指さして言い放った。


「はぁ~全く……」

「まぁまぁ」


 セレナがため息を吐いているとエクレアが彼女の肩に手を載せて宥めていた。


 そして僕たちは更に奥へと進んでいく。


「多分街の冒険者はこっから先に行ってないんだよね」

「もし見てたら気がつくはずだしここも見てないんじゃないかなぁ?」


 僕がふと思ったことを口にするとエクレアが答えてくれた。確かにあんな感じで道が塞がってるの見たら報告ぐらいするもんね。


「この奥に何があるのかしら」

「スピィ~?」


 フィアが小首を傾げスイムも似たように体を捻っていたよ。


「暗いし何が出るかわからないから気をつけないとね」

「うん。そうだね」


 僕が注意を呼びかけるとエクレアが鉄槌をギュッと握りしめて警戒した。セレナが後ろから照らしてくれているから何とか明かりは保たれてるけど奥は更に暗い。


「何か――来ます!」


 ある程度進んだところでセレナが警告の声を上げた。途端に何か周囲の壁から這い出るように現れた。


 それはぎょろりとした巨大な目が一つ。足が六本生えていてヒョロっとした細長い胴体。目以外は真っ黒に染まっていた。


 こんなの始めてみたよ……無害には思えない。戦闘は避けられないか。


『zllkzjfklajklfsajflafjlaflkafjalfjajlkajlkjkwぁjぁlrかlozklla――』


 見たこともない化物が聞いたこともないような言葉の羅列を口にし叫んだ。心が押しつぶされたような感覚に陥る。


「生魔法・不屈の魂!」


 セレナが魔法を行使。途端に心が軽くなった。良かった今の声は恐怖心を植え付けるものだったんだ。


「気をつけてください! まだなにかしてくる可能性があります!」


 セレナが叫ぶ。その可能性はあるけど問題なのは数だ。壁からどんどんこいつら湧き出てくる!


「ちょ、多すぎない!?」

「だったらまとめてふっ飛ばすわよ! 爆魔法・爆裂破!」


 フィアが魔法を行使。爆発が起きて黒い化物が吹き飛ばされた。


「これには文句ないわよね?」

「この状況じゃ四の五のいってられませんね。ですが――」


 セレナの顔が曇った。今出てきた化物はフィアの魔法で倒された。だけど――相手はまだ壁から出てくる。


「な、なんなのこいつら!」

「とにかく何とかしないと――水魔法・水槍連破!」

「武芸・雷撃槌らいげきつい!」

「爆魔法・爆裂破!」


 僕たちは出てきた化物を次々片付けていった。だけど倒しても倒しても増えていく。


「こんなのキリがないよ!」

「スピィ!」

「もしかしたらここにいる限り無限に湧いてくるのかもしれません!」

「ちょっとそんなのどうしたらいいのよ!」

 

 エクレアもスイムも悲鳴を上げた。セレナがこの化物について予想しフィアが困惑している。


 でも確かにその可能性は高い。戦うより逃げることを考えないと――そうだ!」


「水魔法・水濃霧!」

 

 僕は魔法で霧を発生させた。前にもカエル相手に使った魔法だ。


 周囲が霧に包まれて視界が悪くなる。ただでさえ暗いのもあり相手が僕たちを見失っているのがわかる。


「今だ皆!」

「やったねネロ!」

「急ぎましょう!」

「スピィ!」

「確かこっちよ!」


 そして僕たちは霧を利用して何とかその場から逃げる事が出来た――

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