第106話 素材の在り処

 ワンは杖の改良という形で依頼を受けてくれた。

 ただ僕にもやってほしいことがあるみたい。


「仕事って杖づくりを手伝えってこと?」

「馬鹿言うな。そんなの素人がどうこう出来るもんじゃない。杖はわしが仕上げる。お前らがやるべきことは素材あつめだ」


 フィアの問いかけにワンが答えた。素材集め――そうか。確かに杖を改良する以上素材は必要だね。


「わかりました。それは僕も必要だと思っていたので」

「フンッ。簡単に言っとるがあてはあるのか?」

「えっと、それは……」


 そう言われると言葉に詰まる。水系の魔石は需要がないから市場にはあまり出回らないし興味を持たれないからどこで手に入るかといった情報も極端に少ないんだ。


「水属性の素材ってあまり聞かないもんね」

「そのあたりも不遇って言われる由縁だもんね」

「何か情報があればいいのでしょうが」

「スピィ……」


 皆も困り顔だ。スイムも気落ちした声になってる。


「どうせそんなことだろと思った。全く素材の場所も把握してないとはな」

「す、すみません……」


 確かに杖が欲しいと言ってるのに素材も無いんじゃ話にならないよね……。


「言っておくがわしが言えるのは既に廃坑になった旧アクア鉱山なら使える魔石が手に入るかもしれんということだからな」


 ワンが面倒くさそうに言った。だけどその話に重要な内容が……。


「え? それって……」

「フンッ。勘違いするなよ。そもそもその鉱山も急に魔物が溢れて廃坑になった場所だ。素材集めと言っても簡単な話じゃない」


 そうワンが説明してくれた。そんな鉱山があるんだ……でも理想の杖にしてもらう為だ危険も承知の上だよ。


「ま、行くなら止めはせんが冒険者ギルドにはしっかり言っておくんだな。それとわしも暇じゃないあまりトロトロしてると気分も変わるかもしれんぞ!」


 発破をかけるようにワンが言った。だけどこれまでと違って優しさも感じた。


「わかりました。色々とありがとうございます!」

「……フンッ」


 そして僕たちはワンからの情報を頼りに冒険者ギルドに向かった。


 空いていた受付嬢の前まで言って話をする。


「実は廃坑になった鉱山に探索に行きたいのですが」

「え? もしかして旧アクア鉱山の事?」


 受付嬢に話を聞くと驚いた顔で答えてくれた。 

「でも、あそこはもう特に目ぼしいものはないと思うけど……元々水系の魔石が多く採れた場所であまり需要がなかったのもあって誰も行きたがらなかったぐらいだし」


 そっか元々は水の魔石が採れたんだね。


「それなら僕にはむしろ丁度いいです」

「そうなの? 珍しい子ね……」


 僕の話を聞いて受付嬢が目を白黒させた。やっぱり水系の素材は人気無いんだね。


「というか、そこって魔物が出てきたんでしょ? それなのに放置していて問題ないわけ?」


 フィアが疑問点を口にした。魔物が出てるのに放置していたら危険なことは確かだね。


「最初はそういう話もあって、何度か冒険者を募って探索しにいかせたけど倒してもキリがない割にある一定以上は増えないのよね。外に出る気配もないしでギルドとしてもとりあえず放置にした形で報酬も出なくなったから敢えて入る人もいないのよね~」


 それが理由らしい。簡単に言えば危険度が低いからそのままってことらしいね。


「それなら一緒に今どうなってるかも見てみますよ」

「本当に? 少しは気になっていたから助かるよ~報酬は約束出来ないけど何か発見出来たら出る可能性もあるから頑張ってね♪」


 というわけで廃坑の探索許可はあっさり下りたね。


 さて、折角だからこのまま探索に向かおうかなっと――

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