第107話 旧アクア鉱山探索①

 受付嬢によると目的地は鉱山地帯の奥まった場所にあるんだとか。


 鉱山地帯は職人街側の出入り口と繋がっているようだね。


 とりあえず必要な道具を揃えた後、僕たちは鉱山に向かった。


 購入したのは魔法のランタン、アクア鉱山の地図、それとちょっとした携行食だね。

 

 職人街から出て少し登った後、中腹あたりから様々な鉱山が目についてくる。作業中の鉱夫が仕事中なのも目についた。


 だけど僕たちの目的はそんな活気あふれる鉱山ではない。活動中の鉱山から外れて奥に向かうと職人の姿も消えていった。


 なんだかちょっと寂しいぐらいの場所だね。鉱石を運ぶための線路が名残として残っているけどだいぶ草臥れていた。


 木製の線路だけど所々腐ってしまっているようで、もうまともに機能しないだろうなと思う。


「何か見事に廃坑って感じね」

「――なるほど。こういった場所であればもしかしたらゴースト系の魔物が出現することもあるかもしれません」


 フィアが思ったことを口にし、セレナが出てくる魔物について考察していたよ。


「ふぇ? ご、ゴーストってゆ、幽霊……?」


 するとエクレアが僕に寄り添ってきてプルプル震えた。もしかしてそういうの苦手? というかち、近い……。


「エクレアってそういうの苦手なの?」

「え? う、うんおばけはちょっと……」


 ぐいっとフィアが体ごと話に割って入ってきたね。そしてエクレアが苦笑して答えたよ。


「アンデッドなら私が対処出来ますから任せて下さい」


 おっかなびっくりになってるエクレアに向けてセレナが言った。彼女の生魔法は確かにアンデッド系に対して有利に働く。


「とにかく油断しないようにしないとね」

「スピッ!」


 肩に乗ってるスイムも張り切ってるね。そして僕たちは廃坑の中に入った。


 ここの地図は買ってある。過去には坑道として機能していたからその時のが残っていたんだ。


 ただ最近のではないから保証は出来ないと店で言われたけどね。参考程度に考えた方がいいのかもしれない。


「ちょっと暗いわね」


 地図を参考に進んでいくとだいぶ視界が悪くなってきた。明かりが届かなくなってきたんだ。


「私が照らしますね」

「じゃあスイムいいかな?」

「スピィ~」


 僕はスイムから購入しておいた魔法のランタンを取り出してセレナに手渡した。


 基本支援に回るセレナは後方からついてくることになる。だから照らしてくれる役を買ってくれたんだ。


 魔法のランタンは魔石を利用して照らすランタンで普通のランタンよりは明るいし照らせる時間も長い。


 こういった探索にはもってこいだ。


「明かりがあるとやっぱり違うわね」

「うん。フィアの言う通り買っておいて良かったね」


 ランタンの購入は確かにフィアが提案してくれたんだよね。ダンジョンは明るいことが多いからつい忘れがちだけど、こういう洞窟は暗くなるものだからね。


「結構色々道具が残ってるものだね」


 進んでいくと折れたスコップや壁に突き刺さったツルハシ、それに倒れたトロッコなんかが見られた。


 やっぱり魔物が出たから道具はそのままに出ていったんだろうね。


「何か不気味な雰囲気だね……」

「確かにこれはそっち系が出てもおかしくないかも」

「う、フィアってば意地悪~」

「あはは。ごめんね。でも実際可能性はあるからね」


 エクレアが涙目になっていた。フィアは笑っていたけどアンデッド系は暗くてジメッとした場所を好むからね。


「あれ? ちょっと待って。何か液体?」


 セレナが足元を照らしてくれたけどベトッとした粘液がところどころに広がっていた。


 見るにまだ新しいかも……。


「魔物が近くにいるかも気をつけ――」

「ゲコッ」

「ゲコゲコッ」

「ゲコッ」

「ふぇ?」


 僕が注意を呼びかけると聞いたことのあるような鳴き声が周囲から響き渡った。セレナが声を上げて目を白黒させる。


「ゲコッ!」


 そして――天井から子犬ほどのサイズのカエルが落ちてセレナの頭に乗ったわけだけど――


「ゲコッ」

「ひ、ひぃいぃぃいいい――」


 これはカエルの魔物――それが舌を伸ばしてセレナの顔をなめた。


 セレナは喉を鳴らすような悲鳴を上げてそのまま傾倒した――不味い。カエルとかトカゲがセレナは苦手なんだよね……。

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