第103話 杖が疲弊した要因
「実はここ最近になって僕の魔法はかなり強化されたんです。もしかしたらその影響かも……」
杖が疲弊した理由をワンに伝えた。そうだと断言出来るわけじゃないけどワンの言うように急速に杖が疲弊しているならそれしか考えられない。
「急にだと? いや、そうか確かにそう考えれば……」
ワンの目つきが更に変わった気がした。これまで以上に真剣な目つきで杖を見ている。
「ネロの言ってる事は本当よ。最近のネロの成長ぶりは凄くて強敵も数々打倒しているわ」
「魔獣を倒したりしてギルドでも評価されてるしね」
「ネロの魔法で私も命を救われました」
「スピィ~!」
ワンに対してフィアやエクレアそれにセレナが僕の魔法についてしっかりと説明してくれた。
スイムも声を上げて僕の言ってる事が本当だと訴えてくれていて感謝の気持ちで一杯になる。
「――確かに短期間でこの状態になったなら杖本体と魔石で痛みに差があるのもわかるな」
「えっと魔法の事は信じて貰えるのですか?」
「何だお前は。信じられるかと文句でも言った方がよかったのか?」
訝しげにワンが僕を見てきた。勿論信じてくれたなら嬉しいんだけどね。
「いえ、その自分は水の紋章持ちなので……」
「だから何だ? わしは紋章がどうかなんてくだらんことはどうでもいい。事実は杖のみが語るのだからな」
――その答えを聞いてやっぱりこの人なら僕にふさわしい杖を作ってくれるかもしれないと思った。
「これから杖を大事にすると誓います。だからお願いです僕に新しい杖を作ってください! 皆を守る為にも僕には新しい杖が必要だとそう思えるんです」
ワンの話を聞いて新たな杖が必要という気持ちは更に強くなった。この青水晶の杖にもお世話になったけどこのままだと持たないかもしれないし。
「――フンッ。何度も言わせるなわしは杖づくりをやめたんだ」
「そんな……」
「何よこの偏屈ジジィ! もういいよネロ。他で探そうよ」
ワンはやっぱり杖作成を引き受けてくれないのか……フィアもいよいよ本格的に怒りをぶつけ始めてるし。
でも――
「ご、ごめんなさい! お爺ちゃんの失礼は私から謝ります! お爺ちゃんもここまで言ってくれてるのに!」
「黙れ! 小僧お前は水の紋章持ちだろう」
「え? あ、はいそうです」
「そんなこと何度も言ってるじゃない」
「フィア抑えて抑えて!」
腕を組み不機嫌そうに口にするフィアをセレナが必死に止めていた。
確かに紋章の話は何度かあったけどね。
「――フンッ。このままじゃとても杖を作る気にはなれんな。だが旨い酒の一本でも持ってくればもしかしたらほんの少しぐらい気持ちが傾くぐらいあるかもしれん」
「え?」
「は?」
「えっと……」
「お、酒?」
「スピィ?」
ワンの突然の要求に皆の目が点になった。僕も意外な話でちょっと驚いちゃったかも。
「ちょ、お爺ちゃんまたお酒なんて!」
「黙れこんなもの
「――は、はい! わかりましたお酒ですね!」
ワンの話をよく聞いて僕はそうワンに約束した。そして皆と一旦その場を離れた。
「本当にお爺ちゃんがごめんなさい!」
「そんな謝らないで。それに可能性は見えてきたしね」
店を出てすぐにロットが謝ってきたけど結果的に完全に否定されたわけじゃないからね。
ロットが謝ることじゃないよ。
「ネロ本気でお酒を持っていく気なの?」
フィアが眉を顰めて聞いてきた。やっぱりフィアはあまりワンにいい感情を抱いてないのかも。
「うん。それに僕に旨い酒をもってこいと言ったのには意味があると思えるんだ」
「意味?」
「スピィ?」
フィアに答えた僕にエクレアとスイムが不思議そうな顔を見せた。
「ネロにはきっと考えがあるのですね。だけど美味しいお酒なんてどこで?」
「それなら丁度いい店があったよね。試作品をくれた……」
「あ、そうか!」
エクレアがハッとした顔で声を上げた。そう、それにどうやらワンとは知り合いみたいだから好みも知ってるかもしれない。
とにかく僕たちはロットとも一旦別れ依頼を通して知り合った店主の店に向かったんだ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます