第32話 コンビネーション
「ゲロゲロッ」
「ゲコッ」
「ゲロゲーロ!」
ダンジョンの二層で現れたのは巨大な蛙タイプの魔物ブロッガーだ。手が大きくて水掻きが備わってるけどこいつらはそれを利用して器用にこちらの攻撃をブロックする。
「この手の魔物は大丈夫?」
「問題ないわ。それとネロお願いね」
どうやらエクレアはこの手の魔物に忌避感はないようだ。栄光の軌跡ではセレナが苦手としてたけどね。他にも爬虫類系が駄目だった。
「よし、それなら水魔法・水飛沫!」
エクレアから言われていたように魔法で水を掛けてやった。でもこれ本当威力は期待出来ないんだよね。
それにブロッガーは水に忌避感がない。この程度喰らっても怯みもしないよ。
「これでいいの?」
「上出来よ。まぁ見てて。武芸・雷装槌!」
エクレアが武芸を行使すると、鉄槌から電撃が迸った。そうか槌に雷を付与したんだね。
「さぁ行くわよ! はぁあぁああぁあ!」
エクレアが鉄槌を振り下ろす。あれ? でもそこには敵はいない――
「「「ゲコゲコゲローーーー!」」」
だけど、魔物達は何もないところで電撃を受け倒れてしまった。ピクピクと痙攣しているしこれって一体?
「やったわ! やっぱり雷は水と相性が良いわ!」
え? 雷が水と?
「驚いたよエクレア。でも今のってどういう意味?」
気になって僕はエクレアに聞いてみた。エクレアが得意顔で教えてくれる。
「ふふん。これはね水に私の電撃が伝わって相手が感電したのよ。つまり水は雷を通して威力を高めるのよ!」
「えぇぇええ!」
「スピィ!?」
それは衝撃的な事実だった。水に雷が通るなんて……あれ? つまり――
「もしかして僕をパーティーに誘ったのって?」
「うん。ネロが水魔法の使い手だったからよ。私の雷の力をより引き出せるのは水の紋章持ちだと思ったからね」
あ、なるほど。そういうことなんだね。何か凄く得心がいったよ。
同時にちょっとだけ残念にも、いやそれでも水属性を買ってくれてるんだから喜ばないとね。
そんなことを考えていたらエクレアがジトッとした視線を僕に向けてきた。
「ネロ、もしかして私が水属性なら誰でも良かったと思ってる?」
「え、えと……」
「あぁ! やっぱりそんなこと思ってたんだ! えいえいっ!」
「ほへっ!?」
エクレアが僕の口を摘んで引っ張り出した。何で!?
「言っておくけどネロだから私も安心して頼めたんだからね。パパとの戦いを見てネロの水魔法に感動を覚えたの。水だから誰でもいいなんてことないんだよ。ネロだから組みたかったんだからね」
ぷく~っと頬を膨らませてエクレアが訴えてきた。なにこれ可愛い……でも僕のために怒ってくれたんだ。
「ありふぁと、ふぇと、いっふぁんふぁなして」
「むぅ、仕方ないわね」
「スピ~」
エクレアが指を離した。ふぅ、結構ヒリヒリする。力あるよねやっぱり――
「ありがとうエクレア。そしてちょっと後ろ向きな態度とってゴメンね。エクレアが僕の魔法を評価してくれて嬉しいよ」
「ふふん。わかれば宜しい。ネロはね本当に凄いんだからもっと自信もっていいんだからね」
僕が凄いか――水属性だからこれまではどこか仕方ないと諦めていたところもあった。それは事実。でも水の理を知って賢者の紋章を授かった時点で僕の魔法は変われた。
だからきっともっと自信をもっていいんだね。勿論自惚れは禁物だけど。
自分の両手を見ながら考える。水の紋章と賢者の紋章。この二つのおかげで僕は変われた。
「でも、雷が水を通すってよくわかったね」
「うん。前に沼で武芸を使った時にピンっと来たんだ――あれ?」
エクレアが説明してくれるけど、途中で目をパチクリさせて僕の右手の甲をじっと見てきた。
「えっとどうかした?」
「ちょっと見せて!」
「え?」
エクレアが僕の手を取って食い入るように手の甲を見ている。う、何か照れる。
「やっぱり! 視えるよネロ! 君の言ってた紋章これだよね!」
「え?」
嘘、エクレアにも僕の賢者の紋章が視え、た?
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