第29話 エクレアの実力
「これが私の槌の紋章と雷の紋章を組み合わせた武芸よ。ちょっとしたものでしょ?」
くるっと僕を振り返ってエクレアが、どう? と問いかけるように言った。僕は素直に感想を伝える。
「いや、本当に驚いたよ。マスターも拳と雷を組み合わせていたけど、やっぱり
「スピィ~」
サンダースの姿を思い浮かべながらエクレアを評した。マウンテンウルフはよく出る魔物ではあるけどあの数を一度に倒せる使い手はそうはいない。
そしてエクレアの肩で寝ていたスイムも目が覚めたみたいだね。エクレアに気がついて頬にすりすりしてるよ。
「おはようスイム」
「スピィ♪」
エクレアが挨拶して撫でてあげるとスイムがふるふると震えて答えていた。
「ネロにもアピール出来てよかった。でもね実は私発見したの。私の力をより発揮できる方法」
「へぇ。凄いね。どんな方法?」
「フフッ、それは後の楽しみ。さてと、素材集めて行こうか」
素材、マウンテンウルフのだね。肉は固くて食用に向かないけど毛皮はギルドで換金対象になるんだ。
「ネロは解体出来る?」
エクレアがナイフを取り出し聞いてきた。やっぱり解体用の道具もしっかり用意してるんだね。
「大丈夫。水魔法・水剣――」
魔法で水を剣に変える。長さも調整してマウンテンウルフから毛皮を剥いだ。
「――やっぱりネロの水魔法凄いよね。水の形をそんなに自由に変えられるなんて聞いたことないよ」
エクレアに感心された。確かに僕も水にここまでの可能性が秘められてるなんて知らなかったもんね。
「私、魔法の袋も持ってるんだ。素材こっちで回収しておく?」
魔法の袋を持ってるんだね。
「魔法の袋持ちなんて凄いね」
「えっと、実は冒険者になった時にパパがプレゼントしてくれたんだ」
なるほどね。中々値が張る道具なんだけど流石ギルドマスターだね。
「それで素材の回収だけど、スイムの力があれば僕も可能だよ」
「え? スイムが?」
「スピィ~!」
するとエクレアの肩から飛びおりて、スイムが毛皮を体内に取り込んだ。
「え? 食べちゃった!?」
「違うんだ。スイム」
「スピッ!」
僕が呼びかけると、スイムが今取り込んだ毛皮を再び外に出した。
「すっご~い! スイムってばこんな特技もあるんだね」
「スピィ~」
エクレアが興奮してスイムを評価してくれた。スイムは改めて素材を取り込む。
「凄い凄い。スイムって賢いし可愛いし特技もあって本当優秀な仲間だね!」
「スピィ~♪」
エクレアに褒められてスイムもまんざらでもなさそうだよ。
「そうだ。素材やダンジョンでお宝を見つけた場合だけど、とりあえず半々でいいかな?」
「そうだね。でもこの魔物はエクレアが退治したものだしエクレアの戦利品でいいよ」
「それは駄目。パーティーを組んだんだからしっかり分けていこう。勿論その分ネロにも期待してるからね♪」
エクレアが笑ってそう言った。やっぱりいい子だよね。凄く親しみやすいし。
「ありがとう。ならその分僕も頑張らないとね!」
張り切るポーズを見せてエクレアに答える。エクレアがフフッと可愛らしい笑顔を見せてくれた。ちょっとドキッとするよね。
「じゃ、行こうか!」
「うん。そうだね。いざダンジョンへ!」
「スピィ~!」
そして僕たちはダンジョンへの歩みを再開させた。
それから先はこれといった魔物にも出くわすことなく、いよいよダンジョンの入り口に辿り着いた。
さぁ、いよいよ攻略開始だ!
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