第28話 パートナーと待ち合わせ
「スピィ……」
明朝。エクレアと約束したとおり朝から噴水に向かう。六時の約束だから起きたのは五時だった。スイムはまだ眠いらしくて僕の肩の上で船を漕いでいる。
そんな姿も何だか可愛い。起こすのも可愛そうだから肩の上で眠っててもらおう。スイムには寝袋とか必要な道具を取り込んで貰ってて既にお世話になってるからね。
「ネロ~」
噴水に僕がつくのとほぼ同時に反対側からエクレアが駆け寄ってきた。
何か空気の美味しい朝に見るとまた違って見える。エクレアはショートパンツにシャツと胸当てといった格好だ。
動きやすさ重視といったところかな。背中には昨日も背負っていた鉄槌が見える。
健康的な肢体が躍動していて天然の可愛らしさを感じてしまうよ。
「フフッ、何かタイミングバッチリだね。相性バッチリって感じ?」
「え? あ、相性!?」
屈託のない笑顔でそんな事を言われて僕はドキッとしてしまう。
「うん。ダンジョン攻略にはチームワークも大事だもんね」
覗き込むような姿勢でエクレアが答えた。あ、そういう意味ね。いや、そりゃそうだよね。何を考えてるんだ僕は。
「スイムもおはよう、て早いからまだ眠いかな?」
「うん。ちょっとウトウトしてる感じかな」
「スピ……ィ――」
細い声で答えるスイム。その様子にエクレアが口元をムズムズさせた。
「はぁ、もう朝から癒やされるぅ」
「あはは。とりあえずスイムは暫く肩の上で眠らせてあげようかなって」
「それなら私の肩に乗ってもらってもいい?」
エクレアがぐっと拳を固めてお願いしてきた。スイムもエクレアに懐いていたから問題ないかな。
「それじゃあ――」
そっとスイムをエクレアの手に移動させる。エクレアは自分の肩に優しくスイムを乗せてあげた。
「それじゃあダンジョンに向かおうか」
「うん♪」
「スピィ……」
そして僕たちは町を出て徒歩でダンジョンに向かう。
「街道沿いから山に入るわね。街道では魔物と会わないかもしれないけど山では獣系の魔物が出てくるようだから気をつけないとね」
エクレアが注意を呼びかけてきた。街道は比較的危険の少ない場所に設けられるからね。
ダンジョンまでは僕たちの足で一時間程度で着く予定だ。冒険者の感覚で言えばわりと近い方だ。
街道を進んでいる間は魔物に出会うこと無く進んでいく。途中雑談を挟んでね。
「そういえばパパがネロに変なことされたら言えだって。手配書を回すなんて言ってたのよ。ネロがそんな真似するわけないのに本当心配性よね」
そんな話もされたよ。脳裏に雷を撒き散らしながら追いかけてくるサンダースの姿が浮かんだ。
勿論何もするつもりないけど、誤解されただけでもとんでもないことになりそうだ……気をつけよう。
そしていよいよダンジョンのある山道に入る。ここからは魔物が出てくるかもだから注意しないと――
「「「「グルルルゥ」」」」
と思ってたら早速出てきたよ! こいつらはマウンテンウルフ。こういった山で出てくる魔物ではポピュラーな存在だ。
山肌に近い毛並みの狼といった様相だ。勿論魔物だけあって狼よりは凶暴だし攻撃性が高い。
それでも冒険者視点で見れば単独ならEランク以上で狩れる相手だ。だけど群れの数によっては厄介になる。今回は四匹。この数となるとEランクではしっかりパーティーを組んでないと厳しい。
「ここは私に任せてもらっていい?」
「え? 一人で!」
エクレアが前に出て鉄槌を手にして構えた。女の子とは思えない勇ましさだけど、はいそうですねとはいかないかな……。
「女の子一人危険な目には合わせられないよ」
「う~ん。じゃあ危なそうだったら助けてね、っと!」
言うが早いかエクレアがマウンテンウルフの群れに向かって飛び込んでいった。それを認めた魔物達が興奮状態に陥る。
ちょ、流石にそれは無謀じゃ!
「武芸・
だけど、それは杞憂に終わった。エクレアの鉄槌がバチバチと放電し着地の勢いに乗せて振り下ろすと同時に周囲に電撃が撒き散らされた。
マウンテンウルフが悶絶しバタバタと倒れていく。これで勝負は決まった。
「えへへ、どう? 私もちょっとしたもんでしょう?」
いやいや、ちょっとしたどころじゃないよ!
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