第27話 探索の準備

(これからダンジョンにですか。これはいい話を聞きましたぞ――)


 騒がしい酒場の中、一人の男がほくそ笑んだ。席を立ち会計を済ませ店を出る。


「黙って脇に逸れろ」

「…………」


 暫く歩いたところで彼に近づいてきた男が背中にナイフを押し当て命じてきた。


「――わかりました」


 命令に従い脇にそれひと目のつかない路地裏まで歩かされた。


「へへっ、いい身なりしやがって。たんまり金を持ってるんだろう? 命が惜しければさっさと、グッ!?」


 金を要求する男だったが突如体が仰け反る。恫喝相手の男が瞬時に後ろに回り込み背中に突きを見舞ったからだ。


「やれやれこの程度で私をどうにか出来ると本当に思ったのか? 随分と舐められたものだな」


 今度は逆に彼が男の喉にナイフを当てた。


「このまま首を掻っ切ることは簡単だがな」

「ヒッ、ゆ、許してくれ! こんなに強いなんて思わなかったんだ!」

「……フンッ。お前、仲間は他にいるのか?」

「はい?」

「さっさと答えろ。殺すぞ」

「ヒッ、い、いるよ俺みたいな奴は何人も。悪いやつは大体仲間だ!」


 答えを聞き、ほう、と男が感心を示す。


「そうか。貴様金に困ってるんだろう? だったら命を助けてやるかわりにちょっとした仕事をくれてやろうではないか――」


 




◇◆◇

 

「ダンジョン攻略には明日の朝から行こうと思うけど大丈夫?」

「うん。それなら準備しておくね」


 エクレアから提案されたけど僕としては特に問題ない。ダンジョン攻略は長丁場になりがちだから流石に今から向かうのは厳しいもんね。


「そうね。私もしっかり支度しておく。それなら明日のちょっと早いけど朝六時に噴水前で待ち合わせでどうかな?」

「わかったよ。宜しくね」

「スピィ~」

「うん。スイムも宜しくね♪」

 

 エクレアはひとしきりスイムを撫でた後、またね、と挨拶して帰路についた。マスターの娘だから今住んでるのも当然サンダース家の屋敷になる。


 一方で僕も準備は必要だね。


「おやスイムじゃないか。実はそろそろまた水をお願いしようとおもっていたのだよ」


 僕は教会によって神父と話した。どうやら依頼も出そうだったようだ。


「それなら丁度良かったです。実は新しくパーティーを組むことになって明日ダンジョン探索に向かうので戻るまで少し時間がいるのかもしれないんです」

「スピィ~」


 事情を話すと神父は両手を広げて笑顔を見せてくれた。


「ほう。もう新しい仲間が出来たのだね。その肩のスライムも新しい出会いなのかな?」

「はい。森で見つけてスイムといいます」

「スピッ!」


 僕が紹介するとスイムも張り切った様子で返事をした。


「ふむ。なるほど別れもあれば出会いもある。君にも辛い時期があったのだろうが、その見返りに幸福が訪れているのだろう。これも神の思し召し――」


 神父が僕のために祈りを捧げてくれた。明日はダンジョン攻略だから嬉しいね。


「神父様必要な分があれば水を入れていきますよ。それとは別にお願いなのですが――」


 僕の分も回復魔法を込めて欲しいとお願いした。神父は快く引き受けてくれたよ。ダンジョンに潜ることもあっていつもより多い三十六本を納品。それとは別に生命の水を四本作ってもらった。


「助かりました」

「これぐらい問題ないよ。いつも君にはお世話になってるからね。それじゃあこれサインしておいたから」


 神父から達成書を受け取り、改めてお礼を伝えて教会を出た。


 その後は道具屋によって魔法のトーチと寝袋を購入した。ダンジョン内で寝る場合もあるからね。


 後は市場で干し肉とか買っておいてスイムもお腹が空くだろうからドライフルーツも買った。


 それなりにお金は使ったけど魔獣退治の報酬もあったし問題なかったね。


「じゃあ宿に戻って明日に備えようか」

「スピ~♪」


 そして僕らは宿に戻りお風呂に入った後、明日に備えて早めに寝たんだ――



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