第19話 水の勝利
戦闘が終わり、生命の水を使って傷を癒やした。全部で二本使った形だね。改めて準備しておいてよかったよ。
追放こそされちゃったけどセレナには感謝だね。
とりあえず絡んできた相手は全員倒したけど、この後どうしようか……流石に見逃せないからギルドに言うなりはすべきだろうけど――
「おい、こいつらやったのお前か?」
「え?」
ふと、誰かから声が掛かった。連中が選んだ路地裏は人が滅多に寄り付かないような場所だったみたいなんだけど――
振り返ると頬に傷のある厳つい顔した男が立っていた。金色のマントを羽織っていて金色の鎧を装着している。
髪の毛は逆だっており眉毛がギザギザに曲がっていて稲妻のようだ。髪の色と眉毛の色は金色。鍛え上げられた鋼のような肉体をした男だ。腕も神殿の柱みたいに太い。眼力もあっていかにも強そうだ。
まさか、この人もこの連中の仲間?
「おい。どうなんだ?」
「――そうだけど、貴方もこいつらの仲間ですか?」
「仲間? ふむ。組織の一員が仲間だって話ならそうかもしれないがな」
そ、組織? もしかしてこいつら裏でどこか危険な組織と繋がっていたのだろうか? 正式には認められていない裏ギルドと呼ばれるもので盗賊ギルドや暗殺ギルドがあると聞くけど――
「言っておくけどスイムにも手は出させないし、お金だってお前らなんかには渡さない!」
「スピィ~♪」
僕の発言を聞いてスイムが頬に頬ずりしてきた。可愛いけど、今はこの男を警戒しないと――
「狙う、それに金か。つまりこの連中はお前を恫喝していたってことでいいのか?」
「え?」
あれ、仲間にしてはその質問はおかしいような……?
「どうなんだ?」
「あ、はい。そうです。それで返り討ちにしたのだけど、これからどうしようかなと思って」
「あぁ、なるほどな。わかったわかった」
そう言うと男は連中に近づき縄を取り出して見事に縛り上げてしまった。凄い手際がいい。
「よし、とりあえず行くか」
「えっと、あの行くって?」
「決まってるだろうが。冒険者ギルドだよ――」
◇◆◇
縛った彼らを引きずるようにしながら屈強な男が進む。
何か話した方がいいのかなとも思ったけどとてもそんな雰囲気じゃなかった。
「うわぁ~大きい~」
途中シャボン玉で遊ぶ子どもたちを見た。石鹸を利用した遊び道具だね。泡がぷよぷよ浮いているよ。
すると前を歩く男がシャボン玉に目を向けていた。
「えっとシャボン玉が好きなんですか?」
「――フンッ。別に昔遊んでやったなと思い出しただけだ」
遊んでやった。誰とだろう? 気になったけどそれ以上何も言わず男は前を歩く。
こうして僕は声を掛けてきた男と冒険者ギルドまで戻ってきた。
途中かなり目立っていたし引きずられた痛みで全員一度は目を覚ましたけど、この人が黙れと縛ったまま地面に叩きつけて再度意識を奪ってしまっていた。
そして一緒にギルドの中に入ったのだけど――
「あれ? ギルドマスター!」
僕たちに気がついたフルールがそんなことを叫んだ。僕も驚いて彼を見る。
「何だ? 何か顔についてるか?」
「いえ、その――」
いやいやまさかギルドマスターだなんて思わないし。実際僕もギルドマスターを見るのは初めてだったから全く気が付かなかったよ。
凄そうな人だなというのは肌で感じたけどね。
「どうしてネロくんがギルドマスターと一緒に?」
「えっと、偶然出会って」
「こいつらがネロを恫喝し強盗行為を働いたようだ。一応ネロの言葉が本当か調べておけ。大丈夫だとは思うがな。こいつらは牢屋に入れておいて準備ができたら尋問だ。間違いなかったら冒険者登録抹消の上でそれ相応の報いを受けさせて罪人として引き渡す手続きに入ってくれ」
ギルドマスターがフルールにそう命じた。対応が早い――
「ネロは引き続きフルールに経緯を説明してくれ。それと話が終わったら後で俺の部屋に来い。じゃあな」
「へ?」
「スピィ?」
ギルドマスターはそれだけ言い残し階段を上っていってしまった。
えっと、何か圧倒されて返事も出来なかったけど僕が後でギルドマスターの部屋に?
「本当驚いたわね。確かに魔石を見に来て色々聞かれたんだけど――」
フルールも目をパチクリさせていた。魔石って森で倒したあの植物が保有していた石のことを言ってるのか。
「とにかく言われたとおり話を聞くわね」
「あ、はい」
こうしてとにかく僕はフルールにことの経緯を話して聞かせたんだ――
作者より
おかげさまで異世界週間ランキングにて100位以内に入ることが出来ました!
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