第18話 水VS槍

 俺は無敵だと断言する槍使いルガとの戦いが続く。ちょっと痛々しい気もするけど実力は確かだ。


「水魔法・水守ノ盾みまもりのたて!」


 防御の為に魔法を行使。生み出した盾が相手の槍を受け止めてくれる。


「よし、これでガードはバッチリ」

「スピィ!」


 肩のスイムもやったねといった様子だ。


「なるほど読めたぜ。お前水魔法とかいいながら鉄板でも仕込んでやがるな? 全く卑怯な野郎だ」


 鼻息荒く相手がそんな予測を立てた。全くあってないけどね。これ水の力だし。


「だったら鉄板ごと貫いてやるよ。武芸・捻撃槍!」


 ギュルンッと凄まじい回転の加わった突きが伸びてきた。水の盾で防いだけど先端が盾から突き出ている。


 この威力だと何発も受けては盾が持たないかもしれない。

 

「ふん。中々の強度だな。だけどなぁ連続でやればどうなる?」


 相手も手応えを感じたようだ。このまま守ってばかりだとジリ貧になってしまう。


 反撃に転じるとして何が――市街だから使う魔法も考えないといけない。


 そもそも槍な上に伸びるというのが厄介――でも待てよ槍?


「閃いた! 水魔法・水槍すいそう


 頭に浮かんだイメージを魔法で再現。現出した水の槍がターゲットに向かって飛んでいく。しかも水同士だから僕の盾を突き抜けて進んでくれる。


「何だと!? チッ、武芸・槍回壁!」


 あいつ槍をぐるぐる回転させて僕の魔法から身を守った!?


「驚かせやがって。そんな武器まで隠し持ってるとはな」

「だから水魔法だって」

「黙れ卑怯者が」


 だからお前には卑怯だなんて言われたくないよ。


「ス、スピィ……」

「う、うん。確かに中々の使い手だね」

「は、今更わかったか。俺はテクニシャンだと言っただろうが。さぁまだまだ行くぜ武芸・連撃如意!」


 うわ! あいつ今度は槍を伸ばしながら高速で連続突きを繰り出してきた。


 これはキツい盾で守ってるけど――


「クッ!」

「スピィ!?」

「大丈夫。かすり傷だよ――」


 盾といっても全身をカバーできてるわけじゃない。その分数で補ってるけどどうしても隙間が生まれてしまう。相手は連続攻撃の一部がその隙間を突いてきたんだ。


「どうやら俺様の勝ちは見えてきたようだな。当然無能な水野郎になんて負けるかよ」


 勝ち誇ったような顔をで槍を揺らす。挑発なのかも。


 ――単純な魔法だけだと勝てないかも知れない。よく考えて――


「閃いた! 水魔法・水槍連破!」


 杖を強く握りしめ魔法を行使。水の槍を幾つも生み出し連射した。


「チッ、さっきからうざってぇ!」


 こいつ、中々機敏だ。僕の水槍をステップで避けつつ捌ききれない分は槍を回して防いだ。


「無駄だこんなもの――」

「――水槍連破!」


 僕は更に水の槍を連射した。相手は面倒くさそうに槍の回転で防ぐ。


 動いて躱しても体力の無駄と考えたのかも知れない。


「水魔法――」

「チッ、また妙な攻撃かよ!」


 更に魔法を重ねようとすると奴は槍を回転させ対応しようとする。


「水ノ鞭!」

「な、何!?」


 僕が生み出したのは槍ではなくて鞭だった。あいつは水槍が来ると思いこんで防御に集中した。それが狙いだった。


 これまで直線だった攻撃から一転、相手の死角から迫る鞭の軌道に変わった。槍を回転させても曲線を描き回り込んでくる鞭に対処できない。


「クッ! なんだこりゃ!」


 鞭がターゲットに巻き付いた。奴は怒りを滲ませている。必死に抗おうとしても無駄だ。そう簡単には外れない。


「テメェこんなもんでどうするつもりだ! どんなトリックかしらねぇがこんな真似しても無駄だ!」

「いやこれで勝負は決まった」

「あん?」


 僕の宣言にルガは怪訝そうに眉を顰める。だから奴に教えてやるんだ。


「――ねぇ、水は重いって知っているかい?」

「はぁ? 何言ってやがる! 頭おかしいのか!」


 折角教えてあげても理解してくれない。それならその身でしっかり味わってみるといい。


「水魔法・水ノ鉄槌!」


 魔法を唱えるとルガの頭上に水の槌が現れた。その光景にルガが目を見開き戸惑っている。


「あ、ありえねぇ。そうだこんなのハッタリが水が重いなんてあるわけぇね――グワァアァアアァアア!」


 全てを言い終える前に鉄槌が振り下ろされ、ルガがぺしゃんこに潰れた。完全に意識は奪った。もう暫く動けないだろうね――

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