第15話 近づいてくる不穏
倉庫の職員に変な物を見るような顔をされてしまった。
「いや、なんでもないんです。え~とそれでブルーローズに問題ありませんよね?」
「あぁ。痛みもないしこれは完璧だろう。とは言え正確な鑑定をするには数が多いからな。査定に少し時間が掛かるかも知れないぞ」
あぁそうなんだ。それならちょっと遅めではあるけどお昼でも食べてこようかな。
「スイムなにか食べたい?」
「スピィ~♪」
食事について聞いたらスイムがご機嫌になった。これは決まりだね。
「じゃあスイムもお腹が減ってそうなのでちょっと出てくるね」
「あぁ。なら二、三時間したら来てくれ」
今からだと夕方ぐらいだね。了承して僕たちはギルドを出た。フルールがスイムを撫でつつ名残惜しそうにしてたけど受付嬢の仕事があるからね。
「どこに行こうかな。スイムは何か食べたいのある?」
「スピィ~スピッスピィ~!」
「う~ん、やっぱり前と一緒で果物とか、後はジュースとか水分大目なのがいいのかな?」
「スピィ~♪」
僕の肩でスイムがプルプルと震えた。とても機嫌が良さそうだ。なんとなくスイムの感情も掴めて来た気がするよ。
僕たちが路上を歩いていると前から奇妙な集団が歩いてきた。揃ってボロボロの外套を羽織りフードを目深に被っている。
何か怪しい集団だね……僕は避けるように横にずれてみたけど、前から来た集団もちょっとだけこっちに寄ってきた。
何だろう? でもこのぐらいならたまたまかな――
「スピィ!?」
集団とすれ違ったその時、スイムの鳴き声がした。肩に乗っていた筈のスイムがいない。振り返ると集団が足を止めスイムを掴んで僕に見せつけてきた。
「な! いつの間に――お前たちどういうつもりだ!」
僕が叫ぶと集団がナイフを取り出しスイムに突きつけた。
「黙れ。いいから大人しく付いてこい。お友達のこのスライムの命が惜しかったらな」
「スピィ~……」
こいつら、もしかして目的は僕なのか?
でもどうして――
「大人しくしとけよ」
どうにかしてスイムを助けられないかと考えていると外套を纏った二人が近づいてきて今度は剣を少し抜いて脅してきた。
「――ついていけばいいのかい?」
「ふん。いいから黙って来い」
明確な答えはなかったけど折角仲良くなったスイムを放ってなんておけない。
とりあえず僕は連中の言うとおりにした。後をついていくとひと目のつかない路地裏に連れて行かれる。
「よう。ネロ。お前随分と羽振りが良さそうだな」
連中に連れてこられた場所では見覚えのある男が待ち構えていた。
筋骨隆々の男で以前僕に絡んできたことがある。勇者パーティーには僕みたいのは相応しくないからとっととやめろとか冒険者としてうろちょろされるだけで苛々するとかそんな理不尽な言い方されたっけ。
そんな男がわざわざ僕を呼ぶためにこんな真似を? だとしたら面倒ことになる予感しかしないよ。
「――スイムにこんな真似して僕を連れてきて一体どういうつもりだよ」
「随分と生意気な口を利くようになったな雑魚が。お前のそういう態度がそこの連中を苛つかせるんだぞ」
「知らないよ。大体この連中を僕は知らない」
「あん? ふざけんなよテメェ――この顔見ても覚えてないって言う気かこら!」
僕たちをここまで連れてきた連中がフードを上げた。それで気がついた。この連中前に森で僕を襲ってきた冒険者だ。
「思い出したか? 全くこっちはテメエのせいでお尋ね者扱いだ! ギルドにも入れねぇ上、手配書まで回されて他の冒険者には追われるわ散々なんだよ!」
「そんなのお前らが悪いんじゃないか」
僕相手に強盗行為を働こうとしたんだ。当然それ相応のバツは受けなきゃいけない。
「おいおい、随分と冷たいな。全く無能のくせに聞きしに勝る屑だな。やはりテメェみたいな奴にはお仕置きが必要だ」
「……お前こいつらのこととは関係ないだろう。何なんだ一体」
図体のデカい冒険者も覚えてはいるけど、前はこいつらと一緒じゃなかった。
「関係なくはねぇよ。こいつらは結構やんちゃしちまう時があったからな。そういう時には俺が裏で色々と面倒見てやってたんだ。まぁ子分みたいなもんだ。親分としちゃ子分がお前みたいな屑に舐められた真似して黙っちゃいられねぇよな?」
……前に絡まれた時からガラの悪い奴とは思っていたけどまさに類は友を呼ぶだな。
「とにかくだ。お前先ず有り金全部出せ。こいつらに迷惑掛けた慰謝料としてな――」
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