第13話 怪物の残した魔石

 巨大な植物の化物が枯れ果てた。閃いた酸性雨の魔法がよく効いてくれたよ。


 そして化物が消えた後には光り輝く石が残されていた。


「これって魔石!?」

「スピィ?」


 そうだ魔石だ。魔石は貴重な代物だ。魔物や魔獣が保有していることもあるけどそういうタイプは大体強敵だ。


 後は時折魔石の採掘できる鉱山が見つかったりもするけど数は少ない。


 それがこんな形で手に入るなんてね。確かにかなりの強敵だったから持っていても不思議ではないけどね。


 でも、この森にここまでの相手がいたなんてね。これはもしかしたら変異種だったのかもしれない。


 変異種というのは文字通り魔物の一部が変異することだ。そして変異した場合元の個体より遙かに脅威度が上がる。姿形も大きく変わる場合も少なくない。


「これはしっかりギルドに報告すべしだね。怪物は消え去ったけど魔石が残っていたから証明にはなるだろうし」

「スピィ~」


 魔物らが保有している魔石には様々な情報が詰まっていると言われてる。解析すれば保持していた相手についての詳細もわかる。そしてギルドには大抵魔石を解析できる職員がいる。


 だから持ち帰れば戦ったこの化物の正体もわかるかもしれない。


「スピィ~……」

「うん? あ、そうか怪我だね――」

  

 スイムが心配そうに僕の肌を見ていた。あの液が掛かっちゃったからね。何か思い出したらズキズキしてきた。


「大丈夫!」


 こんなときのための生命の水だ。ポーチから瓶を取り出して患部に掛けると傷がみるみるうちに治っていった。


 ちなみにこの手の回復薬は掛けてもいいし服用でも効果がある。ただ今回みたく治す場所が定まってる場合は傷口に直接掛けて使うことが多い。


「うん。これで大丈夫。セイラには感謝だね」

「スピィ♪」


 スイムが僕の胸に飛び乗ってスリスリしてきた。はぁこれも癒やされるよ。


「でもスイム随分小さくなってしまったよね大丈夫?」

「スピィ? スピッ! スピ~!」


 僕が心配して声を掛けるとスイムが何かを訴えてきた。なんだろう口をパクパクさせてるような?


「あ、もしかして生命の水が欲しいとか?」

「スピィ」


 スイムがプルプルと左右に震えた。違うってことかな?


「スピッ」


 あ、なんか体を瓶みたいにしたね。で、それは置いといてと、何かリアクションで表現していて可愛い。


「え、と置いておくのは生命の部分?」


 こくこくとスイムが頷く。生命の水から生命を置く、あ!


「水? 水が飲みたいの?」

「スピィ~♪」


 スイムがぴょんぴょんと跳ねた。そうか。でもなんだろう? 喉が乾いてるのかな?


 とにかく僕は魔法でスイムに水を飲ませてあげた。


「スピィ~♪」


 嬉しそうに僕の水を飲むスイム。すると驚いたことにスイムの大きさが元に戻っていった。


「へぇ! 水を飲めば戻るんだね」

「スピィ~♪」


 スイムはなんだかとてもごきげんだ。うんスイムが元に戻って僕も嬉しいよ。


 さて、戦いが終わったし僕たちはブルーローズの群生地に戻った。


「良かった無事だよ」

「スピッ」


 スイムも良かったねと言ってくれてるようだ。本当場所を移しておいて良かったよ。そうでないと酸性雨の魔法で枯らしかねなかったし。


 その後僕たちはブルーローズを採取。これで依頼の2500本は完了だね。


「じゃあ戻ろうか」

「スピッ!」


 スイムを肩に乗せて僕たちは町に戻った。ふぅ、それにしても思ったより大変な仕事だったね――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る