第12話 ブルーフォレストの怪物

 巨大な植物の怪物が現れて僕たちに襲いかかってきた。


「水魔法・水剣!」


 怪物が蔦を伸ばして攻撃してきたよ。水の剣を伸ばして振るってきた蔦に斬りかかる。


「うわっ!」

「スピィ!」


 でも駄目だった。防ぎきれずスイムもろともふっとばされてしまった。途中で出くわした魔物とは太さも圧力も全く別物だ。そもそも僕は戦士じゃないからそこまで剣の扱いに長けているわけじゃない。


 正直この勢いで叩きつけられたらヤバい!


「スピィ!」


 死さえも予見させる状況だったけどスイムが僕から離れたかと思えば膨張し受け止めてくれた。スイムの体は弾力がある。おかげで衝撃を和らげるクッションになってくれたんだ。


「あ、ありがとうスイム助かったよ」

「スピィ♪」


 スイムに抱きついてお礼を言った。スイムは元の姿に戻る。でも――


「一回り小さくなってる?」

「スピィ……」


 そうスイムが小さくなっていた。もしかして今の膨張で? だとしたらあまり多用させるわけにはいかない。

 

『アjfァrヲイファjワlジョア!』


 くっ! 魔物が奇声を上げた。頭がおかしくなりそうな声だ。やたら興奮しているのがわかる。


 そして蔦が再び蠢きだしそれぞれの蔦にも花が開いた。本体と一緒で口があって舌が伸びていた。


 こんなの相手に僕が戦えるのか? いや弱気になったら駄目だ。とにかく今は身を守る術を考えないと。


 でも、どうすれば――いや待てよ水で剣が作れるぐらいなら……。


「閃いた! 水魔法・水守ノ盾みまもりのたて!」


 僕の水魔法で生まれた盾が化物の蔦攻撃を防いでくれる。


 よかった。咄嗟のところで閃くことが出来た。


「スイム大丈夫?」

「スピィ♪」

 

 小さくなったスイムを手のひらに乗せて再び肩に戻す。小さくてもスイムはやっぱりスイムだ。とても可愛い。


 なんてほんわかしてる場合じゃない!


「水魔法・水守ノ盾!」


 化物が大漁の蔦で一斉攻撃してきたのを見て僕も魔法で水の盾を数多く生み出した。

 

 ほぼ囲むように出現した盾によって攻撃は遮られる。水だから見た目も半透明で視界が開けたままなのがいい。

 

 しかし今回の相手は遠慮なんてしてられない。だから僕は更に別な魔法を行使する。


「水魔法・重水弾!」


 圧縮した水の塊が蔦の一本に命中し破裂した。発生した衝撃波で囲んでいた蔦も吹き飛ばされる。


 やはりかなりの威力だ。こっちも水の盾でガードしてなかったら自分の魔法に巻き込まれるところだったよ。


 でもこれで邪魔な蔦は片付いた――


『ファjfkァfジャlkkfjkァfjkァlskfジャ!』


 と思ってたら奇声を上げて蔦がまた伸びてきた! こいついくらでもアレを生やすのか。切りがないよ!


「だったら本体を狙う! 水魔法・重水弾!」


 本体に向けて圧縮した水を撃った。だけど蔦が壁になって本体を守った。蔦は粉々になったけどあいつは幾らでも蔦を伸ばす。


「くそっ、思ったより厄介だな」

「スピッ!」


 スイムが警告のような声を上げた。蔦に生えた口が頭上に向かって何かを吐き出す。


 まさかあれって!」


「上!」


 僕は生み出した水の盾を上に移動させ更にスイムを抱きしめた。


 上から降り注いできたのはあの化物の口から吐出された液体だった。あれは地面を溶かしていた。つまり酸性なんだ。


 まともに食らったらまずい。だけど盾で塞いでも隙間が生まれる。すり抜けた酸性の液が僕に掛かった。


「熱ッ――」


 着ていたローブから煙が上がる。衣が溶けたんだ。


 熱いけど耐えられる大丈夫。大したことじゃない。


 酸性の液体は地面をも汚した。草花もあっというまに――いや、もしかしてこれなら。


「閃いた!」

「スピィ……」

 

 あの化物を倒す魔法が頭に浮かぶ。一方スイムがどこか悲しげな鳴き声を上げた。手がちょっと爛れてしまっていてそれを気にしたのかも。


「大丈夫これなら後で生命の水を掛ければ治る」


 スイムを安心させるためにそう伝える。だけど今は治療している場合じゃない。

 

 ただあいつの場所が問題だ。あの場所で今閃いた魔法を放つのは問題がある。


「どうしたどうした僕は元気だぞ! その程度かよ!」


 だから僕はあの化物を挑発しつつ踵を返してその場から離れた。


 あいつは僕を餌と認識している。しかも手負いの獲物と思ってるはずだ。だったら絶対に――


『アjファッlkファkljァfjァfjァfkァファkljカァjlkjkァjヵjfklジャァjfljヵfklジャljfljファlf!』


 やっぱり追ってきた! 僕が場所を移動すると正面の土が盛り上がってアイツが姿を見せたんだ。


 回り込んでやったとこいつは思ってるのかも知れない。だけど逆だ僕がお前をこの場所に誘導したのさ!


「掛かったね! これで終わらせる! 水魔法・酸性雨!」


 魔法を行使すると奴の頭上から水が雨のように降り注いでいく。


『――ッ!? ァfjァkfァfjァflジャjファlファjlf!?』


 化物が悲鳴を上げた。この魔法は文字通り酸の水を生み出して降らせる。あいつが口から出した酸性の液体がヒントだった。液体だってようは水だからね。なら水魔法で再現出来ると思った。しかもイメージはより強力に言うならば強酸の雨が降り注いでいると言えるだろう。


 あの化物の酸で掛かった植物も溶けているのがわかったからね。それなら魔法で強酸を生み出せば勝てると考えたのさ。そして僕の予測は当たったようで悲鳴を上げながら化物の体が枯れ果てていく――

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