第9話 元メンバーとの再会

「スイム何を食べようか」

「スピィ~♪」


 ギルドを出た後、スイムと一緒にとりあえず市場に顔を出してみた。森でスイムは果物を食べていたから、もしかしたらそういうのが好きかもと思ったんだけど。


「このリンゴがいいの?」

「スピッ♪」


 案の定スイムは果物が好みなようだ。だから何個か買って与えたら嬉しそうに取り込んで食べていたよ。


 その後は知ってる宿で泊まることにした。勇者パーティーに入る前に利用していた宿で値段も手頃で食事もつくんだよね。スイムを連れていても特に問題なかったし昨晩はゆっくり休めたよ。


「さて今日から本格的にソロでの仕事だね」

「スピィ~」

「あはは、そうだったね。スイムも一緒にだ」

「スピッ!」

 

 スイムもどこか張り切ってる感じだね。さて僕はスイムをつれて先ずは教会に向けて歩き出した。


「スピィ?」

「どこに行くのって? えっとねこれから神父様にあってお願いしたいことがあったんだ」


 足の向く先が門の方と違っていたからスイムも気になったみたいだね。だから寄り道があることを教えたんだ。


「ネロ!」

「ガイ――」


 聞き覚えのある声がした。教会に向かう途中で元仲間のガイと遭遇してしまったんだ。何か不機嫌そうに感じる。


「お前まだこの町にいやがったのか! 出て行けと言っただろうが!」

 

 またその話か。確かに前もそう言っていたけど承諾した覚えはないんだよな。お金はただの手切れ金だって言って聞かなかったし。


「スピィ?」

「誰かって? えっと一応元パーティーメンバーで勇者なんだ」

「……なんだそのちっこいのは?」


 スイムが不思議そうにしていたから教えてあげると、ガイから質問が飛んだ。


「スライムのスイムだよ。ちょっとした縁があってね。今は一緒にいるんだ」


 僕が答えるとガイがスイムの事を睨み始めた。その後ろにはフィアとセレナの姿がある。


 何かフィアもスイムを見てるね。ガイみたいに睨んでるわけじゃないけど。


「……スイムになにかあるの?」

「な、なな、何もねぇよ! それよりいつ出ていくんだ!」

「いや、そもそも出ていく気がないよ」

「な、ふざけんな! いいから出てけ!」

 

 はぁ、全くなんなんだ。そんなに僕と関わりたくないならそもそも無視してくれればいいのに。


「最初に冒険者になったのもこの町だから僕にとってはもぅ故郷みたいなものなんだ。だから出ていくつもりはないよ」

 

 僕がそう話すと、ガイが口を結び、険しい顔を見せた。


「冒険者としてやっていくならお前の腕じゃこの町は無理だって言ってるんだよ。決められないなら俺が決めてやる。ここを出て西のノーランドへ行け。あそこは田舎町で危険な魔物も少ない。冒険者ギルドに所属してるのも気さくな連中が多い場所だ」


 ……いや確かにノーランドは知ってるしガイの言うとおりだけど――


「もしかして僕のこと心配してくれてるの?」

「ふざけんな! たたっ斬るぞ!」


 気になって聞いてみたら凄い剣幕で怒鳴られちゃったよ。う~ん確かにそんな筈ないか。だったら何で追放したのかって話だし。


 ガイがグルル~と犬みたいに唸ってると、その横にフィアが立ってるのに気がついた。その視線がスイムに向いている。


「スイムは人懐っこいから撫でると喜ぶよ?」

「え? い、いいの?」

「うん」

「スピィ」


 スイムがフィアに向けて頭を伸ばした。撫でて撫でて~とアピールしているように見える。


「そ、そこまで言うなら撫でてもいいわよ」


 そんなことを言いながらもフィアの手は既にスイムを撫でていた。頬が緩みきってるよ。


「わ、私もいいですか?」

「うん」


 セレナも一緒になってスイムを撫でていた。それをガイがすごい形相で睨んでる。顔が怖いんだよなぁ……


「二人がスイムに構うことがそんなに嫌なの?」

「誰がそんなこと言った! ぶった切るぞ!」

「えぇ~……」


 ガイは何でこんなにカリカリしてるのか……いや、わりと前から不機嫌そうなこと多かったかもだけど……


「ところでネロはどこにいくつもりで?」


 ガイとの会話が噛み合わなくて困ってるところにセイラから質問された。丁度いいからこっちの問いかけに答えることにする。


「うん。教会で水の回復魔法を込めて貰おうかなって」

「……そうですか。それならこの空き瓶にネロの魔法で水を注いで貰えますか?」


 そう言ってセレナが空き瓶を三つ取り出した。


「あ、もしかして魔力水?」

「違います。水だけ入れてください」


 何だろう? とにかく瓶に水を入れてみる。するとセレナが瓶の水に回復魔法を込めてくれた。


「これを使ってください」

「え? いいの?」

「以前頂いた魔力水のお礼です」


 追放された時に置いていった分のことか。でもいいのかな? ガイを見てみるとやっぱり不機嫌そうだった。


 やっぱり僕がセレナから受け取るのが嫌なのかな?


「セレナがわざわざ用意したんだから素直に受け取れや!」


 えぇ、そっちなの? いや、まぁせっかくこういってくれてるなら。


「ありがとう大切に使うよ」

「いえ、危ない時はすぐに使ってください」


 ニコリとほほえみながらセイラが言った。出し惜しみして死んじゃったら意味ないからそこは流石にわかってるつもりだけどね。


 受け取った瓶はベルトに付けてるポーチに入れておいた。ちょっとした物は大体ここに入れてる。


「ふん。お前らこっちも暇じゃないんだ。さっさと行くぞ」


 話が落ち着いたところで、ガイが二人を促して立ち去ろうとする。


「……ネロ。とにかくこの町からは出ていけ。せっかく可愛いペットまで見つけたんだからな」


 ガイが呟くように言った――何だろう? まるで警告みたいに聞こえる。更に言えば。


「えっとスイムを可愛いと思ってくれてたんだ」

「な、ちげーよ! 糞が! たたっ斬るぞ!」

「えぇ……」

「スピィ?」


 また怒鳴られた。そして顔を真っ赤にさせてガイ達が行ってしまった。


 なんだかよくわからないけどおかげで教会まで行かなくてよくなったよ。


「それじゃあブルーフォレストに向かおうか」

「スピッ!」


 こうして僕とスイムは町を出て目的地の森へ向かうことになったんだ――


おまけ

「スイムまだ何か食べたい物ある?」

「スピィ~♪」

「あ、スターのアイスだね」

 スイムが興味を持ったのはスターという星型の果物を凍らしたお菓子だった。星の氷菓という名前なんだよね。

「お姉さんこの星の氷菓を貰えますか?」

「あら可愛いスライムね何個いりますか?」

「スイムいくつがいい?」

「スピッスピッスピィ~♪」

「3個かぁそんなに食べたいんだね」

「スピィ~♪」

 スイムは星の氷菓が随分と気に入ったみたいだね♪

※お星様をつけて頂けるとスイムがとても喜びます☆

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