第340話
黒オーガのような強い個体を2体同時に倒せる魔法はないので、1体1体を個別に倒さないといけない。
つまり1体を足止めした上でもう1体を倒すだ!
迫ってくる1体に集中して土甲弾を放つ。
ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!!
3発放ったところでもう1体が距離を詰め攻撃してくる。
コイツには、風槍(回転)!!
黒オーガが攻撃体勢を解き防御を固める。
(もう少し引き付ければカウンターを狙えたか?)
風槍(回転)ではダメージは与えられないだろうが、体勢を崩すぐらいはできたかもしれない。
ここは気持ちを切り替えて零式改の発動準備に入る。
しかし…………
!?
(土甲弾で足止めした1体目の黒オーガが?!)
突進突きとでも言うか、防壁に穴を穿ったあのヤバい突きで身体ごと迫ってくる。
(この突きだけは喰らうわけにはいかない!)
左方から防壁と平行に突っ込んでくる黒オーガに対して、零式改の発動準備を中止して右側へと避けた。
「なっ?!」
避けた先に2体目の黒オーガが待ち伏せていた!!
(誘導された? いや、読まれたのか?!)
防壁に追い詰められる形になる左側には避けないだろうってことか。
待ち伏せていた2体目の黒オーガは、腰だめに構えて
1突き目をかわすが、すぐさま2突き目を繰り出され、
「くっ!?」
なんとか紙一重で避けるが、すでに黒オーガは3回目のモーションに入っている。
(三段突きとか…………沖田総司かよっ)
もう回避できる体勢ではないので反射的に魔盾2枚を出して防御した。
ドスッ!!
黒オーガの三段目の突きは魔盾2枚を突き破り俺の右肩の付け根あたりにヒットする。
(痛っ?!)
身体の芯まで響く痛さに顔を歪める。。
ただ突進しての突きではなかった分、その威力は魔盾2枚でかなり相殺されたようだ。
突きを受けた右肩のダメージは深刻ではなく骨も折られていない。アザぐらいにはなってるだろうがどの道すぐに回復させるのだ。
三段突きをかわされた黒オーガは特に気落ちする様子もなく攻撃を続けて来る。
突進突きを外した1体目も再び参戦してきた。
(この連携攻撃が厄介すぎる!! 反撃する隙がまったくない?!)
…
……
…………
二本角の黒オーガ2体による連携攻撃を、ダメージを喰らいながらもその都度回復させつつしのいでいく。
(なんとなくわかってきたぞ!)
1体を足止めするために土甲弾を撃っても、すぐに2体目が介入してくるために2~3発しか撃てない。
それでは足止めが不十分で2体目を倒すには至らない。
最大のチャンスは突進突きを回避した後だ。
あの突きによる破壊力は脅威だが、回避さえしてしまえば黒オーガはそのまますり抜けて距離ができるので、2体目を倒すための時間を稼ぐことができる。ギリギリのタイミングではあるが……
幸いあの突進突きは初見でも避けれたように回避自体はそれほど難しくはない。
ある程度俺との距離がある状態から仕掛けてくるということもあるが、予備動作も大きいので予見することが可能なのだ。
攻防が続き(と言ってもほとんど防御なのだが)、ようやくそのチャンスが巡って来た。
やや距離が開いた黒オーガが突進突きの予備動作に入る。
(ここだっ!?)
もう1体にあらかじめ土甲弾を撃って牽制しておく。
そして突進突きを回避して2体目に攻撃を…………
?!?!?!?!
すり抜けない?!
俺が避けたのと同時に突進してきた黒オーガが急停止した!
(や、やられた!?)
突進突きを回避された黒オーガがすり抜けずにその場に留まったことで、俺は2体に挟まれた形になってしまった。
それぞれの黒オーガが棍を構え…………
(2体同時で三段突き?! ヤ、ヤバい!!)
慌てて魔盾を黒オーガ2体に対して展開していく。
ドスッ!! ドスッ!! ドスッ!! ドスッ!!
次々と魔盾が破られダメージを負う。
(ダメだ! 魔盾が間に合わな……)
少しでも受けるダメージを減らすために後方に身を投げ出す。
ドスッ!! ドスッ!!
「ぐはっ?!」
三段目の突きがまともに胸にヒットして、胸骨が砕ける嫌な音が身体の中で響いた。
後方に転がりながら必死に回復魔法を発動させる。
(早く立ち上がらないと……)
骨が砕けた嫌な感覚が残る身体を無理矢理起こす。
(さっきのようなピンチで飛行魔法で退避できれば便利なんだけど)
戦闘中の飛行魔法による回避または退避は現実的ではない。
少しだけ滞空魔法で飛び上がってからスピードを上げていく仕様なので、相手の攻撃が届く間合いでは無防備な状態を晒してしまう。※違う魔法を同時に発動させることはできないので、魔盾による防御もできない。
特に近接戦闘中はまず不可能だろう。
(しかしもう勝機が…………)
突進突きを回避した後の隙が無いのであれば、もう俺に勝ち目はないように思える。
撤退……の二文字が頭に浮かんでくる。
ただ撤退するにしてもなるべく被害を抑える方法を考えなければならない。
魔物がコートダール国内を蹂躙する最悪な事態だけはなんとしても避けないと……
「えっ??」
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