第341話
「えっ??」
ギ……ギギィ……ギギィギギ………ギィギギィギ………
固く閉ざされていたレグザール砦の西門が内側へと開いていく。
ドドッドッドドッ…ドドッドドド……
開いた西門からひとかたまりの集団が飛び出してきた!
(騎馬隊?!)
ジェラード隊長代理が先頭を駆け、200騎ほどが後に続いている。
2体の黒オーガも新たな敵に警戒してるのか騎馬隊を目で追っている。
この隙を上手く付けないものか、と動こうとするが……
『オマエのマークは外さないよ』と言わんばかりに
(チッ! そうそう上手い話はないか)
西門からは騎馬隊に引き続き兵士も出て来る。
(一体何をするつもりなんだ?)
…………
……
…
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-少し前のレグザール砦の西側防壁上にて-
ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! …………
「なんだ? あの威力は?!」
「マジックシールドが意味をなしてないぞ!!」
「あの魔術士は誰?」
「撃て、撃てぇ!」
ベルガーナ王国から来たツトムという少年魔術士が、防壁の外へと降りて投石攻撃をしようと近付いてくるオーガに対して凄まじい魔法攻撃を行っている。
それにしても……
「あの魔法はなんなんだ?」
「おそらくサンドアローを巨大化させて撃ち出してるのではないかと」
魔法に詳しいのだろうか?
名も知らぬ参謀が答えた…………っと参謀の名すら知らないのには理由がある。
隊長含めた幹部クラスが私を除いて全滅してしまったために、応急的に補充してロクな挨拶すら交わさぬまま実務に就いてもらったからだ。
本来であれば旧知である各隊の指揮官を昇格させるのだが、戦闘が迫ってる中で実戦部隊から指揮官クラスを引き抜くわけにもいかず、代わりにベテラン兵士の中から適任者を選出してもらった。
「こちらの魔術士隊もあれを習得することが可能か?」
「無理……でしょう。
あれを1発撃つのに一体どれほどの魔力を消費しているのか、考えたくもないぐらいです」
「それほどなのか…………あの威力なら納得だが……」
ドォォォォォォォォォォン!!
「な、なんだ?」
「と、特殊個体?!」
「最近偵察に出した小隊や冒険者パーティーを殲滅しているというあの??」
ドォォォォォォォォォォォォォォン!!
「2体目?!」
「複数いるのか……」
「いくら特殊個体でもこの防壁は簡単には破れまい」
「バカ! 上ってこられたら終わりだぞ!!」
(あの少年はなぜ防壁上に退避してこない?
ま、まさか、あのまま2体相手に戦うつもりなのか?!)
「あっ」
ドゴォォォォォォォン!!
特殊個体の内1体が防壁に突っ込んだ。
破壊された振動が伝わってくる。
直後少年が吹き飛ばされる。
「やられたっ」
「防壁が…………」
「魔術士が2体相手に接近戦なんて無理なんだよ!」
「次に同じ箇所に攻撃を受けたら防壁に穴が空くぞ!!」
「お、起き上がってきた?!」
(そうか、回復魔法で……しかしいくら回復魔法が使えるからといって何て無茶な戦い方をするんだ?!
それに最初に何か仕掛けようとしていたな)
当然何らかの成算があるからあの場に踏み止まって戦っているのだろう。
今この時、決断しなければならない。しかし一体どれほどの犠牲が…………
目を閉じ深呼吸をする。
そして…………
「騎馬隊出撃準備!! 重装歩兵も下に集合させろ!!」
「なっ?!」
「無茶です! 特殊個体に通常の攻撃は効きません!」
「通常ではない攻撃手段を持つ者が下で今戦っているではないか」
「あの魔術士が特殊個体を倒せる保証などどこにも……」
「もちろんそんなものはない。
だが、他に方法がないのもまた事実だ。
ならあの少年に賭けてみよう。1対2の状況さえ何とかすれば特殊個体を倒してくれる、と」
これには別の側面もあった。
他国の者ばかりを戦わせて当事者である我ら(=コートダール軍)が高見の見物ではなんとも体裁が悪い。外交上好ましくない事態とも言える。
なのでどうしても我ら自身の血を流す必要があるのだ。
「後の指揮は君に任せる。いよいよとなったら帝国から来てる者達を優先的に逃がしてくれ」
「隊長……」
「私は代理だよ」
魔法に詳しい臨時参謀に後を託して下へと降りる。
結局名を聞きそびれたな。
「全員盾を持つのを忘れるなよ!
攻撃はしなくていい。守りのみに専念して身体ごとぶつけていけ!!」
騎乗しながら指示を出す。
「若い者は砦内に待機だ! 徹底させろ!」
技量未熟な者が参加しても味方の足を引っ張ることになる。
…………というのは建前で、なるべく犠牲者を抑えたいというのが本音だ。
本当なら妻子持ちも除外したかったのだが、それをする時間はないようだ。
「開門!!」
他と違って特別重厚な造りをしている西門がきしむ音を鳴らしながらゆっくりと開いていく。
「出撃する!!
墳墓の地に魔物どもの侵入を許すな!!」
「「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
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