第312話

 ドノヴァンは黒オーガからの左右のパンチを何発か受け、盾を破壊されながらもなんとか凌いでいたところに蹴りを喰らって倒された。

 他のメンバーのように一撃で倒されなかったのは、さすが2等級盾役の防御力の高さと言ったところか。


「(ギロッ!)」


「ヒィィィィィィ!!」


 黒オーガはドノヴァンへの止めは刺さずに、次の狙いを弓士へと定めたみたいだ。

 弓士は悲鳴を上げながらも弓を射続けているが、悲しい程に効果はない。


 今の悲鳴は女性のモノのように聞こえたがどうなんだろう?


 黒オーガは勝利を確信しているのだろう。まるで恐怖を植え付けるかのようにゆっくりと弓士に近付いて行く。


 ドンッ!


 俺が放った土槍(回転)が黒オーガの肩にヒットした。


 黒オーガは一瞬魔法が着弾した自分の肩を見てから放った俺へと視線を向ける。


 土槍(回転)でダメージを与えられるなんて微塵も考えていない。奴の目標を俺へと向けさせるための魔法攻撃だ。

 『黒オーガは魔法攻撃を脅威に感じている』

 メルクで黒オーガに関して情報収集した際に俺が立てた推論だ。

 その推論の正しさを証明するかのように、黒オーガはあっさりと弓士から目

ろ標を変えて俺に向かって来た。


 俺もゆっくりと黒オーガに向けて歩き出す。

 一歩踏み出すごとに緊張感が増していく。


 (落ち着け……、アルタナ王国で1度は勝っている相手だ)


 その時は腕から骨が突き出るぐらいの大ダメージを負ったが、その後のオークジェネラル高技量型や二本角の黒オーガとの戦闘に比べれば、それでもダメージ少なく勝てたほうだ。

 もちろん同じ三本角でも強さが異なる可能性はあるが……



 黒オーガは立ち止まり……ややかがみ込みながら背中を向け……


 スラッシ〇・キックか!!

 驚異的な跳躍力を生かした後ろ回し飛び蹴りだ!


 魔盾を出して蹴りが当たる直前に、その場で魔盾を時計回りに回して受け流す!!


 よし!

 成功だ!!


 防御強化のために魔盾を動かすことを練習してきた。

 実戦で使うのは初めてだったが、うまく攻撃を逸らすことができた。


 だが、黒オーガの体勢を崩せたわけではないので、奴は即俺への攻撃を仕掛けてくる。

 近接戦の間合いで繰り出してくる攻撃は、パンチは早過ぎて、蹴りは自分と魔盾との距離が近過ぎて受け流すことができない。

 今のところ魔盾での防御に成功してはいるが……


 3度目の蹴りを防御しながら黒オーガの隙を伺っていると……


 黒オーガは動きを止め、右腕を引く構えを見せる!


 (剣士の身体を貫いたあの突き攻撃か?!)


 魔盾を2枚重ねて防御する。


 明らかに通常のパンチより速い貫手が1枚目の魔盾を突破し……2枚目の魔盾をも貫いた!!


 貫手の先端が俺の身体のギリギリまで迫ってきて冷や汗をかく。


 しかし黒オーガは間髪入れず俺のほうに踏み込んで再び右腕を引く構えを見せた!

 この位置関係だと先程と違って魔盾を貫いて確実に俺へと攻撃が届く立ち位置だ。


 俺は魔盾による防御ではなく風槍(回転)による迎撃を選択する。


 俺の風槍(回転)と黒オーガの貫手が激突する!!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 !!!?


 互いの右腕が反発し合う感じで弾けた!


 (ここだ!)


 ズドンッ!


 発射速度重視で通常よりやや小さめの土甲弾を放った!

 視界に左腕で防御態勢を取る黒オーガを捉える。


 土甲弾が命中して土煙が発生する。


 ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!!


 続いて最大出力での土甲弾を4連発で叩き込んだ!!


 土甲弾でも黒オーガにダメージを与えられないことは『知っている』ので、5発目を発射後に即ダッシュして土甲弾で押し込んだ分の黒オーガとの間合いを詰める。

 もちろん右手は風槍(回転)を圧縮させながら…………


 土煙が立ち込める中で防御態勢を解こうとしている黒オーガに対して、俺は渾身の風槍・零式をぶち当てた!!


 崩れ落ちる黒オーガ。


 (やった! 初めて黒オーガに、強敵相手に無傷で勝ったぞ!!)


 正確には黒オーガの貫手と風槍(回転)が激突した際に右腕を痛めたようで違和感があるのだけど、まぁ総じて無傷の完勝と言っていいだろう。右腕もすぐに回復させる。


 零式によって胸に穴を穿たれ倒れている三本角の黒オーガを見る。

 貫手による突き攻撃はアルタナ王国で倒した三本角にはなかった攻撃だ。

 やはり同じ三本角でも1体1体の能力や戦い方は違うと認識すべきなのだろう。

 死体を収納する。


 (2体目の黒オーガをゲットぉぉぉぉ! って、うぉぉ!?)


 MP残量をチェックしようとステータスを見たら、久しぶりにレベルが上がったことに気が付いた。



川端努 男性

人種 15歳

LV40→LV41


HP 696/ 696→ 735/ 735

MP 4647/6975→5152/7480


力  139→148

早さ 165→173

器用 174→181

魔力 645→692


LP 56P→58P


スキル

異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv8・浄化魔法Lv7・火魔法Lv4・水魔法Lv4・風魔法LvMAX・土魔法Lv8・氷結魔法Lv4・回復魔法Lv8・魔力操作Lv6→Lv7・MP回復強化Lv8・MP消費軽減Lv8・マジックシールドLvMAX・身体強化Lv4・剣術Lv2・槍術Lv2・投擲Lv1・敵感知Lv8→Lv9・地図(強化型)・時刻・滞空魔法・飛行魔法



 レベル40以降は雑魚をたくさん倒してもレベルアップはせず、強者を倒すことでレベルが上がるのだろうか?

 それにしてはバルーカでジェネラルの高技量型を倒した時にはレベルは上がらなかった。

 黒オーガを倒してレベルアップしたこととの差は何なんだろう?

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