第298話
「ツトムさん……」
「な、なんだ?」
ルルカはスプーンを置いて姿勢を正して俺のほうを見る。
俺とディアは食べながらでも平気で喋ったりするが、ルルカとロザリナは行儀よく綺麗に食べるタイプだ。
ロザリナはこちら側でもおかしくないが、元貴族としての所作が身に付いているのだろう。
「急に引っ越しの話をされたのは、もしやまた新たな女性を買われるつもりなのですか?」
「「っ!?」」
ギクッ!?
「いや、さすがにディアがウチに来てまだ間もないし、そのようなつもりはない」
「(ジイィィーーーーー)」
「家具を置いた後のロザリナとディアの部屋が想像以上に狭くて、部屋を増やす必要性を感じただけだ」
「そうでしたか……」
新たな女性か…………
ハーレム言うからには4人は欲しいと思うが…………しかし、夜の営み的には3人が限界っぽいんだよなぁ。
それに俺にはアルタナ王国から唐突に舞い込んでくるかもしれない結婚話がある。
現状は保留となっているが、行動の読めないレイシス姫が絡んでいるので油断はできない。
「あとこの家では客が来ても泊めることもできないだろ?」
「私の部屋に泊まって頂いて構いませんが」
「客が男性でも同じことが言えるか?」
「そ、それは……?!」
さすがにこの時代でも自室を見ず知らずの男性に使われるのは嫌だろう。
「俺の不在時にこの家には女性しかいないという問題もある」
「男性の護衛役でしょうか?」
「ふむ…………今後戦力強化は必要だが現状ではロザリナとディアがいるわけだし。
欲しいのは護衛役というより管理者かなぁ。もちろん大きな家へ引っ越す場合だぞ。
家や生活に関する雑事を引き受けてくれる人だな」
本来なら男性なんか住まわせたくはないが……
いや……
「必ずしも若い男性である必要はない。
ある程度動ける必要があるから中年世代までで……となると妻帯者のほうがいいか」
「ツトムさん?」
「子供がいる場合はさすがに……あー、中年世代なら子供は成人(=15歳)を迎えて独立している場合もあるのか」
「ツトム様?」
「やはり雇うより奴隷を購入すべきだよなぁ、コスパは抜群だし奴隷紋もある。
その性質上裏切りの可能性も絶対とは言い切れないものの限りなく低い」
「ツトム! スープが冷めるぞ!!」
「む!?」
考えが口に出てたようだ。
「ツトムさん、その件に関しては具体的に転居を決めてからでよろしいのでは?」
「そうですよ。
それにツトム様にご相談したいこともありますし。もちろんお2人にもですけど」
家を探す前に住む人数を確定させなければ、どんな家を探せばいいかわからないだろうに。
もちろん急いでいるわけではないけど…………ん?
「ロザリナ、相談ってなんだ?」
「今日ギルドで昨日まで担当した6等級パーティーの女性から冒険者を続けるか悩んでいる旨の相談を受けまして、以前から悩んでいたようなのですが、森でツトム様の魔法を見て冒険者として活動する気力を失ってしまったようでして……」
「俺のせいで?!」
ロザリナが担当した6等級パーティーの魔術士は男性だったので、その女性は魔術士以外の職ということになる。
同じ魔術士でもないのにそんなことで自信を失わなくてもいいのに……
「自分より年下の少年が縦横無尽に魔法を行使するのです。ショックを受けたとしてもおかしくないかと」
あれでも本気を出してないことを知ったらさらにショックを受けそうだ。
「悩むぐらいなら冒険者を辞めるべきだろう。死んでから後悔しても遅いからな!」
ディアがド直球で斬り込む。
自らも人との実戦経験があり、夫を戦場で亡くしたディアの言葉は重い。
「俺もディアと同じ意見かな。
少なくても安全な街に活動拠点を移すべきだと思う」
なんかサリアさんとゼアータさんの事例と少し似てるな。
あちらは指導員の話が前提としてあったけど。
「その人は冒険者を辞めた後の身の振り方に宛はあるのか?」
「いえ、まったくないそうです」
「だったら1度実家に帰って御両親に相談するべきなんじゃないかな?
ほとんど他人な俺達よりも有効な助言を得られると思うが……」
「そ、それは……」
たった3日間行動を共にしただけの俺達に、どうしてこんな重たい相談事を持ち掛けてきたのか?
「ツトムさん、その女性はおそらく実家に帰ったら嫁に出される立場なのでは?
ロザリナ、女性の実家が何を営んでいるのかはわかる?」
「すいません。そこまでは聞いておりません。
ただ出身はロクダーリア近郊にある村の出と言っていました」
「村出身となると農家の可能性が高いわね」
「冒険者を辞めて結婚するのって悪い選択ではないような……
いや、もちろんちゃんとした相手ならだけどさ」
現代的価値観なら結婚が必ずしも幸せに繋がるとは限らないが、この異世界の時代的には全然アリなんじゃないの?
地球の中世と比較すればこちらの世界のほうが女性の社会進出は進んでいるとはいえだ。
「冒険者になる者は家業を継ぐ立場にない者、家業自体が継げるような状況なり性質ではない者がほとんどです。
しかも農家の娘が嫁入りする先は同じ農家であることがほとんどで、その生活は農作業の手伝いと家事に明け暮れる苛酷な日々が待っています」
機械に頼れない農作業がかなりしんどいのは理解できる。
「冒険者として街で暮らすことを経験してしまうと尚のこと村での生活には戻りたくないでしょう」
「となると相談に対する回答としては、冒険者を続けるなら前線ではない街に移動する、もしくはきっぱりと冒険者を諦めて他の仕事を探す…………こんな感じか?」
「そうですね、よろしいかと思います」
「ツトム様、ありがとうございます」
「南部の農家は大変なんだな」
無難な回答になってしまった感じがあるが、相談を受けた本人がいいのならこれで構わないだろう。
「「失礼します」」
風呂の後で寝室で待っていると新しい下着に身を包んだルルカとロザリナがやって来た。
「2人ともよく似合ってるぞ」
「ありがとうございます」
「ほら! ディアもこちらにいらっしゃい!!」
「待ってく……れ…………」
ロザリナに強引に連れられて俺にその姿を見せるディア。
「くっ……み、見るなぁ……」
褐色の肌に純白の下着がよく映える。
その布面積は小さくディアの淫靡な肢体をさらに際立たせていた……
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