第279話

「ンっ…………チュッ、……んんっ…………」


 目が覚めるとすぐにルルカにキスをする。

 ルルカはいつも俺より先に起きているので、俺を抱き締め元気なところを太ももで挟んでくれる。

 このままルルカと始めるか、ロザリナ・ディアと順にキスをするかは日によって違うが、今日はどちらでもなかった。


「ツトム様、本日はギルドに行きませんと……」


「さすがに早過ぎだろう」


 なにせまだ日の出前である。

 時刻スキルによると現在は4時12分だ。

 電気の無いこの世界では、夜早く寝て朝早く起きるのが基本だ。

 夜に明かりを得るのはコストのかかることであり、深夜まで営業している飲み屋でも夜間料金を別に設けていて昼より高い料金価格となっている。宿屋でも明かりの提供は別料金なのが一般的だ。


「昨日コーディス(=俺達に同行するギルド職員)は早朝に集合と言っていました。

 ギルドの言う早朝とは日の出から半刻(=1時間)ほどのことです」


 朝の6時ぐらいからギルドではその日の新たな依頼が掲示板に貼り出される。それから2時間くらいは依頼票の争奪戦でギルド内が大変混み合う時間帯だ。

 要は混雑する前に集合したいってことなんだろうが……


「それにしても早過ぎだ。半刻後に出ても十分間に合うだろ?」


「し、しかし……」


「ツトムさん、ロザリナにとっては大事な昇格試験が始まる日なのですよ。

 ロザリナ、ツトムさんのお相手は私達でするから出る準備をしなさい」


「ありがとうございます! ルルカさん。

 ディアもお願いね」


「いや、昇格試験を受けるのは俺も同じ……」

「任せろ!」


 ロザリナがベッドから出て行き2階の自分の部屋へと上がっていくと、ディアがロザリナの空いたスペースを埋めて背後から密着してきた。


「今日から3日間もできないのだからこれから2回はするのだろう?」


 ディアが俺の体に手を回しながら耳元で囁いてくる。

 背中で潰れる双丘の柔らかい感触が心地よい。


 この依頼中でもロザリナとできないだろうか?

 無理だろうなぁ。昨日の買い物でロザリナの分の寝袋とか他の野営道具も揃えてしまったし。


「ツトムさんだって昇格試験を受けるのにいいのかしら?」


 と言いつつも挟んだままの太ももで刺激して来るルルカ。


「時間がないのだろう?

 いつもみたいにゆっくりとはできないぞ」


「そうね、さぁツトムさん……」


 ルルカが正面からさらに密着してくる。

 2人に挟まれたままでその奉仕を存分に堪能した……




……


…………



「それじゃあ行ってくる」


「お気を付けて、ロザリナもね」


「ロザリナ、ツトムを頼んだぞ!」


「ルルカさん、ディア、行ってきます」


 今回は俺の部屋で見送られる。ルルカとディアが裸のままだからだ。

 2人の裸体が艶めかしくてベッドに吸い寄せられるが……


「ツトム様、行きますよ」


 ロザリナに腕を掴まれ名残惜しくも家を出る。

 あの裸体を3日も拝めなくなるとは……


「ツトム様は今回指揮されるお立場なのですからしっかりして頂かないと」


「指揮?! 俺がするの?」


「当たり前です。ツトム様の他に誰が統率すると言うのですか」


「ゼアータさんは?」


「ゼアータは指揮者というタイプではありませんよ」


「ということはロザリナが前のパーティーのリーダーだったのか?」


「いえ、リーダーだった女性は私が奴隷落ちした際に引退しました。

 妹がケガしたことに責任を感じたのでしょう。

 彼女に責任はなかったのですが……」


 引退した人がパーティーリーダーだったのか。


「しかし6等級と言っても俺より年上ばかりだろう?

 果たして年下の俺の指示に素直に従うかどうか……」


「ツトム様なら大丈夫です!」


 せめて根拠を言ってくれよ!


 でもアリと言えばそれもアリなんだよなぁ。

 なにせ俺には地図(強化型)スキルがある。

 移動方向を指示できるなら倒すにしても危険を回避するにしてもかなりのメリットがある。

 地図上に赤点で表示されるだけで魔物の種類までわからないのが難点だけど。




 城内のギルド前でまずサリアさん・ゼアータさん2人と合流した。

 挨拶後、


「ロザリナから聞いたのですが、自分がリーダーで良いのですか?」


「もちろんです! 前回の討伐の時もツトム様が指示されていたではありませんか!」


「その時のパーティーに私が加わったってだけだしね」


「わかりました。

 まずはお2人の荷物を収納に入れますね」


 3日間ということで荷物はかなり大きい。それに、サリアさん用の予備の矢が大量にある。こんなに使うことはまずないと思うが、ルミナス大要塞や南砦で備蓄されてる様子を連想させられるぐらいの量だ。

 水筒やタオルといったすぐ使う物を別にしてもらって全て収納に入れる。


「「ありがとう」ございます」


「ゼアータさんの盾はどうしますか?」


 単体ではこの盾が最も重いだろう。


「これは持ち歩くよ。預けてなければ……なんて後悔だけはしたくないからね!」




 ギルドの中に入るとまだぽつりぽつりと冒険者がいる程度でガランとしている。

 それと対照的なのが受付の内側で、職員達がせわしなく動いていた。掲示板に貼り出す依頼票の準備をしてるのだろう。

 今頃他の冒険者は宿の朝食でも食べているのだろう。

 そう言えば俺は起きてから何も食べてないな。イチャイチャしてた自分が悪いのだが……



 予め指定されていた部屋へと入る。

 既に6等級パーティーは集まっているみたいだ。


「来たな。

 彼ら(=6等級パーティー)にも君達と同じ説明はしてある。

 後は任せよう」


 俺が挨拶するのか……指揮官なんだし当然だよな。

 ざっと見た感じ10代の少年少女がほとんどのようだ。


「コホン。皆さん初めまして、5等級冒険者のツトムと言います。魔術士です。

 これから3日間、自分達の昇格試験も兼ねてあなた達を護衛します。

 皆さん、よろしくお願いします」


 彼らは俺の指揮に従うだろうか?

 20代も何人かいるようだが、特に反発があるような感じは…………目立った反応はないな。


「まずは各パーティーのリーダーに自己紹介をお願いします。

 その際、オークを討伐したことがあるか、ある場合は今まで何体討伐したか、おおよそで構いませんので教えてください」


 森に行ったことがなくてもオークと戦う機会はあったはずだ。

 バルーカは1度大規模な襲撃を受けているし、軍が掃討作戦を行う前は壁外区北口のすぐ近くまでオークが迫っていた。

 もちろん護衛依頼などで不在だったとか、最近他の街からバルーカに移って来たのかもしれないけど。

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