第278話
となると、課題をクリアしてこの依頼で4等級に昇格できるかどうかは、参加する6等級パーティーの実力に懸かってるわけだ。
まぁ普通に考えれば、達成すれば4等級へと昇格する依頼が簡単なはずはないよな。
通常の模擬戦で行う昇格試験と同等以上の難易度でないと公正とは言えないだろう。
仮に依頼に失敗したとしても、(時間がかかるとしても)模擬戦形式で昇格すればいいので俺達に特にデメリットはない…………よな? 確認しておいたほうがいいな。
「依頼に失敗した場合、こちらに罰則とか何か不利益なことはあるのか?」
「何もない。
ああ、便宜上『依頼』と言っているが君らにとっての扱いは通常の昇格試験と同じだ。
試験を受けるには費用が発生するし、成功しても報酬がない点も同じ。
故に失敗しても何ら責任を負うことはない」
何もデメリットがないことは良かったが、そうか……報酬もないのか……
試験であるなら報酬がないのも当然だが、3日間も拘束されるのに無報酬はちと寂しい。
まぁ無報酬なのは割り切るとしても、3日間を無駄にすることだけは避けたいところだ。
そしてそれは6等級パーティーの実力次第になる。
俺が真っ先に思い浮かべられる6等級パーティーはタークさんのパーティーだ。
剣士・盾役・弓士・魔術士という構成でバランスが良く、各々の技量も高い。
メンバーが欠けていなければとっくに5等級へと昇格しているだろう。
最年少がスクエラさんの20歳で6等級としてはベテランの部類に入るので今回のケースの参考にはならない。
そのタークさんのパーティーに一時加入して行ったオーク集落討伐。
討伐に参加した他のパーティーも安定感があった。確か6等級だと思ったが……
他には5等級の昇格試験を共に受けたザルクさんのパーティーだな。
剣士・盾役・斧使い?・斥候役とバランスの悪い構成だ。
解説のラック氏によればザルクさんパーティーは6等級の中堅上位という評価だった。
昇格試験では前衛3人は1勝もできなかったが、だからと言って3日間で30体というノルマを達成できないとは思わない。よほど数で押されたり上位種が出てこなければだけど……
「私達に魔物が向かって来た時の自衛戦闘に関してはどのような扱いですか?」
「当然討伐数が無効になることはない。
だが、自衛にかこつけて6等級を援護することは無効の対象だぞ」
俺達が左右と後方に位置取れば6等級を前方だけに集中させることが可能か、今回唯一できる援護かもな。
「ただし!
護衛の性質上危険と判断した場合、君達が積極的に参戦してもそれを認めることはある。
状況次第なので認めるかどうかの判断は私に一任されていることを予め宣告しておく」
戦闘に参加するタイミングが遅れて、6等級に犠牲者が出ないようにするための配慮なんだろうな。
ギルドとしても若手パーティー育成の一環だろうし、犠牲者が出ては困るのだろう。
ギルド職員コーディスとのその後のやり取りで確認したことは、
・口出ししたり、アドバイスは可。
・野営時に小屋とかの拠点を作るのは不可。
・6等級の物資を俺の収納に入れて運ぶのは不可。ただし、討伐した魔物を回収するのは可。
・水や食事の6等級への提供は可。
で、最後に試験費用である4万ルクを支払った。
全額俺が支払うことを主張したのだが、サリアさんとゼアータさんに何故かロザリナまで加わって強硬に反対されたので折半ということに落ち着いた。
…
……
…………
ロザリナの案内でギルドからほど近い食事処に4人で入った。
サリアさんとゼアータさんも誘ったのだが断られてしまった。
気を遣われたのだろうか?
「……………………というわけで、模擬戦による昇格試験はとりえあえず延期となった」
ギルドでのやり取りをルルカとディアに説明した。
「冒険者が等級を上げるのも中々に大変なんだな」
「3日間も家を空けられるのですか……」
「2人には悪いのだが、この後で大人数に振る舞うシチューとかスープを作ってもらいたい」
「かしこまりました。人数はわかりますか?」
「えっとだな……」
6等級が3パーティーで通常編成なら15人、俺達が4人に査定役のコーディスだから……
「20人分を想定してくれ」
結構な量になるな。新たに寸胴鍋を買い足さないと。
断ってくるパーティーや人もいるかもしれないが、余っても収納に入れておけばいつでも食べることが可能だ。
それにしても水や食事の6等級への提供を認められたのは意外だったな。
戦闘に関する経験を重点的に積んでもらいたいってことだろうか。
「食材も大変な量になりそうだな。
まずは買い出しを済ませてから依頼に必要な物を買いに行くか」
3日間……2泊野営することになる。
野営なんて護衛として王都に行って以来のことだ。
見張りの順番とかも決めないといけない。
俺には地図(強化型)スキルがあるから1人で余裕なんだけどなぁ…………そうだ! 俺1人で見張りをする時間帯を作って、6等級への負担を少しでも減らすのだ。明日にでも提案してみよう。
「ロザリナ、ギルドがこうやって若い冒険者に森を経験させることはよくあることなのか?」
「いえ、パーティー同士で協力したり先輩冒険者が指導したりはありましたが、ギルドが主導して森を経験させるなんて聞いたことがありません。
今回が初めての試みではないでしょうか」
そんな初めての試みを俺にやらせるのは人選ミスではなかろうか?
経験させる6等級よりもパーティー経験は少ないし、南東の森での戦闘も5回か6回ある程度だ。
冒険者としての知識経験面はロザリナ達に大いに頼ることになる。
だが却って良かったかもしれない。ロザリナは俺の力(=戦闘力)で昇格しても自分は4等級に相応しくないのでは? とか言ってたしな。
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【後書き】
いつも『異世界ライフは山あり谷あり』を読んで頂きありがとうございます。
ここ2話ほどの反響の多さに大変驚いております。作者として完全に想定外のことでして、こうして後書きを書くことにしました。
こういった方法での説明?解説? が正しいのかも併せて検証したいと思います。
今回の昇格試験に関して、冒険者ギルドが主人公達に嫌がらせをしているという事実は一切ありません。
緊急招集を除いて、冒険者の依頼を受ける受けないの判断にギルド側は介入できませんし、
対戦相手がいなければ他所のギルドに打診して待たなければならない、というのはグリードパーティーの時に既に描写していることです。
そして特殊依頼に関しても、冒険者ギルドは主人公達をむしろ特別扱いすらしている、という認識です。
なぜなら、普通の冒険者は模擬戦形式の昇格試験で実力を示さないと昇格できませんが、主人公達には特殊依頼達成による昇格というリスク無しの手段が別口で用意されているからです。
作者的には『どうして主人公達だけが特別扱いされるんだ!』みたいな御批判を頂くものとばかり思っていました。
改めまして、いつも★レビュー、♥応援、応援コメントをありがとうございます!
特にテキスト付きでおすすめレビューして頂いた方には大変感謝しております!!
これからも『異世界ライフは山あり谷あり』をよろしくお願い致します。
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