第202話
2番目は王都にいる母親に関することだ。これも妹ともう話し合ったのかロザリナに確認してないので聞くことができない。家族に関することを俺が最初に口火を切る訳にはいかないからな。
ということは必然的に3番目の話題になるが……
「姉妹で冒険者として活動していく上で、もし重いケガを負ったら無事なほうがその身を売ってでも治療費を用意しよう、駆け出しの頃から姉とはそのような決め事を交わしていました。
しかしながらいざ自分がケガをして治療費を用立ててもらうと、その為に奴隷落ちした姉に申し訳なくて……」
悩んでいたらサリアさんが先に話し始めてしまった。
ロザリナの妹であるサリアさんがケガをしたのは、時期的には俺が王都からルルカを連れてバルーカに戻る少し前のことになる。
「奴隷になった姉と再会した際、凄い方に買われたので何も心配しないようにと言われましたが、私が気に病むことのないように気を遣って言ってるだけだと思いました。まして、成人したばかりの少年が30過ぎの姉と寝所を共にするなどあり得ないことだと」
そこは俺の性癖なもんで。
もっともこの世界の一般的な感覚として若い女性を求める傾向が強いのだとしても、城内ギルドで周りの男達から熱視線を浴びていたルルカとロザリナの様子を思い出すと、隠れ年上好きみたいな男性は結構いるんじゃないかな?
「しかし5等級昇格試験時の5人抜きや先日の3等級昇格試験のご活躍など、姉が言っていることが本当のことだと知りました。
むしろ私を気遣ってのことではなく……」
ん? なんか話の方向性が……
「いかにツトム様に愛されているのかを何度も語っていたのは、私に自慢する為だったのです!」
「え?」
愛? なのかなぁ?
大事に思っているのは確かなんだけど、愛してるのかと言われると…………
いや、このケースは愛でているのほうか。それだったらその通りだ。
そして隣を見ると……
「えぇ?!」
隣に座っているロザリナさんはなぜかドヤ顔をしていた。
ロザリナを購入してから40日あまり、まだまだ知らない一面があるのだと思い知った。
それと2人は俺が勝手にイメージしていた仲睦まじい姉妹像とはちょっと違うみたいだ。仲が良いのは確かなんだろうが。
「ツトム様?」
これはサリアさんだ。
2人とも様呼びだから紛らわしい。つかそもそも……
「サリアさん、自分のことは呼び捨てで構いませんよ。敬語もいりません。あなたは自分の奴隷ではないのですから」
「いいえ、姉も私もこれだけお世話になっているのです。
私だけが馴れ馴れしく話す訳にはいきません」
「ならこの際ロザリナが話し方と俺の呼び方を変えるか?」
「ツトム様、私のほうもルルカさんを差し置いて接し方を変える訳にはいきませんよ?」
ルルカはそんなこと気にしないと思うのだけど、どうなんだろう?
女性同士の関係は男性から見ると複雑怪奇な面があるからなぁ。
下手に手を突っ込んで火傷でもしたらシャレにならん。
「まぁ話し方の件はまた今度にするにしても、お姉さんのことは心配なさらないでください。
危ないことをさせるつもりはありませんし……」
「危ないご奉仕はたくさんしていますが」
「ちょ!?」
なんてことを家族の前で言うんだ?!
慌ててロザリナを引き寄せ、
「(あまり変なことを言うと妹さんが心配するだろ!)」
「(ですが、妹には全て話してしまっていますが……)」
「(だとしても! この場では空気を読んでくれ!)」
「(はぁ……)」
妹に全て話してるってプレイの内容を事細かに話しているのだろうか?
あまりそういうことを大っぴらに話さないでもらいたい。
プライバシーといった概念がまだ醸成されてない世界なので仕方ない面があるけど……
これは後でよく言い聞かせないといけないな。
「コ、コホン。え~と、そんな訳でお姉さんのことは大事にしますので」
「姉のこと、くれぐれもよろしくお願いします」
「お任せ下さい。
あと、昇格試験のことは聞いていますか?」
ここでようやく3番目の話題に触れることができた。
「はい、伺っております。
ですがもう1人のメンバーが私がこちらにお世話になる期間を利用して実家に帰っておりまして。
お返事は彼女が戻ってからということでよろしいでしょうか?」
「もちろん構いませんよ」
確かロザリナが抜けたことで2人で活動してるのだったか。
「本人が出発時にもしかしたら戻る時期が遅くなるかもと言っていたのですが」
「急いでいる訳ではありませんので遅れても何も問題ありません」
「ありがとうございます」
2人しかいないパーティーの1人だけを家に泊めるのは些か配慮に欠けていただろうか?
「次にこのような機会があればその人も一緒にウチに泊まってください」
「よろしいのでしょうか?」
「ええ。ロザリナの部屋しか使えなくて不便かもしれませんが」
「とんでもない。お風呂にも入れますし宿代はかかりませんし凄く助かっています」
実家に帰っているというメンバーの戻りが遅くなると、サリアさん1人だけではまともに冒険者活動できないのではないだろうか?
依頼終了後の少しの間だけでも俺とペアを組むか聞くべきかな?
いや、踏み込み過ぎか。
サリアさんは同じ5等級とはいえ俺とは比較にならないほど冒険者歴は長いのだし、あまり出しゃばる真似はしないほうがいいだろう。
さて、もう他に用事は無さそうかな?
本当は部屋でもう1回したかったのだけど、そんな雰囲気ではなくなってしまったのが残念だ。
一応風呂を綺麗にして湯を張り直しておく。
「それじゃあ砦に戻るよ」
「ツトム様、次はいつ帰られますか?」
「3日後か4日後かな。
次は玄関で待ってなくていいからな」
「かしこまりました」
「サリアさんも次来た時はお休みになっててください」
「ツトム様もお気を付けて」
南砦に滞在5日目。
今日も1日中指揮所で待機だ。
別に何か事件が起こって欲しい訳ではないけど、暇なことは事実だ。
もちろん夜の魔法の練習もきちんと行った。
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-ワナークのとある雑貨店にて-
「お母さん、どうして毎朝走っているの?」
実家に帰ってから朝の水汲みや朝食の支度の前に家の周辺を走るようにしていたのだけど、娘に疑問に思われていたようだ。ロクダーリアで一緒に暮らしていた時はこんなことしてなかったし。
「…………」
さて、どう答えようかしら。
ツトムに抱かれないので運動不足で〇らないようにする為だなんて正直に言う訳にもいかないし……
「お母さん?」
「た、体力強化の為よ」
「体力強化って……!? やっぱりアイツにコキ使われてるんでしょ!」
「そんなことないわ。
言ったでしょ? バルーカではツトムさんがほとんどの家事を魔法でしてしまうって」
「だったらどうして……」
このことはあなたにはまだ早いわ。
でもこの
「やっぱりお爺ちゃんが言ってたお金で解放してもらってここで一緒に住もうよ」
「ダメよ。お母さんは自分の生き方を決めたの。
ルミカも来年には大人になるのでしょ。
自分の進路はちゃんと決めたの?」
「ウチのお店で働くからいいの!」
「なにか他にやりたい仕事とかはないの?」
「そんなの別に……」
「店を継ぐのでもいいけど、その場合はよそで何年か修行しないとダメよ」
「ええぇぇ?!」
「もしやりたいことがあるのなら若い頃しか挑戦できないから。
悔いが残らないようにしなさい」
「はぁぁい」
大丈夫かしら?
ツトムと比べると一つ下とはいえ、ルミカが妙に幼く思えてしまう。
いえ、この場合は変に大人びているあのエロ小僧のほうがおかしいのよ!
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