第139話
姫様に肖像画をお願いしたことやレイシス姫のことなどはもちろん言ってない。
何らやましいことはないのに変に疑われても困るからだ!
「ツトム様はもはや冒険者の枠を超えた存在になられていますね。等級に拘らないのもわかる気がします。
それに引き換え私は何のお役にも立てずに……」
「何を言っているんだ!
ロザリナがルルカを守ってくれるからこそ俺も後顧の憂いなく活動できるんじゃないか」
唐突にネガティブモードに入るのは勘弁してくれ。
留守中何かあったのだろうか?
それともずっと護衛任務をやらせてることに無理があったか?
ギルドで受ける護衛依頼とは違い買い物以外は基本ずっと家の中だ。
精神衛生上よろしくないのかもしれない。
あるいは未だ5等級のままなのがロザリナ的には引っ掛かっているのだろうか?
30歳過ぎて5等級というのはそれほど珍しくはないが、女性でとなると珍しいかもしれない。
そもそも30歳以上の女性冒険者なんて他に知らないぞ。
まぁ俺の交友関係は激狭だから参考にはならないだろうし、面と向かって女性冒険者(しかも微妙なお年頃の)に年齢を聞けない以上見た目で判断するしかないから、若作りしているだけで案外30歳以上の女性冒険者はそこそこいるのかもしれない。
それはともかく、ロザリナへの精神的なケアの為にも4等級への昇格を真剣に考えてみるかなぁ。ロザリナも昇格試験を受けるとなれば気持ちも前向きになるだろうし。
「そうよ。ロザリナがウチに来てくれて本当に良かったわ」
「私などの為に……お2人共ありがとうございます」
「ロザリナはもっと自分に自信を持つべきよ!」
俺も全くの同意見なのだが、冒険者時代の姉御口調に戻せばいいだけのような……初めて会った時も無理して演技していた風には見えなかったが、どうも本人はあのキャラ付けを黒歴史と思っているようだ。
アレの時あの姉御口調でどんな感じなのか興味があるだけに非常に残念だ。
「ところでツトムさん」
「な、なに?」
ヤバイな。感知されたか!?
てか事ある毎に眉間に稲妻を走らせるルルカも大概だと思うけどな。
そろそろ、『ああ、ツトム、
「先ほどは説明を省かれたようですが、どうしてギルドマスターに呼び出されたのですか?」
くっ?!
あれだけ長い説明だったのにピンポイントで痛いところを突いて来るとは……
あるがままを見ただけで、そのものの本質を洞察できるのがニュータイプというが……信じたくはないものだ。
「あっ、私もそれは気になってました!」
立ち直り早っ!
そりゃあ落ち込んだままでいられるよりも全然良い事だけどさぁ。
「軍から直接依頼を受けた事を聞かれただけだよ。
ほら、今回ギルドとしては緊急招集という形式ではなく選抜メンバーを送ることになっているからその兼ね合いだろう」
「そうですか」
余計なことは言わないに限る!
まぁ穴を開けたギルドの建物は直したしケガ人も出てないのだから問題ないだろう。
「(じぃーーーーーー)」
ここは話を変えてというか戻して何とかルルカの追及から逃れるとしよう。
「かなり話が逸れたが、今後の日程を決めることにする」
「はい」「かしこまりました」
テーブルの上にコートダールの商都で買ったばかりの地図を広げた。
「ルルカの家族が住むワナークまでは半日で行くことができる。
ただこうして地図も手に入れた事だしワナークに行く前に漁村で魚の買い付けをしたい。
さらに、出陣は13日後だが前日に家に戻るようなことはせず、余裕を持って2日前には帰っていたい。
これらの条件を満たす日程は……」
「「ゴ、ゴクリ……」」
「何か不測の事態が生じた時に備えて予備日を1日設けるとして、8日後にワナーク(漁村)へ出発して11日後に帰宅する、という感じでどうだろうか?」
「!? よろしいかと思います」「了解しました」
「ロザリナ、この4日間も妹さんをウチに泊めるのか?」
「妹の予定を聞きませんと何とも……」
「それもそうか。
妹さんは現在別のパーティーに入っているのか?」
「いえ、元のパーティーのまま私が抜けましたので2人で新たなメンバーを見つけるまでは他のパーティーとミックスなどをして凌いでいるかと」
「ふむ……、今回の軍の依頼が終わったら4等級への昇格試験を受けようと思う。
その2人に一緒に試験を受けるか聞いて…………いや、違うな。
4等級に昇格する気はあるのか聞いておいてくれないか?」
「わ、わかりました。
1人足りないメンバーは如何致しましょう?」
「いらん。4人で問題ない。
2人が参加しないようなら募集しないといけないけどな。さすがにたった2人で昇格試験を受けると悪目立ちしてしまうだろうし」
「(4人でも目立つことには変わらないでしょうに)」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、何も。オホホホホ……」
なんか怪しいな。
まぁいい。それよりも今はロザリナだ。
4等級になれるというのにそれほど嬉しそうな顔をしていない。
「ロザリナどうした?
4等級の昇格試験を受けるのは気が進まないか?」
「い、いえ、そのようなことは。
ただツトム様のお力で4等級になれたとして果たしてそれが自分の実力と言えるのだろうかと……」
うわっ!? めんどくさっ!
もっと単純に喜んで欲しいのだが。
まぁ客観的な物の見方が出来てると言えなくもないが……
「いいか、ロザリナ。いくら俺の魔法が優れていたとしても模擬戦では大幅に制限が掛けられてしまう。
4等級パーティー相手では5等級試験の時のように5人抜きなどまず無理だろう。
ロザリナ達で最低でも2人は倒してもらわないと俺達に勝機はないのだぞ」
「(だったら4人で問題ない訳ないじゃない。
試験にはフルの5人で臨むべきでしょうに。
言ってることが矛盾しているのよ!)」
「ルルカ?」
ルルカは普段絶対見せないようなニコニコ顔を返してきた。
滅茶苦茶怪しい。
「そ、そうですよね!
私達が頑張ってツトム様を援護しなくては!」
「そうだ! その意気だ!
ロザリナ達の働きには大いに期待してるからな!!」
「はい! お任せ下さい!!」
ふぅ~~
部下のやる気を引き出す為に上司も苦労するよ。
…………あ、あれ?
奴隷って無条件に主人の為に尽くすものじゃなかったっけ??
「(ロザリナも案外単純なのよねぇ)」
そしてルルカはルルカで何やら怪しさ爆発だしな!
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