第134話
商業ギルドでの両替を済ませた後奴隷商に向かった。
帝都の奴隷商は1つの区域にまとめられていて専門市みたいになっている。
コの字型に並んでいる建物の1階の店舗部分と中央のスペースで奴隷が売られていた。
木材でできた格子に囲まれた中にゴザが敷いてあり奴隷達が各々自由に座っているみたいだ。
売られている奴隷達は鎖では繋がれていない。おそらくは逃亡防止の奴隷紋で縛っているのだろう。
ルルカ達には主人を害するのを防止する一般的な奴隷紋しか施術してないので逃げようと思えば逃げられるということか……普通は奴隷が逃げたところで無一文で野垂れ死ぬだけなのだろうが、俺の場合2人には結構なお金を持たせちゃってるからなぁ。
いや、待てよ……
無一文であっても戦闘奴隷ならその身一つで稼ぐことが可能だ。奴隷が逃げ出したなんて話は聞いたことがないので、何らかの方法で主人の下から逃亡するのを防いでいると思われる。
例えば奴隷紋に"主人に不利益となる行動を禁ずる"という制約を加えているとか。
う~~ん…………、例えばも何もこれぐらいしかないよな。他に方法あるか? 新しい奴隷を買う時にでも聞いてみるか。
奴隷市(と呼ぶことにする)の中には客は10人程度だが、これまで行った奴隷商には他の客なんていなかったのでこれでも盛況なのかもしれない。
丁寧に見ていくが……
男性の奴隷のほうが多い感じだ。
どの男性もガタイが良い体育会系だが戦闘職という感じはしない。
女性の奴隷も美人さんはいないみたいで、年齢が若い中には可愛い系をチラホラ見かけるがもちろんアウトオブ眼中である。
女性の中にも戦闘職は見当たらないので、この店舗1階と中央スペースで売られている奴隷は価格帯が安いのではないだろうか? セール的な??
近くにいた店員に聞いてみる。
「戦闘奴隷を見たいのだが?」
「戦闘奴隷をはじめ高額な奴隷は店内で扱っておりますが……、初見のお客様には御案内致しておりません」
なぬ?!
一見さんお断り的なことか?
「なんとかならないだろうか?」
「詳しいことはあちらの建物の受付でお願いします」
店員に指示された入り口から入って正面奥にある大きな建物に入る。
「いらっしゃいませ、本日はどのような御用件でしょうか?」
中に入ると中年の男性に声を掛けられた。
明らかに店員といった感じではなく店長クラスのようだ。
「店内で扱ってるという高額な奴隷を見たいのだが、初見だとダメなのか?」
「左様でございます。当帝国奴隷商連合の規則でございまして」
「連合?」
「帝室から認可を頂いている奴隷商の全てが当連合に所属しておりまして帝国国内での奴隷業の全てを管轄しております」
帝国国内の全てって凄いな。
同じ街とかで奴隷商同士が競合するより効率は良さそうだが、競争原理が働かないから殿様商売が横行していそうだ。
「後日再び来た時には高額奴隷は見れるのだろうか?」
「店内への御案内は当連合が認める方からの紹介状をお持ちか表の奴隷を購入された方に限らせて頂いております」
中々に厳しい条件だなぁ。
無理してここで買う必要は……でもせっかくこんな遠いところまで来たのだし……
それに時間的な制限もある。
見知らぬ土地での夜間飛行は避けるべきという観点からすると、今日中に帰る為にはコートダールで奴隷商を下見する時間的な余裕は無いと見るべきだろう。
本日の目的の1つである"奴隷商の下見"というミッションをこなす為にも次に来た時に高額奴隷を見れるようにしておきたい。
適当に表で売られている奴隷を買って即売るか?
かなり無駄金を使うことになるが……
ただなぁ、それで買われた奴隷はすぐ売却されたという汚点が残るから次の買い手が付きにくくなるだろうし、そのまま売れなければ単純な労働力としてこき使われることになる。さすがに可哀そうだ。
ならば買ってすぐに解放するのはどうだろう?
当面の生活費は渡さないといけないから更に出費が増えるものの、割とすぐにどこかで働けるような奴隷であれば解放しても後腐れないだろうし奴隷側としても十分メリットのある話だろう。
とりあえずこの案は保留しておいて先に紹介状に関して聞いてみるか。
「紹介状はベルガーナ王国の貴族のものでも通用するか?」
「貴族様からの紹介状ですと帝国では男爵位から受け付けておりますが、他国ですと侯爵位以上の方に限らせて頂いております。
他に直系の王族の方と現役で三職に任ぜられている方からの紹介状でも対応可能でございます」
「三職?」
「ベルガーナ王国ですと軍務卿・内務卿・外務卿の3つの役職のことでございます」
そんな偉いさんに知り合いなんていねーよ。
このおっさんもわかってて言ってるんだろうな。
ロイター子爵や伯爵の紹介状でも無理となると…………
!?
姫様は直系だよな? 確か弟と王位を争ったとかロザリナが言っていたし!
でも姫様に何かしてもらうと高いからなぁ。
それに表向きには警護要員とはいえ奴隷を購入する為の紹介状を姫様にお願いしていいのかという根本的な問題もあるし……
!?!?
金髪ねーちゃんがいるではないか!
"金髪ねーちゃん"などと(心の中では)呼んでいるがあれでも立派な帝国子爵家の御当主様だ。
条件面では完璧にクリアしている!
クリアしているのだが…………
『私からの求婚を断っておきながら女奴隷を求めるのですか?』とかの嫌味をネチネチと言われ……うわぁ、脳内で音声付きで再生されてしまった。
妙案だと思ったけどこれはナシだな。非常に面倒なことになりそうな予感しかしないし!
これは奴隷を買って即解放をやるしかない感じかねぇ。
最後に少しあがいてみるか。
「紹介状は無理そうなので、他の方法はないかな?
ベルガーナ王国のバルーカという遠くから来ているので……」
遠方から来ているので何とかしてアピールだ!
「左様でございますねぇ……、失礼ですがご職業は?」
「冒険者をしている」
「カードを拝見させて頂いても?」
冒険者カードを渡した。
「5等級冒険者……バルーカギルド壁外区……こちら(帝都)には護衛依頼か何かで?」
「いや、帝都にはオークを売りに。
そのついでに近々新しい奴隷を買うつもりなのでその下見でここに来たんだ」
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