第124話

 くそぉぉ。

 ここは主としてガツンと言わなければなるまい!!


『2人共よく聞け!』


『『はい』』


『ここに軍の依頼後に人を増やすことを宣言する!!』


『『…………』』


『ロザリナの負担軽減の為の護衛の追加が最有力だが、場合によっては(=他に好みの女性がいれば)その限りではないのでよく承知しておくように!!』


『わ、私は別に負担とは思っておりません!』


『そういう自覚のない疲労が一番怖いのだ。

 それに高所が苦手なロザリナでは飛行魔法での移動にも難があるしな』


『うっ……、高いところはちょっと……遠慮したいです……』


『…………ツトムさん』


『な、なんだ?』


 来たな! プレッシャー!!


『新しい女性はどなたか宛てがあるのですか?』


『い、いや、さっき言ったように明後日に帝都に行くからついでに下見がてら奴隷商を覗こうかなぁって……』


『若い奴隷をお求めになるのですか?』


『い、いや、歳が離れすぎているとお互いにやりにくいだろうから(=俺が目指しているのは年上ハーレムだから)あまり若過ぎる奴隷は無しだ。

 理想を言えばロザリナよりちょい下ぐらいが良いのだろうが……こればかりはこちらの思惑通りに事が運ぶとは限らないから後輩が年上になるケースも想定していてくれ』


『新しく来られる方が年上でも私は一向に構いませんのでツトム様の望むようになさってください……』


 さすがにルルカよりも年上に食指を動かされることにはならないだろうがそれを敢えて言う必要はないだろう。

 雉も鳴かなければ撃たれることはないのだ!!


『ではツトムさんはどのような基準で新しい女性をお選びになるのでしょうか?』


『まずは以前にルルカが言っていたように為人ひととなりを最優先の判断基準とする。

 特に2人と上手くやれなさそうな女性は即却下だ』


 さり気なく君の言ったことは大事にしているよアピールだ!

 楽しく過ごしたいという共通の利害は一致しているのだから擦り合わせは可能である。

 例え俺が真っ先に目が行くのが二つのお山だとしてもだ!!


『次に戦闘能力だな。これは直接戦って試すことになる。

 少なくともロザリナと同クラスの戦力でなければ買うつもりは無いな』


 新たな護衛を追加するという名目上は仕方ないことだろう。

 滅茶苦茶好みの女性がいても弱かったらどうすべきか……

 今の俺なら2人には内緒で別の街にでも家を借りてそこに女性を囲うことも可能だけど…………

 これは止めた方がいいな。

 必ずボロを出してしまうだろうことは自分という人間と一番付き合いの長い自分自身が最もよくわかっている。

 それにハーレムを目指すという目的にもそぐわないし2人からの信頼も失って得することは何一つ無い結果となるだろう。

 まぁ取り越し苦労に終わるかもしれないし実際にそんな女性がいたらどうすべきか考えればいいだろう。


『最後は体格と性格だ。

 体格は日常生活における護衛という任務上周囲から浮く程の大きな体では論外だ。護衛対象がここにいると全力でアピールしているのと同義でもあるからな。

 逆に小さ過ぎると盾代わりとしての護衛の役割を全うできないだろう。

 護衛任務に適した体格(=俺好みのスタイル)でなければならない。

 性格に関しては最初に挙げた為人とはまた別に護衛任務に適した性格かどうかを判断する』


『(じぃーーーーーー)』


『な、なんだ?

 別におかしなところは…………』


『はい。まともな選考基準かと思います。

 ただわずかながら邪念が感じられるのが引っ掛かりまして……』


 邪念ってなんだよ!!

 どうしてそんなものまで感知できるんだよ!!

 まさかとは思うが……ニュータイプスキルがレベルアップしたとかじゃないだろうな?


『俺だって健全な男子なんだ。

 新たな女性ということで多少ドキドキしてしまうのは仕方ないだろう』


 嘘を上手に吐くには……少しだけ真実を混ぜることにある。


『健全な……?』


『男子……?』


 オマエら…………


『そもそも護衛ということなら男性でもいいような……』


『とにかく!! 明後日に下見に行くと言っても店の場所を確認する程度(=商品もバッチリ見てくるに決まってるだろうが!)だし本格的に動くのは依頼後のことになるからそのつもりでいるように!!』


『『………………』』


 男の護衛なんて冗談ではない!!


『以上だっ!!』




……


…………



 壁外区の北口に着くと既にタークさんのパーティーが待っていた。


「皆さんおはようございます」


「来たわね!」


「来たね」


「ツトム今日はよろしく頼むよ」


「ツトム久しぶりだな!」


 剣士でパーティーリーダーのタークさん(イケメン系)に盾役で長身のラルカスさん、弓士で細身のエルさんと不思議系魔法少女のスクエラさんだ。魔法少女と言っても20歳ぐらいではあるが……


「聞いたわよ~、試験で勝って5等級に昇格したんですって?」


「ツトムに先を越された……」


「こ、こら、ツトム、5等級に昇格おめでとう!」


「ホッジスさんに勝ったんだって? 俺あの人の盾捌きに憧れているんだよなぁ」


「ありがとうございます。6等級に昇格した勢いで5等級の試験に挑戦したのですが勝てて良かったです」


「言ってくれれば応援に行ったのに!!」


「昇格試験があんなに盛り上がるイベントだったとは全然知らなくて……」


「ツトムに賭けていたら大儲け」


「それで今日はスクエラへの魔法指導と僕達の強化をお願いしたくてね」


 スクエラさんだけではなくタークさん達にもなのか?


「魔法指導はともかく自分の拙い剣技ではタークさん達への指導には……ならないかと……」


「いや、ツトムには昇格試験における対魔術士対策に協力してもらいたい」


「と言いますと?」


「魔術士が模擬戦で使う魔法はウインドハンマーがメインだ。

 スクエラが扱う属性は土と水だからその辺の対策ができなくてね」


「つまりタークさん達にウインドハンマーを撃ちまくって防御や回避の練習をしたい……ということでよろしいですか?」


「そうそう。それで頼むよ」


「私はツトムの回転するヤツ教わりたい」


「わかりました。しかしあれは模擬戦では危なくて使えませんけどいいですか?」


 ギルドマスターと対戦相手の4等級を脅す為に土甲弾をギルドの建物にぶち込んだお前が言うなという突っ込みが聞こえてきそうだが、幸いにもタークさん達は一昨日の件は知らないようだ。

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