第123話
『何年かして身体が成長した後で従騎士にならなかったのか? 剣の鍛錬はずっと続けていたんだろ?』
『従騎士になれるのは騎士学校卒業時のみなのです。
他に兵士となって武勲を挙げて騎士に叙任される道もあるのですが、父の出征と戦死が重なってそれも叶わずに冒険者の道へ進みました』
『だ、大丈夫だぞ! ロザリナは今や俺の騎士だからな!!(エロい女騎士という意味だけど)』
『そ、そうよ! 私のことを警護してくれる騎士でもあるわ!!』
2人して懸命によくわからないフォローを入れる。
『お二人ともありがとうございます。もうかなり昔のことですのでお気になさらずに』
やっぱり微妙な空気になるよなぁ。
それに兵士が手柄を立てるというのもそう簡単な事ではないだろう。
ロザリナの剣の腕は悪くはないものの突出している訳ではない。
身体能力の優れた獣人も多いだろうし厳しいだろう。もちろん手柄を立てる為には個人の強さが必ずしも必要という訳ではないが。
話題を変えよう。
『その学校には何人入れるんだ?』
『騎士学校は定員制で100名です。
魔法学院は一定の才能があれば合格できます。上限はありませんが大体80人前後で100人を超えるような年はまずなかったかと思います』
一つの学年が合計180名というのは多いのか少ないのか……
毎年使う共通の基礎学科なら教科書あってもよさそうだが。
『教科書は何冊使っているんだ?』
『?? 教科書というのはなんでしょう?』
教科書がないのが確定してしまったな。
口頭での授業かもしくは黒板あたり使っているかもしれない。
『あー……、今のは忘れてくれ。
それで、2つの学校は武官を目指すのが一般的なようだが、文官を養成する機関はないのか?』
『文官は試験に合格すれば採用されます。
王都以外の各街でも採用試験を実施していますよ』
『ここ(バルーカ)でも試験あったのか?』
『欠員が発生していたなら採用試験は行われているはずです』
学校(学院)を卒業した者でも軍に採用されなかったら次は文官の試験突破を目指す訳か。
最初はてっきり『学園編のスタートか!』とちょっとだけ期待したけど年齢的に既にアウトだった。
いや、まだ教師、特に臨時の魔法講師として赴任する線は残されているか?
女子校に教師として男1人だけなんて全男性の憧れじゃないか!!
※注意!! 騎士学校・魔法学院共に男女共学であり、どちらも複数の男性教師がいます。
まぁそれはそれとしてだ。
『普通の王国民は学ぶところはないのか? ルルカはどうしていたんだ?』
『ここからの説明は私が』
ルルカ先生に交代だ。
素肌にタオルケットを巻いて上体を起こしたが……
先生! 隙間から見える大きな膨らみがたまらなくエロいです!!
『街や大きな村では私校に10歳から通います。
学費は有料ですがそれほど高額ではなく街によっては専用の建物を使用してたり貴族や商家の離れや別宅だったりを間借りして授業が行われます。
普通以下の村では村長宅で隠居した老人が無償で教えていることが多いですね。
私が通っていたロクダーリアの私校は商家の倉庫を使っていました』
私校か……。名称は私塾のほうがしっくり来るのは日本人だからだろうな。
私学校だと…………反逆でもするか?
『王都の学校と同じく15歳までの6年間通うのか?』
『いえ、私達が通うのは12歳までの3年間です。
その後は成人(15歳)するまでは家業を手伝うのが一般的です。
優秀な者はその前年に王都の学校に行きますし、文官を目指す者は12歳を超えて学びます。
いずれにしても家庭が裕福な者が目指せる進路ですし、私の年代では1人だけ採用試験を突破して城勤めをしております』
『ということは読み書き計算ぐらいは皆できるのか』
江戸時代の寺小屋制に近い感じだろうか。
『有料ですので一般的な家庭でも親の方針次第なところがありますし、貧困層は通えません。
村落も教えることのできる老人がいなかったり農作業の手伝いを優先させたりと子供が学ぶには難しい状況があります。
ある村落などでは私校が開かれなくなって10年以上経過してるなんてこともありますよ』
やはり読み書き計算ができない人は一定数以上いるようだ。
異世界あるあるかと思ったが、100年以上前までは世界(地球)的にも普通のことだったんだよな。
数百年前からノリノリで教育してる日本がおかしいだけで……
『それにしても街のことはともかく、よく村落の事情まで知っているな』
『商人の頃に複数の村と取引していましたから』
『こんなこと聞いていいのかわから……』
『どうして商会が潰れたのか? でしょうか?』
『っ!? あ、ああ。どんな理由なんだ?』
先読みするのは止めて頂きたい!!
これだからニュータイプは……
"ルルカは賢いな"とでも言って貰いたいのか?
『直接的には村に行商に向かった荷馬車が魔物に襲われて失った為です。
その際に亡くなった従業員の補償をするのが精一杯で大手商会から受けていた融資の返済が不能になり奴隷落ちしました』
『護衛はいなかったのか?』
『一般的に村への行商には護衛は付けません。採算が取れませんので。
防衛策としてクズ肉を撒いて魔物の気を引いてその隙に逃げるのが一般的です。
現場から少し離れたところにクズ肉を撒いた形跡はあったようなのですが……運が悪かったのでしょう』
亡くなった従業員には気の毒だがその一件があったからこそルルカは俺の隣にいる訳だ。
『元々商会を亡き夫から引き継ぐ際のゴタゴタで幾つかの取引先を失ってしまいましたので経営は先細り状態でした。
荷馬車の喪失が無くとも同じ道を辿ったことでしょう』
『俺的にはあのタイミングでルルカが王都の奴隷商にいてくれないと買えなかった訳だからな。
その偶然には感謝しているぞ!!』
お前も何かフォローしろとロザリナを肘で突く。
『そ、そうですよ! ルルカさんがいたから私もツトム様に買って頂けた訳ですし……』
お前は奴隷商での勝負に勝っていたら賭け金受け取って俺のところに来る気なんてなかっただろ、と激しく突っ込みたいがここは空気を読んで我慢だ。ロザリナめぇ~
『私はこのまま"3人"で楽しく過ごせるのなら嬉しく思います』
くっ!?
ルルカめ、やたら"3人"というところを強調して言いやがった!!
『い、いや、人はいずれは増やすつもり……』
『そうですよね! "3人"で仲良く暮らせるのなら私も嬉しいです!!』
ロザリナぁぁぁぁぁぁ!!
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