第96話
こんなこと誰にも相談できないしなぁ……
ん? 能力や異世界関連のこと以外なら相談できるか?
要は緊急事態を早めに教えてもらって助けに行けばいいのだし。
う~~ん。こんな重大な仕事は俺がやらなきゃいけないことなのだろうか?
ハーレム作ってイチャイチャのんびり過ごすだけで十分幸せなのになぁ。
『のんびり暮らせていけるのかしら?』
王都でティリアさんに言われたことが頭をよぎる。
それにあちこち助けに行くとなると正体を隠し続けるのにも限界があるよなぁ。
その王都で思い出したが、大体ランテスが王都なんかでのんびり遊んでいるのも悪いだろう。
俺より強いくせに……
なんとか奴をバルーカに引っ張って来れないものか。
それを言うなら俺やランテスと同等以上の強さの1等級や銀級・金級が遊んでいるのが1番悪いな。 別に普段は遊んでいてもいいから最前線に住んでもらって緊急時に助けてもらう体制にはできないものだろうか。
現状そうなっていない以上何か問題があって無理なんだろうけど。
冒険者ギルドへの直接的な口出しは無理だろうが、ロイター子爵に相談してなんとか南部3国共通の問題として認識してもらうことはできないだろうか?
違うな。ロイター子爵はバルーカ領軍の指揮官だから畑違いだ。外務省的なところを紹介してもらう……これも違う。俺が掛け合う必要は微塵もない。誰か問題を認識している関係者を探して動いてもらうのだ。もちろん手伝えることは手伝う方向で。
まったく、こんな大問題を抱えることになったのも飛行魔法であちこち短時間で行けるようになったっていうのも原因と言えるかもしれない。
確かに凄く便利なんだけども飛行魔法を覚える前であれば、よそで問題が起こっても行くのに日数が必要だからどうにもならないとして諦めることができたのだ。
これは責任転嫁というものか。
飛行魔法はポイント使えばいつでも覚えられた訳だし。
「オイ貴様! 何をやっている?」
部屋の前で考え事をしていたら注意されてしまった。
「ルミナス要塞からの伝令で参りました!」
「そうか。なら入れ!」
「ハッ!」
初老の参謀ぽい人の後をついて行く。
「姫様、要塞から使いの者が参りました」
「そうですか」
おお。この人がレイシス姫かぁ。
間近で見るのは初めてだが、金髪ロングの美人さんだ。
目が吊り上がってる感じが強気な気性を伺わせる。
年の頃は20代後半でちょっと疲れた表情をしているな。
連日の激戦の影響だろうか?
鎧が邪魔でスタイルがわからないのが返す返すも惜しい。
「こちら要塞司令官閣下からの書状であります」
「ご苦労さま」
間近でレイシス姫を鑑賞できたし書状も渡したしで用事は済んだからもういいよね?
「では自分はこれにて失礼します」
「お待ちなさい」
!?
「ハッ!」
「そなたはこの後要塞に戻るのですか?」
「い、いえ、司令官閣下から陛下宛の書状も託されておりましてこれから王都のほうに……」
「ふむ。そなた名は?」
「ツ……」
「ツ……?」
「ツムリーソであります!」
やべぇ、自分の偽名忘れていたよ。
誰だよ! ツムリーソなんて付けた奴は!!
「ではツムリーソ、私からも陛下宛の書状をしたためますので王都に運んでください」
「かしこまりました!」
くそぅ、1つ用事を済ませたと思ったらすぐ1つ追加だとぉ。
こんなんじゃいつまで経っても帰れないじゃないか。
王都では何としてでも王城にいる誰かに2通の書状を押し付けなくては……
ドタドタドタドタ
「も、申し上げます! さきほどまたも回復魔法が使われました!!」
ドキッ。このタイミングで報告が来るのか。
もう少し遅れてここに来た方がよかったか?
新たに来た伝令の為に後ろに下がって場所を空ける。
「またですか。困りましたねぇ」
「これで4度目ですな」
「それで今回も正体はわからないままですか?」
「そ、それが我が軍の兵士で全身包帯を巻いていた男とのことです!」
一部情報が違うが、伝言ゲームが行われる過程で歪んだのだろう。
「詳しく報告しなさい」
「ハッ! その包帯兵士は重傷者を収容している商館に突如現れ、手足を失った兵士の手と足を繋げて、その後これまでのように広範囲に回復魔法を施し消えました!」
「手足を繋げる? それは一体どういうことですか?」
「その、切断された手足が元通りくっついて動くように……」
「そのような話聞いたことありますか?」
「
「それから行動を共にした看護婦が名前を尋ねたそうですが、『自分は医者である。名前はまだない』と答えたそうであります!」
猫じゃねぇよ!!
ったく、意味はわからんがなんとなく名言ぽいセリフを残したというのにあの看護婦めぇ。
「どういう意味でしょうか?」
「さ、さぁ? 何にせよ我が軍の兵士ならばもうそれほど気にする必要はないのでは?」
「果たしてそうでしょうか? その包帯兵士が我が軍の兵士であると判断した根拠はなんですか?」
“包帯男”ではなく“包帯兵士”で名称は確定しそうだな。どっちでもいいけど。
「ハッ! 我が軍の軍服を着ていたとのこと」
「それ以外の根拠は?」
「ありません!」
「つまり軍服さえ手に入れれば誰でも包帯兵士になれるという訳ですね」
ちょっとマズイ流れのような……
「しかしながら、わざわざそのようなことをする意味が小官にはわかりませぬ」
「そうですね。例えば教会の高位治癒術士が教会に身元がバレないようにして彼らを助けたとかはどうでしょう?」
教会の下りは違うが身元がバレないようにというのは大正解だな。
「教会の治癒術士にそのような志のある者がおりますでしょうか? 今回もこちらの要請に対してこの街の治療院は法外な依頼料を請求するばかりだったではありませんか」
「彼らにだって良心の欠片ぐらいは残っているかもしれません。あるいはそのような上層部の対応に反発して個人として動いたという線も」
「調査致しますか?」
「それには及びません。仮に個人を特定できたとしてもシラを切られるだけですし、教会の件はあくまで例えばの話です。もっと別の現実的な可能性があります」
そういうお話はお父さんに手紙書いてからにしてくれないものだろうか。
「その可能性とは一体?」
「他国の者が我がアルタナの醜態を見かねて内々に助けている場合です」
うわぁ、この姫様ほとんど正解に辿り着いちゃったよ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます