第93話
奴が再び跳躍してくる。
一瞬で間合いを詰められるこの跳躍が厄介過ぎる!
ガシッ
拳打を魔盾でガードして風槍(回転)を放つがもちろん奴にダメージはなく、
蹴り→裏拳→蹴り→回し蹴りのコンボを魔盾で丁寧に防いでいく。
は、反撃する隙が……
そうだ!
奴が踏み込んで来る足の位置に土魔法で穴を掘った。
体勢が大きく崩れる。
ここだ!!
土甲弾発射!
ドンッ!
奴に命中!
だが、
「まだまだっ!!」
ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ!
6連射! 都合7発叩き込んだ。
土煙が立ち込める中、距離を取りながら慎重に観察する。
これでダメージを与えられたなら今のを徹底して繰り返せばいい。
しかしこれで無傷なのだとしたら……
どうすりゃいいんだ??
段々と土煙が収まって来る。
果たして……
「くっ」
奴は静かに立っていた。
肌自体が鉄壁って反則だろう。
愚痴ったところで事態が好転する訳でもない。
どうするか……
撤退するか?
いくら黒オーガといえど飛行魔法には追い付けないだろう。
ランテスが生き残ったことからも強力な移動手段はないはずだ。
風槍・零式は当てられず、土甲弾は効果がない。
退却する判断は正しいはずだ。
しかし……
『ほら、ボウズ、オークの串肉だ』
『たくさん食べて大きくならなきゃな!』
『お兄ちゃん、美味しいね!』
『もう安心していいぞ』
『おう。親父さんの無事を祈るよ』
レグの街の人々が思い出される。
俺が退却した後、この黒オーガがどうするのかはわからない。
だけどコイツがこのままアルタナ王国に侵攻するのなら、塞いだ要塞の穴をぶち破ってレグの街を蹂躙するだろう。
くそっ!
俺はこんな損な性格だったか?
奴を倒せる唯一の可能性は風槍・零式だ。
対単体用に特化した威力は土甲弾を大幅に上回る。
これで倒せることに一縷の望みを賭けるしかない。
問題は如何にして当てるかなのだが……
今までの戦いは機動面で上回る奴の間合いでの戦いだった。だけどそれはある意味俺が魔盾である程度対応できる間合いでもあった。
今度は奴の懐に飛び込み超近接戦闘を仕掛けるのだ。
頭と胴体にまともに奴の攻撃を喰らったら即死だが、俺のほうが体格が小さい分小回りを効かせて零式を当てる隙を伺うのだ。
なんでこんなロシアンルーレット的な戦い方をしなきゃならないんだ……
ゆっくりと奴に向かって歩いて行く。
黒オーガは不思議そうにこちらを見ている。
とうとう至近距離で対峙した。
俺がかなり見上げる形ではあるが……
!?
ブゥゥン!
とっさに頭を下げる。
奴の右フックが頭上を通り過ぎた。
まともに当たったら物理的に首飛ぶな、こりゃあ。
それぐらい風圧が凄かった。
奴の脚がピクリと反応した瞬間に魔盾を出してガードする。
こちらも風槍・零式を当てにいくが……
ダメだ!
どうしても風槍を圧縮させる過程が攻撃をワンテンポ遅らせてしまう。
かと言って超圧縮させないことには威力が出せないし……
顔を狙うパンチをスウェーで躱し、さらに連撃してくるところをステップでなんとか回避する。
一方的に攻撃されるのはヤバイ!
一発でもヒットしたら殺されるのだ!
土甲弾を至近距離で放つが回避された。
風槍(回転)だ。
風槍(回転)を攻撃ではなく防御と回避に使うのだ。
奴の拳に風槍(回転)を合わせて互いに腕を弾かせて防御し、
蹴りに移行する為に軸足を踏み出したところに再び土魔法で穴を作りバランスを崩させる。
黒オーガが体勢を崩したところに風槍・零式を叩き込むべく発動させると、
!?
穴を避けて!!!!
こちらの狙いを読んでやがった……
渾身の蹴りを繰り出してくる黒オーガ。
もう魔盾は間に合わない。
発動した風槍・零式を当てにいく。
!?!?!?!?!?!?
自分の体の中でたくさん骨が折れる音が響きまくって、過去最大級に吹っ飛んだ。
黒オーガの蹴りを防御した腕は骨が折れているといった生易しい状態ではなく、骨が腕から突き出て半ば千切れ掛けている。
アバラも何本も折られたようだ。
とにかく吹き飛びながらアバラに回復魔法を掛けて、無事な手で風槍(回転)を地面に向けて発動して軟着陸を試みた。
地面に叩きつけられながらもある程度の衝撃を逃してなんとか座り込む。
アドレナリンのせいかあるいはあまりにヤバい損傷の為なのか痛みのない腕に突き出た骨を戻して真っ直ぐにしてから回復魔法を施す。
骨を戻す過程がちょっとグロかったが気にしてる余裕がない。
念の為にもう1度回復魔法を掛けて、腕を動かしてみる。
良かった。問題なさそうだ。
これで手足の切断も切断された手足があれば回復魔法で治せるということがわかったな。
まさか自分の体で証明することになるとは思わなかったが。
黒オーガは蹴りを放った体勢の感じのままうつ伏せに倒れている。
ステータス画面でレベルが3つも上がったのを確認しているので黒オーガを倒したのは確定だ。
あの相討ちっぽい感じで風槍・零式が当たったのだろう。
黒オーガに近付き若干警戒しつつも仰向けにする。
まだまだ戦っているかのような表情をして絶命している。
左胸には零式による穴が穿たれていた。
回復魔法で修復した後収納した。
しかしこの黒オーガ1体でレベルが3つも上がったと言うべきか、
レベルが3つ“しか”上がらなかったと言うべきなのか。
こんな奴とはもう2度と戦いたくないと思うほどの難敵だった。
あのランテスが即逃げを推奨するだけのことはある。
やはりこの三本角の黒いオーガよりランテスの言っていた一本角のほうが数段強いのだろうな。
いつか戦う時がくるのだろうか?
その時は遠くから狙撃で1発で仕留めるとかそういう戦い方がいい。
こんな命がいくつあっても足りないような戦い方は金輪際御免被りたい。
川端努 男性
人種 15歳
LV40
HP 352/696
MP 1551/6975
力 139
早さ 165
器用 174
魔力 645
LP 56P
スキル
異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv8・浄化魔法Lv7・火魔法Lv4・水魔法Lv1・風魔法Lv9・土魔法Lv8・氷結魔法Lv4・回復魔法Lv8・魔力操作Lv6・MP回復強化Lv8・MP消費軽減Lv8・マジックシールドLvMAX・身体強化Lv4・剣術Lv2・槍術Lv2・投擲Lv1・敵感知Lv8・地図(強化型)・時刻・滞空魔法・飛行魔法
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