第54話

 翌朝ギルドに剣の指導を受けに行ったロザリナが昼前に帰って来た。

 どうだったか聞いたが特にトラブルもなく満足気だ。

 模擬戦も負けなかったらしい。


 西の森の工事に向かう。

 今日で4日目になる。

 昨日は短時間の作業だったものの結構な距離を稼げた。

 やはり道路だけに絞ったのは大きい。

 この作業自体に慣れてきたというのもあるだろうけど。


 今日も順調に道路を伸ばしていく。

 昨日よりも速いペースでどんどん伸ばしてたら急に崖にぶち当たった。

 危うく落ちるとこだった。

 滞空魔法で浮き上がって周囲の様子を見てみる。

 崖の高さは80メートルほどで南東から北西に向かって緩やかにカーブしながらずっと続いている。

 崖の下はさらに南へ大森林が広がっていて遠くに見える山々まで続いてる様子は中々に勇壮な景色を堪能することができる。

 西の方も森が続いているが、遠くには平原もあるようだ。

 西にはアルタナ王国があるとのことだが、どこからがそうなのだろうか?


 さて、どうしたものか……

 下の森でチラチラ敵感知に反応が出てる。

 崖の上の見晴らしが良いところに広場を作ってそこを拠点にして、崖下に狩場を作るか……

 そうだ!! 土魔法で展望台を作ればいいのだ。


 さっそく崖の南端部分に移動してまずは整地する。

 平らにすると森側と高さが合わなくなったので階段を作り、そこから道路を北東に伸ばす。

 しばらく道を伸ばしているとさっきまで作っていた道路とぶつかったので、そこから西に伸ばした道を廃棄した。

 道の両側に安全地帯を作りながら先ほどの崖のところに戻る。

 広場に小屋とベンチを作り、崖から伸ばす形で空中に展望台を作った。

 もちろん手すりも完備していて安全対策もバッチリだ。

 問題は土魔法で作った物の強度なんだが……

 まぁ崩れたら崩れたでまた作ればいいか。




 展望台から滞空魔法で下に降りて、降りたところにも広場を作る。

 広場の両側(東西)は移動させた木の間隔を狭くして疑似的な壁を形成する。

 北側は当然崖なので南側からしかここへは来れない。


 久々のゴブリン焼きだ。

 匂いに釣られてやって来たのは……

 ゴブリンかよ!!

 サクッと剣で倒してゴブリン焼きに追加する。


 その後は待っても獲物はやって来ない。

 敵感知には反応あるんだが今ひとつ喰い付きが悪いな。

 南の森の魔物は警戒心が強いとかか?

 収納にはたんまりオークがあるし、しばらくのんびり狩りをしよう。


 という訳で帰ることにした。

 もちろん森の道のまだのところに安全地帯を作りながら移動した。

 森を抜けたところでまだ魔力に余裕があるので飛行魔法の練習をする。

 あとちょっとで習得できると思うのだがなぁ。




「午後に城から使者が来ましたよ。明日の午後に城に来て欲しいそうです」


 帰って早々にルルカがこんなことを告げてきた。


「な、何もやらかしてないからな!」


「(じぃーーーーーー)」


「本当だって。少しは俺のことを信じてくれ」


「もう申し上げるまでもないと思いますが何事にも」


「慎重に対応しろってことだろ? 問題ない。それで使者はどんな人だったんだ?」


「兵士の方でしたよ。男性です」


「ならロイター子爵だろう。気さくな方だから大した用件でもあるまい」


「だとよろしいのですが……、それと家族への手紙を書きましたので……」


 ルルカが大きめの包みを差し出して来た。


「中に3通分入っておりますので」


「今日中に出せば明日の朝の便に間に合うな」


「い、いえ、急ぎませんのでお城に行くついでに通常配達で出してください」


「わかった」


 今日のルルカは珍しくスカート姿だ。いつもはパンツルックなのに。

 食事の為に隣に座ったルルカの太ももに手を伸ばした。

 サワサワ撫でても無反応だ。


「以前に西の森の奥に狩場を作るという話をしたのを覚えているか?」


 太ももを触りながら話し出す。


「はい」


「よく覚えております」


「本格的な狩場はもう少しかかるが、一応森の中に拠点を作ったので明日の午前中に3人で行ってみないか?」


 無反応なのもおもしろくないので、パンツの中に手を入れてお尻を直接撫で始める。


「森の中は危険ではありませんか?」


 澄まし顔で食事を続けてるか……

 少し際どく触ろう。


「工事中も全然魔物はいなかったし、少なくとも拠点までは大丈夫だ」


 特に変化なしか……

 大胆にいっとくか。


「(んっ)」


 お! 反応し始めたな。


「ただ備えは万全にすべきだからロザリナは完全装備だ」


 手の動きを段々激しくしていく。


「承知致しました」


「(はぁはぁ)」


「ルルカは動きやすい恰好をするように」


「わ、かりました」


 ちょっと涙目で睨んできた。


「最近まともに狩りができてないから向こうから襲ってくれるなら楽なんだけどな」


 ふふふ。睨んでも無駄だ。

 ここをこうして……


「!?」


「それでも夜間の襲撃の際に大量のオークを確保してるから収入面での不安はないので安心していいぞ」


 ルルカの体が小刻みに震えている。


「あの。ルルカさんどこか体調でも悪いのでは?」


「む。ルルカ大丈夫か?」


 しれっとこんな事を言うなんて悪い奴だな、俺は。


「少し気分が……」


「しばらく横になるといい」


 ルルカをお姫様抱っこしてベッドに運ぶ。

 どうでもいいことだが、ルルカの方が大きいからレベルアップしたステータスがなければこんなことは無理だったな!


 ベッドに寝かすとまた睨んでくる。


「中々刺激的だったな」


 もちろんロザリナに聞こえないように小声で話す。


「このようなことはこれっきりにしてください」


「えーー、もっと色々やりたいなぁ」


「ダメです」


「嫌ではなくダメなだけなんだ?」


「その……2人きりの時であれば……」


「それだと特別な刺激にはならないだろう」


「くっ……」


「それより食事の続きをしよう、腹減って仕方ないし」


「だ、誰のせいでっ」


 今度はロザリナにしてみようかなぁ。

 あのチアコスしてもらって。

 ただルルカの前でやってもすぐバレるから意味ないか。

 何か良い方法はないものか。


 さっきからずっと俺のことを睨んでるルルカがちょっと怖い……

 『あんまり睨むとシワの元になるぞ』と言ってやりたいが、どうも俺の中の何かが警報を鳴らしているのだ。

 ちょっと機嫌取っとくかなぁ。


「また今度セクシーな衣装買いに行こうな」


「またですか?」


「ルルカはロザリナが選んだような可愛い系も良く似合うから色々揃えよう」


「そ、そうでしょうか?」


 嬉しそうに頬に手を当ててる。

 チョロインさんめ。








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