第50話
「ツトム。もしかしたらそなたの働きは帝国軍の手柄となってしまうかもしれません」
「構いませんよ。報酬には十分なほどのオークは確保していますので」
下手に手柄認定されてしまうと貴族にされかねないからな。
本当はキングの死体も欲しいのだけど無理だろうなぁ。
「必ずやそなたの功績に光が当たるよう尽力致しますので」
「本当に気になさらないで下さい。帝国軍の方々と共に戦えて良かったです」
「あの、家が心配ですので自分はこれで帰りますね。今日はありがとうございました」
「ツトム……そなた……」
南門から入って北門を目指す。
さすがに入城料は取られなかった。
南門の広場は激戦地だったのだろう。
損傷の激しい魔物の死骸とバリケードの破片、破壊された建物の残骸などが散乱している。
兵士の遺体もあちこちに……
北門へ続く道にも戦いの痕跡が残っている。
ただ、さすがに広場のような惨状ではなく、綺麗と言えなくもない。
防衛戦が上手く行われたということなのだろう。
中で明かりを付けてる建物が多いものの道路は無人だ。
しかしキングへのゲルテス男爵の一振りは凄かった。
何が凄いって剣が振るわれたことが全くわからなかったことだ。
間違いなく王都のギルドにいた鬼共より数段強い。
王国の騎士団長なのだから相応の強さってことなのかなぁ。
ん? ということは金髪ねーちゃん(ビグラム子爵)もあれぐらい強いのか?
だとしたらさっき死ぬ気で頑張った俺って……
ま、まぁ難敵との実戦経験を積めたと前向きに考えるか。
そしてその経験でわかったことは九頭風閃はイマイチってことだな。
あれではキングを倒すまで何発放てばいいのやら。
やはりアマカケル……抜刀術は日本刀がないと物理的に無理だしなぁ。
う~~ん。
ここは2人の考えも聞いてみるか。
何かきっかけでも掴めるかもしれんし。
北門まで行くと門は閉まっていた。
まだ夜中の2時過ぎたとこだし当たり前か。
一応兵士に頼んでみる。
「あの、外出ることできませんか?」
「ダメだ! ダメだ! 朝まで待て」
「俺今まで南で戦ってたんですよ。それに免じて何とかなりません?」
「許可がない者は通せん!!」
「なら城壁飛び越えるのならいいですか?」
「お前魔術士か? それもダメだ!」
くそう。
手でシッシッってやられた。
なら城壁沿いに少し歩いたところで……
そうか、自分の見てないとこでやれって合図か。
先程の兵士のほうを見ると、とっとと行けというジェスチャーをしている。
軽く頭を下げて兵士から見えないとこに行き、滞空魔法で城壁の上まで飛ぶ。いや浮くか。
城壁上に見張りは……あまりいない!
素早く城壁を乗り越え外へ降りた。
壁外区は城内と違いそこそこ人が出ていた。
こうして見ると思ったほどの被害ではなさそうだ。
「ただいま~」
家に着き恐る恐るドアを開ける。
トントントンと2階から降りて来る音が。
「ツトムさん!」「ツトム様!」
2人一緒に抱き付いて来た!
「魔物は追い払ったからもう大丈夫」
「あら? この服……」
ルルカが破けた服を気にしてる。
「結構魔物の数が多かったからな!」
別に悪い事は何もしてないのに、なぜ言い訳をしてしまうのか……
「汗もかいておいでですね」
ロザリナがクンクンしてるし。
「走って帰って来たからだな!!」
城壁を飛び越えたことは悪い事かもしれん……
「もう一度お風呂に入りましょう」
そこは『入りますか?』と俺に聞くべきとこなんじゃ……
「そうしましょう」
案外2人がもう1度風呂に入りたいだけなんじゃ……
「何か仰いましたか?」
「……イイエ」
川端努 男性
人種 15歳
LV24
HP 258/258
MP 411/2341
力 65
早さ 82
器用 87
魔力 285
LP 25P
スキル
異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv6・浄化魔法Lv6・火魔法Lv4・水魔法Lv1・風魔法Lv7・土魔法Lv7・氷結魔法Lv4・回復魔法Lv6・魔力操作Lv4・MP回復強化Lv5・MP消費軽減Lv5・マジックシールドLv8・身体強化Lv4・剣術Lv1・槍術Lv2・投擲Lv1・敵感知Lv5・地図(強化型)・時刻・滞空魔法
翌朝……は起きられず、昼頃起きる。
2人を連れ出し、北の壁外区の外へ。
土魔法で椅子と囲いを作る。
「……で、2人にはこれから俺の攻撃魔法を見せるから意見があれば遠慮なく言って」
「私達でお役に立てますでしょうか?」
「私戦闘に関しては何も」
「何かヒントでも得られれば程度だから気楽に発言して欲しい。常識に囚われない素人の発想こそブレイクスルーのカギとなる!!」
「ブ、ブレ??」
「ではまず最近使うことが多い風刃から」
ザシュッと的として作った土壁に切れ込みを入れる。
「ロザリナも知ってる風槌!」 ドンッ!
「土槍(回転)!」 ズドン!
「土刺し!」 ズシュ!
「近距離射程の風槍(回転)!」 ズババババ!
「そして! 一応俺が考えた必殺技! 九頭風閃!!」 ズゴゴォゴゴォゴォゴォゴォゴォォォォ!!
「どう思う?」
「どうと言われましても凄い威力としか……」
「ツトムさんは風と土属性が得意なのですか?」
「火は使える場所が限定されるのと死体の損壊が激しいから使ってこなかったが…、水は単純に攻撃力の不足だな。しかし……」
「ふむ。違う属性からのアプローチというのも1つの方法かもしれん」
「ツトム様はどのような魔物を相手として想定なされているのですか?」
「オークキングだ」
「!?」「????」
「先程の九頭風閃を2発喰らわしてもロクにダメージを与えられなかったんで新技を開発する必要に迫られてるのだ!!」
「いきなりそんな大物を想定せずに、まずはパーティーを組むことを考えられたらいかがでしょうか?」
「しかし以前言ったように……」
「もちろん承知しております。そこで午後だけとかの条件でパーティー入りなさるのはどうでしょう?」
「俺が条件を提示できるということは、俺より弱いということにならないか? 有象無象を揃えたところで強者の前では無力だぞ」
「しかしツトム様の強さはひょっとしたら2等級でさえ……」
「その強い魔物と敢えてツトムさんが戦う必要はないのでは?」
「そうなんだが、強者に限って大事な場面で対峙するからなぁ」
今までの強い奴で戦いを避けても問題なかったのは技オークぐらいだろう。
「何か気付いたことがあったら何時でもいいから言って欲しい」
2人を壁外区の入り口まで送ってから西の森の道路工事に向かった。
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