第49話
ジェネラル3体はあっけなく倒れた。
レベルは上がったものの拍子抜けだ。
お、おかしいな?
オーク集落で遭遇したあのジェネラルはもっと手強かったが……
同じジェネラルでも個体差があるのだろうか?
体格も装備も似たような感じではあるのだが。
とりあえずジェネラルと周囲のオークを収納していく。
生き残りのオークを騎馬隊が蹴散らしていく。
騎馬隊は200騎以上はいるようで西門を開けて討って出たみたいだ。
先ほどの音は城門が開く音か。
後続の歩兵を率いてた数騎が近付いてきた。
「ツトム! ケガはない?」
「大丈夫です」
ビグラム子爵だ。
ということは西門を守っていたのは帝国軍か。
「まったく、北から凄い勢いで魔物が撃破されていくから援軍が来たのかと思えば……」
「このまま南の敵を側面から攻撃しましょう」
「魔力はまだ大丈夫なのですか?」
「まだやれますよ」
「そうですか……」
「聞け!! これより我が隊は冒険者ツトムを護衛する任に就く!! 単身魔物の軍勢に立ち向かう勇気ある者を守れ!! 白鳳騎士団の意地と矜持に賭けて守り抜け!! 散開!!」
普段の高貴なお嬢様風とは打って変わって凛々しく命令を下す様は確かに騎士団長に相応しい。
騎士団に守られ南西の角まで行き、魔物の軍勢に向けて土槍(回転)を撃っていく。
またレベルが上がった。
この短時間で一体どのぐらい倒したのか。
数えるのがバカらしくなるぐらい倒してる。
1発1発丁寧に撃つ。
同時に射出するより僅かながら魔力効率が良いのだ。
しばらく撃ち続けていると、突如魔物の軍勢が崩れた!!
やはり側面攻撃の効果は抜群だ。
南に向けて撤退を始めたようだ。
まぁ切り札だったジェネラル3体が弱かった時点でお前達の負けは確定してたな。
さあ、戦果を拡大させようと追撃しようとした時だった。
敵感知に強力な反応が……
「下がれ!! 下がれ!!」
帝国軍と共に慌てて下がる。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!!
凄まじい衝撃がして土煙が辺りを覆う。
なんだ?
土煙が段々と引いていく。
すり鉢状のクレーターの中でうずくまっていた大きな物体が徐々に立ち上がる。
対峙してる訳ではないのに強烈な威圧感が全身を襲った。
ジェネラルの1.5倍はある巨大な体躯。
禍々しい鎧に身を包み、手には大きな戦斧を携えている。
「オ、オークキング……」
ビグラム子爵の呟きがはっきりと聞こえてきた。
「あれがオークキング?」
確か王都ギルドの資料にはこの長い魔物との戦いの中でほんの数体しか討ち取れてないという。
しかもその討ち取れた事例も大きな犠牲を払ってのことだ。
に、逃げたい……
集落で戦ったジェネラルより数段強いのは確実だろうし。
ただなぁ……
ここで俺が逃げると間違いなく帝国軍が犠牲となってしまう。
現地軍同士はともかく、帝国と王国は同盟を結んでいるとはいえその関係は微妙と聞く。
派遣軍に多くの犠牲者を出すことが両国の関係にどのような一石を投じる事態を引き起こすのか、まったく予測ができないのだ。
「ビグラム様! 部隊を下がらせて!!」
「し、しかし……」
もうここは腹を括るしかない!
クレーターの中から上がって来たオークキングと正面切って対峙する。
強者のオーラ感が半端ない。
「グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!」
咆哮と共にこちらにダッシュして来て戦斧を振り下ろしてくる!
魔盾10枚で防御する。
当然破ってくるのは想定済みなので剣で逸らすのだ。
キングの戦斧はどうにもならないので、自分の体を剣を起点として逸らす。
戦斧が地面を大きくえぐり取ったのと同時に風槍(回転)3連を叩き込む!!
む、無傷かよ……
キングを多少押し込んだ程度で防がれてしまった。
ここは密かに練習した奥の手を出すしかない。
ネーミングがイマイチなのだが出し惜しみできない状況だ。
先程の攻撃で多少なりとも押し込めたのだから、先制すればキングの攻撃はこちらには届かないはず!
何よりあんな攻撃を紙一重で避け続けるなんて無理だし!!
キングが振り被った瞬間に……いけ!
「九頭風閃!!」
風槍(回転)を3×3で射出する! 某明治剣戟漫画からパクッ……コホン。リスペクトした必殺技だ!
この最大最強の奥の手であればいかにオークキングと言えどただでは済むまい。
九頭風閃によって舞い上がった土煙が引いていくとキングの姿が……
無傷ではなさそうだが、深刻なダメージもないっぽい。
残り魔力が……
九頭風閃は魔力100近く使うので次の1発がラストだ。
なんとか倒す……のは無理でも、ダメージを与えて撤退させるか騎士団でも倒せるようにしないと。
キングが振り被る。
間合いのかなり外だぞ。なんだ?
!?
戦斧を投げ……
魔盾と剣で必死に下向きに逸らせる。
戦斧による投擲を凌いだところを間合いを詰めてきたキングの拳が迫って来た!
浮身を使うも腕のガードをへし折り強烈に吹き飛ばされる。
殴られた瞬間から回復魔法を使いダメージを最小に留める。
吹き飛ばされた先で立ち上がろうとしたところを戦斧を拾ったキングが追撃して来る!
ぐっ。
「九頭風閃!!!!」
できる限り鋭さを意識して放った。
渾身の一撃を放ち疲労困憊の中立ち上がりキングを見る。
魔力も単発で放つ程度しか残っていない。
キングは悠然と立っている。
出血はしてるが深手ではあるまい。
お互い睨み合う。
キングも俺の魔力が尽きてるのをわからないので警戒してる。
俺自身は打つ手がもうない。
キングが首を傾げる……
ん?
そのままポトリと首が落ちた。
!?!?!?!?
首を失ったキングの体が倒れると、その背後で騎乗したゲルテス男爵が剣を振り抜いていた。
援軍……か。
助かったああああああぁぁぁぁぁぁ!
ゲルテス男爵が剣を鞘に納めながら近付いて来た。
「助けて頂きありがとうございます!!」
「好機に思えたのでな。手柄を奪う形になって済まぬが」
「い、いえ。自分には倒す手段がありませんでしたので、ゲルテス様の大手柄にございます!」
「謙遜が過ぎるな。ん? ビグラム子爵も御無事でしたか」
「御助勢感謝致します。ゲルテス男爵」
「これしきのこと。少数の手勢を率いて戦局を逆転せしめオークキングを抑えたビグラム子爵率いる白鳳騎士団の働きに比べればなんてことはありません」
「私達は特には……」
「部下に指示を出さねばなりませんので。失礼」
ゲルテス男爵は部隊を率いて追撃戦を行う模様だ。
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