第42話
昨晩は風呂場でもベッドでも終始2人に押されっぱなしだった。
俺が主導する形よりは断然良い傾向なのだが、
俺の望む御奉仕とは微妙に方向性が異なるのだ。
和の心というべきかおもてなしの心配りを持ち合わせないと単なる洋モノの肉食系に過ぎなくなる。
それが嫌いなのか? と問われればたまにはアリと返答するが。
朝のイチャイチャを早めに切り上げて南東の森に向かう。
新たに土壁が設置された壁外区の東口(城壁の北東の角のとこ)を出ると、東門の様子が様変わりしていた。
東門から東へと伸びる街道沿いに南(魔物の領域)に対する防御壁が土魔法で築かれていた。
高さは3メートルほどで上部は城壁と同じように南側は凹凸になっており上に守備兵がいて警戒に当たっている。
防御壁の内側では職人達が何やら作業している。どうやら防御壁の補強工事を行っているみたいだ。
この備えならば数百程度の魔物なら突破できないだろう。
だけど数千・数万単位で押し寄せて来たら?
恐らくこれらの防御壁を放棄して城で籠城戦を行うはずだ。
緊急招集の時の感じとこの城の城壁なら数千程度の魔物であればそこまでの脅威ではないだろう。
防御壁からの撤退に失敗して城門が突破されなければ、だが。
しかし万単位で攻めて来たら城は平気だとしてもかなりの魔物が壁外区を襲うことになるだろう。
その場合にどうやって2人を守るか……
そもそも魔物が万単位で攻めてくるということがあるのだろうか?
城での指導の時にもっと聞いておけばよかった。
ロイター子爵はもちろん風魔法や飛行魔法を教えてくれた人もこちらから気軽に会いに行ける人達ではないからなぁ。
東門の防御壁のとこで風槍(回転)でも撃ってれば『キャ♪ すご~い♪ それ教えてくださいませんかぁ?』とか言われないだろうか? 特に女性魔術士あたりに……
いや、それ以前に怪しい者として捕縛されるのがオチか。
軽くロザリナに聞いて後はギルドの資料室で調べるしかないな。
そんなことを考えながら街道を東に走っていき、以前オーク集落討伐の際と同じ地点で森の中に入っていく。
やや走る速度を落としながら森の中を進む。西の森とは違い木々の間隔が広い為快調に先に行ける。
地図(強化型)に反応があったがゴブリンだったのでサクっと槍で倒し進んで行く。
集落のあった場所まで来たが焼け落ちた残骸があるだけだった。
もちろん敵の反応もない。
ここまでは想定内だ。
今日はここより更に南下するのだ。
早歩きにて未踏域に突入していく。
先ほどまでと変わり映えのしない風景が続いている。
1時間ほど歩き続けたが途中犬を倒した(未回収)ぐらいで特に何もなく引き返すことを考え始めた時だった。
地図(強化型)に10近い赤点が南に表示された。
慎重に進んで行く。
オークだ。
しかも妙に装備が良い。
オークの視界に入らないように木に隠れながら徐々に近付いていく。
「ブヒィィ」
急にオーク達がこちらに向かってきた!
なんでバレた?
風刃で次々と首を落としていくが、木を巧みに遮蔽物代わりにした1体のオークの接近を許してしまう。
斧で斬りかかってくるところを魔盾5枚重ねで防御し、バックステップで距離を空け風刃で首を落と……
回避した!
魔法を使うタイミングを読まれたのか?
土槍(回転)を3本放ちとどめを……
斧で土槍(回転)2本の軌道を変えてそのまま自身を回転させて3本目を回避された……
こいつやるなぁ。
こちらも槍を出しオークと対峙する。
オークリーダーではない。体格的には普通のオークだ。
ジェネラルみたいな圧倒的なパワーこそないが技量が凄い。
土槍(回転)を今度は2本放つ。
先ほどと同じように斧を振ったタイミングを狙って風槌アッパーを回避された場合を想定して3発横並びで発射!
普通に真ん中の風槌がヒットしてアゴがカチ上がって無防備になった首元に風刃連打!!
頭部が転がった……
こいつの死体と頭部を回収し、他の死体も回収して、土魔法で地面に穴を開け他の頭部を埋めた。
開けた場所に移動して土魔法で椅子を作り休憩と食事にする。
しかしあんなオークがいるとはな。
仮に技オークと呼称しよう。
オークの数は8体。
どの個体も金属製の鎧を装備してて、武器は棍棒。技オークだけが斧だった。
最初にこちらの接近がバレたのは匂いか? 風上だったし。
オークの視界に入る以上回り込むことはできないのだからバレたのは仕方ないか。
これまで300体以上のオークを倒したはずだがこんな技オークみたいなのは初めてだ。
報告すべきかな? 俺が知らないだけということも十分あり得るが……
まぁギルドへの報告はロザリナに聞いてからでいいとして、軍のほうはどうしようか。
ギルドと積極的に情報交換してると言ってたけど、報酬とか対応で優遇してもらったのにガン無視するのは不義理になるのではなかろうか?
ロイター子爵の人柄であれば既知のことだったとしても不快には思わないだろう。
ただ会うまでのハードルが高いからなぁ。
面会を申し込んだとしてまともに対応してくれるだろうか?
う~ん。
やはりここはきちんと義理を通すべきだろう。
対応してくれなかったとしても手紙を書いて託すとかやり方はあるはずだ。
食事休憩を終え、もう少し奥に進んでみることにする。
念の為にLPを消費して身体強化をレベル4に上げた。
更に1時間近く南下してきたが、犬を倒した程度で何もなかった。
その後30分ほど悩みながら歩き、いい加減引き返すことに決め、北へ向けて走りだす。
全力疾走で森を駆け抜け、街道に出てそのままバルーカを目指した。
あまり効果の実感がなかった身体強化スキルだが、このように全力で走ると以前と持久力が違うことが実感できる。力とか早さのステータスにも補正が掛かっていると信じたい。
そうじゃないとLP4ポイント分の価値が……
バルーカ東門の防御地帯に到着し少し休憩する。
警備している兵士を見ながら、この中に俺の教え子の魔術士(短時間の指導だったとはいえ間違った表現ではないはず)がいないか探してみる。
もしいたら色々聞けるし、ロイター子爵に面会するのも容易になる。
だが、どうも俺が教えた人達とは軍服からして違うのだ。
帝国軍だろうか? 見覚えはあるのだが。
諦めて入城料を支払い内城に向かった。
※東門の要塞地帯の守備兵はゲルテス男爵麾下の第2騎士団。
ツトムは20日以上前の緊急招集の時に戦場で共に戦っている。
内壁は冒険者カードを見せれば割と簡単に通過できるのだが、問題は城である。
門番の兵士に用件を告げると中にある受付で手続するように言われた。
前回来た時はこんなやり取りなかったが…、城側からの呼び出しとの違いだろうか。
「ロイター子爵御本人かその副官または護衛の方との面会を申し込みたいのですが」
受付には若い男性の役人がいた。
「こちらの用紙に記入してください」
正にお役所仕事だがここは素直に従う。
「ではあちらの待機室でお待ちください」
待機室には3人既に待っていた。
必ずしもロイター子爵待ちとは限らないが、可能性は高そうだ。
ということはかなり待つかもしれんな。
椅子に座ってぼんやりとステータス画面のスキルツリーを眺める。
前から気になっている『錬金術』。
恐らくポーションなんかを作る方向の錬金術だと思う。
両手を叩いて錬成するほうでも一向に構わないが。
この世界には一般に出回る回復ポーションとかは一切ない。
なんとかの秘薬みたいな名前でオークションに出品されるだけだ。
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