第41話

「オークの相場はどうなっている?」


「ここのとこ上がったままだね」


「この前東門を襲ったオークは買い取りしなかったのか?」


「軍の奴らは売ることなんて考えないで派手に倒すからな。まともに精肉できる部分は結構少ないのさ」


 精肉店に伝手があれば直接売れるのだが……

 そこまでする必要はないか。王都に行ければ高く買い取ってくれるのに。


「このオークと狼も売るよ」


 この前城で襲ってきたオークのうち普通のオークとゴブリンが乗ってた狼を出す。

 ヘビの皮が26000ルク

 オークが1体7000ルク(良い状態)まで値上がりしていて、7体で45200ルク

 狼は毛皮が重宝されていて1体4000ルク。但し土刺しで穴が開いてるのを差し引かれて4匹で12000ルク。


 ヘビの皮が激高だがあんなのは滅多にいない。だからこその買い取り価格なのだろう。希少価値という奴だ。

 やはりオークだ。通常の倍近い買い取り価格は美味しすぎる。

 西の森の道路工事はまだ始めたばかりだ。奥に行くほどMPに余裕を持たせて終わらせないといけないから工事に必要な日数も増えていくはずだ。

 ここは一旦南東の森の様子でも見てくるか?

 討伐したオーク集落よりも更に奥に別の集落とかあるかもしれない。




 その後家具屋で2人の個人用ベッドと布団一式を買った。

 1人分3万ルクで2セット買ったので58000ルクにおまけしてもらえた。

 鏡付きの化粧台も買ってあげようかと思ったがそこそこ種類があったので即諦めた。

 本人に選んでもらうのが1番だ。

 城内の店も見てみるべきなのだろうか?

 そういえば凝った下着を扱ってる店に行ってないよ!

 元々城での指導の帰りに寄るはずだったのに。

 くそう。オーク共め余計なことを(怒

 入城料はたかが300ルクなんだし普通に行けばいいのだが、それだけの為に行くとなると何故か二の足を踏んでしまう。

 貧乏性なのだろうか?


 所持金89万2120ルク→91万7320ルク



 

 帰宅して2人を連れて2階に上がる。


「ベッドを置く場所を言ってくれ」


「別に構いませんのに……」


「昼寝の時とか1人で休みたい時とか必要だろ?」


「昼寝はしませんよ?」


「寝る寝ないは別にして、1人の空間で横になってリラックスするのも重要だ。美容にも良いらしいぞ」


「し、仕方ありませんね。そちらに置いてください」


 ルルカは意外と自分の年齢気にしているからな。

 美容という言葉で釣ると案外チョロかったりする。


「今よからぬことを考えてませんでしたか?」


「い、いや。次はロザリナの部屋だな」


 しかし勘は鋭いから注意が必要である。


「すぐのことではないが、いずれ奴隷が増えた時はロザリナの部屋に入ってもらうからそのつもりで」


「わかりました」


「また増やすつもりなのですか?」


 ルルカの視線が……

 ハーレムという目標なら最低4人は必要だと思うんだ!

 しかしこんなこと言える訳ないし。

 ちゃんともっともらしい言い訳……じゃなかった。必然性を説かねば!


「戦闘奴隷がもう1人いれば俺の狩りを手伝ってもらえるし、ソロというのは常に緊張を強いられて結構キツいのだぞ」


「それは大変だと思いますけど……」


「ルルカも毎日の買い物や家事で大変だろうしもう1人家事できる人がいれ」


「要りません!!」


 喰い気味に答えやがって。

 4人目は難易度高そうだ。


「まぁ当分は2人のままだから」


 3人目の戦闘奴隷もすぐ買える訳ではない。

 かなりお金に余裕を持たせてから買うつもりだ。

 あまりカツカツだと2人も居心地悪いだろうし、朝イチャイチャしてゆっくり狩りに出かけるなんてできなくなる。


「それよりもロザリナ」


「は、はい。なんでしょう?」


 1階に降りて食事にする。


「2人に鏡付きの化粧台を買おうと思うのだが、城内のほうが品が良かったりするのか?」


「ツトムさんそのようなお気遣いは……」


「私に化粧などもったいないです」


「女性には必要だろう? 家借りた後バタバタして俺のケガもあって後回しにしてたけどちゃんとしないとな。服を収納するクローゼットなんかも必要だろうし」


「で、どうなんだ?」


「城内の方が品揃えが豊富ですので品質が良いものも多いかと」


「ロザリナはまだ冒険者に復帰してないな?」


「はい。まだです」


「冒険者に復帰すると緊急招集に応じる義務も再び発生するのか? それとも奴隷は免除されるとかあるのか?」


「復帰すれば奴隷でも緊急招集に応じなければなりません」


「だとするなら冒険者への復帰は無期延期だ。ルルカの警護が最も必要な緊急招集時に護衛に付けない状態にはできない。すまないな」


「いえ、当然のことと思います」


「明日は少し早く出て南東の森に行ってみるつもりだ」


「なので明後日以降の都合の良い日に3人で城内に買い物に行こう。家具屋・化粧品店・古着屋・エッチな下着店にオススメの食事処。ロザリナは最適なルートをルルカと考えておくように」


「わ、わかりました」


「あのツトムさんも店に入るのですか?」


「化粧品・古着店は外で待ってるよ。家具屋は……店の中で待てるようなら中かな」


「あとエッチな下着店は俺が見ないとどうにもならんだろう」


「あの……あくまで凝った下着を扱ってるお店でして……」


 護衛兼荷物持ち兼財布な俺……

 これは奴隷の主人として正しい姿なのだろうか?

 ただの便利君になってしまってないか?

 しかし、オークの集団がまた出現したらロザリナ1人では対処できないだろうし。

 荷物持ちと言ったって収納にパッと入れるだけだ。

 奴隷の物は主人が買うのが当然なのだから財布でいい訳で。


「ロザリナ。可能性が少しでもあるならそれに全てを賭ける。それが漢というものだ」


「は、はぁ……」


「(単にスケベが喜ぶアイテム買いに行くってだけの話じゃない。何かっこつけて言ってるのよ)」


「ルルカ何か言ったか?」


「べ、別に。何も……ホホホ」


「その、家具さえ収納して頂ければ後の要件は私達だけで済ませますよ? ツトムさんも待ってるだけなのはお辛いでしょう」


 さすがはルルカ。そういう気遣いがきちんとできるな。

 元商人だからか? いや元主婦だからか。

 そういやロザリナは未婚者なんだよな? こういうことは最初に聞いておかないと今更聞けない状態になってしまう。現状がそうである。


「以前ならそうしたかもしれないが、今はダメだ。いつ襲撃に会うかわからない状態なんだ。ロザリナ、オークによる襲撃は何体まで対処できる?」


「3体まででしたら確実に。4体からはその場の状況と運次第なことになるかと思います」


「さすがだがそれでは話にならない。今回の襲撃の備えとしては20~30体を街中で殲滅できなければ対応できないんだ」


「そこで、ルルカには俺なしで城内に行くことを当分禁止にする」


「わかりました。元々城内には行ってませんので何も問題ありません」


「うん。今度の買い物も気軽に行けないことを前提に、例えば化粧品だったら予備の分も併せて複数買うとかそういう計画を立てて欲しい。金額は気にしなくていいからな」


「その……今までもそうなのですが、私達の為にそのような過分な扱いをして頂いて心から感謝致します」


「あ、ありがとうございます」


 うわ! 2人して深々と頭下げてるよ。


「い、いや。当然のことなんだから気にしないでくれ。むしろ良く尽くしてくれる2人に対してこの程度のことしかできない俺を許してくれ」


「こんなにも大切にして頂いて不満など何一つありません!!」


「ツトム様の為ならば喜んでこの命を捧げます」


「大げさ過ぎる! こんなことは『宝石の1つや2つ買えねえのか? この貧乏小僧が!!』って思うぐらいで丁度いいんだよ!」


 ヤ、ヤバイ。今更エッチな下着買いに行くついでの用件を見繕ってただけだったなんてとてもじゃないが言える雰囲気じゃないぞ。

 大体ロザリナよ。命を捧げるな。命を。

 捧げるのは裸体にしてくれ。


「「ふふふふ」」


 なんだかお互い見ながら笑ってるし!


「風呂の準備してくる!」


 くっ。なぜだか凄い負けた気分だ……

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