第34話

 家を出て最初に鍛冶屋に行く。

 ロザリナには手に馴染む剣を選ばせ剣帯ベルトと共に買う。

 ルルカは初心者に使い易い意匠の凝ったものをロザリナのアドバイスを受けながら選ぶ。

 どちらも4万ルク以上の中から選ぶようにした。

 こういうところで差を付けないのが家庭円満の秘訣であろう。

 家庭を持ったことないし未だ独身なのだが。




 2人と別れてギルドに向かう。

 まずは剣と槍の訓練だ。


 剣の模擬戦では1度も勝てなかった。

 俺が勝てるかどうかは模擬戦を行うグループに初級クラスが混ざるか否かの違いだけだということに気付いてしまった。

 LP(レベルポイント)は現在18Pあるのでついつい成長の遅い剣と槍のスキルアップに振りたくなってしまう。

 ただここは我慢だ。魔盾(マジックシールド)のレベルがかなり練習してるのにLv7で止まったままなのだ。スキルレベルも高くなる毎に次へのレベルアップが難しくなる仕様なのは間違いない。

 後々絶対効いてくるはずなので今ポイントを使わないのは正解なはずだ。



 訓練終了後、依頼が貼られている掲示板を見に行く。

 もちろん見習い卒業後の6等級昇格の為の下準備である。


 しかし、7等級の依頼掲示板は護衛以外は見事に街中の手伝いばかりだ。

 引っ越しやら清掃やら屋根の修理から家事手伝い、介護に店番、果ては子守りなんてものもある。

 家事や子守りをルルカやロザリナに代行してもらって依頼達成ということにはならないだろうか? 無理だろうなぁ。

 地道にやるしかないのかぁ。めんど……い、いや待てよ。清掃なら浄化魔法で一発なんじゃないか? 家事にしても掃除や洗濯であれば浄化魔法で問題ない。引っ越しも梱包済なら収納に入れて楽々移動だ。

 うん。光明が見えてきた。

 さすが異世界に来て1番目と2番目に覚えた魔法なだけあるな。早速夜にでも2人に自慢し……こほん。今後の見通しについての報告をすべきだろう。




 さて午後はどうするか。

 南東の森に行くには時間が微妙か。

 西の森で魔法の練習も兼ねて狩りをするか。

 明日は午後から城で魔法訓練の協力だし午前中は家でゆっくりする分今日狩りをするのだ。


 ギルドの近くにある店で食事をして西に向かう。


 風魔法がLv6になったので何か新しい魔法を覚えたいがなかなかイメージが沸かない。

 レベルアップと共に魔法が覚えられれば楽なんだが、この世界では自分で魔法をイメージして習得しないといけない。

 サンドアローひとつ取っても個人個人で微妙に違うのだ。


 北西の城壁の角のとこで南に向かう。

 南西の森という呼び方をしているのかはわからないがその辺りだ。


 森の側でゴブリンの死体を焼き、離れたところに土魔法で椅子を作る。


 新しい風魔法か。

 某霊力漫画で戸〇呂弟が圧縮した空気を撃ち出す指弾をやっていたな。

 あれを魔法でできないものか。

 離れたところに土魔法で的を作り試してみる。

 うん、普通に出来るな。

 つかこれ風槌を小さくして撃ち出してるだけだ。

 あまり意味がない。失敗だな。



 ガッカリしてるとこに地図(強化型)に反応がある。

 赤点が1つ、そこそこの速さで森から向かって来てる。


 1体だけ? なんだ?


 現れたそいつは焼いてたゴブリンを丸呑みした。

 蛇だ。やたらデカイ。


 先手必勝で風刃を放つ。

 スルリと避けられた。

 今度は数を増やして風刃を放つが当たったのは外皮で少し傷付けた程度だ。

 内皮? 腹側に当てないと……


 俺を呑み込もうと突っ込んでくる蛇に下からアッパー気味に風槌でカチ上げる。

 上を向いたとこを風刃で連射して仕留めた。


 こんなのがいるならここらに魔物はいないのかと、そのまま森の中に入ってみる。

 南東の森と違い密林タイプの西の森は視界が限定され、太陽の光も遮られ、動きも制限され、魔法の射線も通らず、森独特の腐葉土とかの匂いも濃く、感知スキルがないとかなり危険だ。


 地図(強化型)には何も反応がない。

 森の雰囲気と併せてかなり不気味だ。

 深追いせずに戻ることにする。

 行きと別方向に大回りして森を出たのだが獲物は何もいなかった。


 北へ戻ることにする。

 途中見つけた兎の首を風刃で落しながら壁外区北西のいつもの狩場でゴブリン焼きをする。


 しばらく待つが何もなく諦めることにする。

 西の森はまだ狩りには適さないようだ。

 ちょっと早いが帰宅しよう。




 夕食時、


「……という訳で、浄化魔法を使って依頼を消化しようと思うのだが……」


「よろしいのではないでしょうか。ツトムさんは浄化魔法得意ですし」


「そういうことであれば城内のギルドの依頼を受けてはいかがでしょう? 壁外区より人が多いのでお望みの依頼も探しやすいかと」


 もっとこう……、『ツトムさん素敵~♪』とか『ツトム様最高~♪』みたいな反応が欲しかったのだが。

 致しかたない。この悔しさはお風呂でねっとり晴らすとしよう。


「ロザリナ、俺の呼び名は考えたか?」


「ハイ、ツトム殿ではいかかでしょうか」


「~殿は無しだな。それならまだツトム様のほうがいい」


「そうですか……」


「どうだ? まだ考えられるか? 無理ならツトム様で決めていいが」


 ツトム君・ツトムちゃん・トムっち・ツムツムなどなど俺も色々考えたのだが、どうもロザリナが言うにはイマイチなんだよな。


「ツトム様でお願いします」


「わかった。まぁもっとしっくり来る呼び方を思い付いたら変えてもいい、イテッ」


 隣に座ってるルルカにつねられた!


「私もツトム様呼びで良かったような、慣れるまで苦労してお仕置きまでされたのに……」


「い、いや、さん付け以外だとしっくりくるものがなかなかなくてな。何ならさん付けをロザリナに譲って別の呼び方にするか? 呼び捨てやツトム君なんてどうだ?」


「ふふふ」


 何? その笑顔!? 怖いのですけど……


「食事も終わりましたしお風呂の支度をされてはどうでしょう? ツ・ト・ム・さ・ん」


「……ハイ」


 くっ。この借りはお風呂で……ってさっきと同じだな。




 脱衣所で2人の脱ぐ様をねっとりと鑑賞する。

 この瞬間から至高の時間が始まるのだ!


 今日はロザリナから洗おうかと考えていたのだが、ルルカからに変更する。

 なぜなら先ほどの借りを返さねばならないからな!!


 ルルカの背を洗いながら、


「ロザリナ、ルルカの前に座って顔を良く見るように」


「はい」


「!?」


 ルルカの背に密着して双丘をじっくり揉み洗いする。


「ロザリナもっとルルカに近付いて目をしっかり見るんだ」


「は、はい」


「ダメよ、ロザリナ」


「目を見ながらルルカの手と足を丁寧に洗うように」


「わ、わかりました」


 下半身も洗う。ゆっくり、じっくり、ねっとり、丁寧にだ。


「ン、やめ、なさいロザリナ」


「ツトム様のご命令ですので」


 恥ずかしがるルルカは最高だ。

 更に特注椅子の形を利用して手を伸ばす。


「ツトムさんそこはっ!」


「ここもちゃんと洗わないとね♪」


「いやああああああああああああ!!」


 ※注意! あくまでも体を洗っているだけです。




「はぁはぁはぁ」


 涙目で息も絶え絶えなルルカさんの完成である。


「次はロザリナの番だな」


「じ、自分はその、今日は……」


「ほら、ルルカと場所を交代して」


「は、はい」


「ルルカもちゃんとロザリナの目を見てね」


「かしこまりました」


「ル、ルルカさん!?」


「ごめんなさいね。ツトムさんのご命令よ」


 ルルカはさっきのロザリナよりも積極的なアプローチをした。

 ロザリナの肢体の上でルルカの両手が妖艶に踊る。


「ル、ルルカさん、そこ、ダメッ、あ、あんっ、やぁ」


 もちろん俺も背後から密着して洗いまくる。


「お、お尻に当たってます、ツトム様の、硬い、あっ、ルルカさんダメっ。かき回さないでっ」


 ロザリナの悲鳴と嬌声が風呂場に響き続けたのは言うまでもない。

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