第30話
「ギリアスさんは戦場に立たなければ能力を発揮できるのでは?」
「適材適所ということですか?」
「はい」
「他ならぬツトム様の仰ることです。そのように取り計らいましょう」
「い、いや、ちょっとだけそう思っただけで見習いの言うことをそんな大げさに扱われましても……」
「あの時……、オークジェネラルの圧倒的な威圧感に私は何も指揮することができませんでした。
ジェネラルの背後から次々リーダーが現れると私を含めて皆が絶望していくのがはっきりとわかりました」
まぁあのラスボス感は半端なかったから仕方ない。
「そんな中であなただけがあの強者の群れに立ち向かっていきました。皆の期待を一身に受けてジェネラルと真っ向から激突するあなたの背に私は確かに希望という光を見たのです。
私は今日という日を決して忘れないでしょう。見習いとか関係ありません。
あなたの奮戦のおかげで皆が救われこうして街に帰れることに深く感謝致します」
ミリスさんが深く頭を下げてくる。
「い、言い過ぎですって。ホント偶々上手くいっただけなんで」
「ふふふ」
なにその意味深な含み笑いは。
ギルドに戻り今朝の2階の部屋に集合する。
「皆さんお疲れ様でした。犠牲者が出てしまったことは残念ですがひとまずはオーク集落による脅威が除去されたことを喜びたいと思います。
討伐報酬を渡したいので各リーダーの方は前へ」
まだ15時前か。結構早く帰れたな。
「皆さんからは何かありますか?」
手が上がった。リーダーに苦戦してたパーティーだ。
「瞬烈がやられて当初の作戦通りにはならなかった訳だし、鹵獲物は3パーティー均等に分配してもらいたい」
俺の収納にかなり入れてるからなぁ。
不公平に感じたのだろうか?
「こういうのってさ後から変えると色々と揉めるから最初の取り決め通りにすべきじゃね?」
「エリックはいいのか? タークのとこのガキがほとんど持ってる状況なんだぞ」
タークさんに中央を押し付けた人はエリックという名らしい。
つかガキって俺のことなんだろうな。
「別に奪われた訳でもなし、おまえのパーティーの運搬能力の問題なんじゃね?」
「そうだとしても! 一緒に戦ったのに収入が大きく違うのを不公平には感じないのか?」
「別に。タークはどう思うよ?」
「取り決め通りにすべきだ。と言いたいところだが、瞬烈の周囲にあったオークのみ均等に分配するのはどうだ? あれは俺達が倒したオークではないからな」
「そういう考え方もあるか。いいんじゃないの。そっちはどうよ?」
「わかった。それで納得しよう」
東側で何体回収したかなんて把握してねーぞ。
正直に何体かわからないことを申し出て、更に3人のリーダーによる話し合いの結果、他のパーティーに30体ずつ分配することで決着した。
オーク …184体ー60体(分配)
オークリーダー …5体
オークジェネラル…1体
オークの幼体 …36体
タークさんにジェネラルの遺体と武具を貰えないか聞いてみたところ快く承諾してくれた。
解体場でオークを並べていく。
今日オーク集落を討伐しに行くことを知らせてたらしく、既に卸売業者の荷馬車が待機していた。
買い取り価格は普段より少し安くなるみたいだ。
ジェネラル以外の買い取り価格は計63万4000ルク
1人あたり12万ルクの分配で残りとギルドからの報酬はパーティー資金にするそうだ。
所持金206万5520ルク→218万5520ルク
その後パーティーでの打ち上げに最初だけ参加して帰宅する。
食後に風呂とベッドでイチャイチャした後、
「明日はギルドに寄った後に城内の奴隷商を見に行く」
「かしこまりました」
「そういえば手紙は書いたのか?」
「家族へはまだですが、ティリアには書きました」
「なら明日だそ……手紙ってどうやって送るの?」
「商業ギルドが請け負っております。急ぎなら割高ですが乗合馬車で運びます。
通常は一週間分ほどをまとめて荷馬車に載せます」
「目的の街まで運んだとして、どうやって個人宅や村まで届けるんだ?」
「村々には行商人が巡回しておりますのでそちらに。街の各家には手紙が溜まってから冒険者に依頼します」
毎日ギルドの依頼掲示板を見てれば配達の依頼があるのかもしれないな。
「明日ついでにティリアさん宛の手紙を出してくるよ」
「お願いします」
「ルルカも城内に入って買い物とか食事していいからね」
20万ルク渡しておく。
「よろしいのですか?」
「毎日同じ服という訳にもいかないから何着か買うように。あと上下一体のエプロンも買って欲しい。フリル付きなら最高だ」
「エプロン? フリル?」
紙に絵を描いて一生懸命説明した。
「はあ……」
反応はイマイチだった。
翌日まずは鍛冶屋に行く。
「この槍の修理頼めますか?」
「しばらくお待ちください。親方ー!」
昨日ジェネラルに折られた槍の修理を頼もうとしたら親方を呼ばれた。会うのは初日以来か。
「お。クズ鉄買った坊主じゃねぇか。生きてたのは重畳なことだ」
「お久しぶりです。その節はありがとうございました。一応後日この槍をこちらで購入したのですが」
「こりゃあ見事に折られたな。何にやられたんだ?」
「オークジェネラルによる斧の一撃でした」
「もうそんなのとやり合ってるのか? だったらもっと質の高い武具で身を固めないと死ぬぞ?」
「その槍の修理をお願いしようと思ったのですが……」
「できないことはないが、強度が落ちるからオススメしねぇな」
「わかりました。新しいのを購入します」
まず折れたのと同じ槍を予備として、それよりランクが上の手に馴染む槍をメインとして購入する。
それと収納に入ったままの魔物からの大量の戦利品の武具に関して相談すると、程度の良いもの(もちろん浄化済)は中古として買い取りしてくれ、残りの鉄製のものはクズ鉄として引き取られた。
大量にあるオークの棍棒は使い道がないようだ。風刃で細かく斬って薪替わりにでもするしかない。
槍(メイン)…80000ルク
槍(予備) …45000ルク
所持金198万5520ルク→187万3520ルク
次はギルドに行き剣と槍の訓練に参加する。
内容は王都の時と同じだ。剣の模擬戦では1度しか勝てなかった。
ちょっと聞いてみたところ、午後の訓練も似たような感じの内容らしい。
王都のあの厳しさは何だったのだろうか?
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