第29話
緊急招集の時も思ったのだが、おまえは何の為に弓を持ってるのかと。
ミリスさんも呆れているようだ。
現場がダメなタイプなのだろう。
「と、とにかく逃げ」
ドシドシドシと重低音を響かせてそれは現れた。
体躯はオークより2周りは大きい。
以前見たオーガよりも大きいぞ。
右手にデカイ斧を持ち金属製の鎧を着込んでいる。
左手に持つなにかをこちらに放り投げた。
「ヒッ」
転がって来たのは瞬烈のガルクと弓士の首だった。
オーク如き問題ないと言ってた人が背後を突かれただけで簡単に死ぬ。
この世界はこういう世界なんだな。
ジェネラルの背後からさらに新手のオークが次々現れる。
こいつらもジェネラルほどではないが通常のオークより大きいぞ。
一瞬の睨み合いの沈黙のあと、
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ジェネラル以下6~7体が突っ込んできた!!
通常威力の土槍(回転)を多数ばら撒く。
後ろの何体かは倒したがジェネラルは斧を一閃して弾きやがった!
ホブゴブリンでさえ軌道を逸らすのがやっとだったのに。
ジェネラルに集中して土槍(回転)を放つ。
体部分に囮を放ちながら足や腕に向けて本命の土槍(回転)を放つ。
命中しているのだが防具を壊すだけに止まる。
1本だけ防具以外のとこにヒットしたのだが深手には程遠い感じだ。
あとはもう手持ちの最強魔法風槍(回転)しか手がない。
これが効かなかったらもう……
十分に引き付けて……いけっ!
風槍(回転)!!
ジェネラルからの返り血に手応えを感じる。
が、目の前には斧を振り下ろそうとするジェネラルの姿が!!
とっさに槍を掲げ魔盾を4枚重ね掛けしてガードする。
このままカウンターで再び風槍(回転)をお見舞いしてやる! と魔法を発動しようとした時、
ジェネラルからの一撃で魔盾4枚が破壊され槍を真っ二つに折られ弾け飛んだ。
魔盾4枚ぶち抜きやがった!!
必死に体勢を整え奴を見ると全身血だらけである。
ジェネラルと目が合う。
お互いにわかってる。次が最後だと。次の攻防でどちらかが死ぬと。
ジェネラルの目はなんだろう? 怒りとも憎しみとも違う。
何か清々しさのようなそんなものが混じってる気がする。
とても長いような一瞬の見つめ合いのあとお互いに動き出す。
土槍(回転)を牽制に放つことを考えていたのだが無粋に感じ真っ向勝負することにした。
魔盾を6枚重ねにし二つに折れた槍と収納から出した剣でガードし、あとは風槍(回転)を貫くイメージで放つことに集中する。
ジェネラルの斧が魔盾と接触した瞬間に風槍(回転)を発射!
2度3度と続けて発射した。
斧は魔盾6枚破ったとこで剣と槍にガードされて止まっていた。
川端努 男性
人種 15歳
LV20
HP 173/173
MP 428/1457
力 50
早さ 62
器用 70
魔力 224
LP 18P
スキル
異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv4・浄化魔法Lv5・火魔法Lv4・風魔法Lv6・水魔法Lv1・氷結魔法Lv4・土魔法Lv4・回復魔法Lv5・魔力操作Lv3・MP回復強化Lv4・MP消費軽減Lv4・マジックシールドLv7・身体強化Lv3・剣術Lv1・槍術Lv2・投擲Lv1・敵感知Lv4・地図(強化型)・時刻
体のあちこちが痛むので回復魔法を掛ける。
ジェネラルは風槍(回転)によって胸に穴を開けて死んでいた。
ほぼこいつ1体でレベルが上がったようなものだ。
他にも体に無数の切り傷があり、回復魔法を掛けると傷の大半はなくなったが胸の穴は少しマシになった程度だ。
ジェネラルの遺体を回収して辺りを見ると、パーティー単位で大型のオークを相手している。
ウチのパーティーは大丈夫そうだ。安定している。
タークさんに中央を押し付けた人のパーティーも安定していた。
最後のパーティーが危ない感じだ。
タンク役が吹き飛ばされ剣士がやられそうなとこを魔盾でガードし風刃で首を落とす。
すかさず回収して盾の人に回復魔法を掛けた。
タークさんがやって来た。
「どうやら終わったようだね」
大型オークはラルカスさんが大剣で止めを刺したようだ。
それも回収。
「そうですね」
改めてジェネラルの最初の攻撃はヤバかった。
槍の柄が耐えてくれたのでそのまま吹き飛び事なきを得た。
すぐ折れてたらそのまま斧が俺の体に食い込んでいただろう。
まさに薄氷の上の勝利だ。
「ツトム! あのジェネラルを仕留めるなんて凄いじゃないの!」
「こちらはオークリーダーの相手していてわからなかったぞ」
「ツトムの回転する魔法やってみたい」
タークさん以外のメンバーも集まってくる。
なんかパーティーの仲間で勝利を祝う感じいいな!
この大団円的雰囲気には『次回予告は!』とかやりたくなる。
ミリスさんもやって来た。
「オーク集落の捜索をお願いします。生き残りに注意して!」
3つのパーティー合同で捜索を開始する。
俺は死体や武具を回収する係である。
生き残りは子供のオークのみみたいだ。
次々始末していく。
可愛そうだが手を抜く訳にはいかない。
一番大きなボロテントにはジェネラル用と思わしき武器と防具があった。回収する。
しかしこんな大きいサイズの武器と防具は誰が作っているんだ?
人間から奪った訳ではないだろうに。
東側まで来ると無数のオークの死体と共に瞬烈メンバーの遺体もあった。
オークの死体だけ回収して指示を待つ。
「瞬烈の遺体は私が回収します」
ミリスさんが持ってるバッグに瞬烈の遺体が吸い込まれた!?
あれマジックバッグか。
「最後に集落を燃やしましょう」
ファイアボールを放つ。
メラメラ焼け消失していく集落を見つめる。
兵どもが夢の跡……か……
「さあ帰還しましょう!」
ミリスさんも無理に明るく振舞ってる感じだ。
3等級パーティー瞬烈の喪失はバルーカにとってかなりの損失なのだろう。
帰りの馬車で意識してミリスさんの隣に座った。
「ギリアスさんはどうなります?」
ギリアスはさすがに気まずいのか御者席に座っている。
「瞬烈を見捨てて自分だけ逃げてきた責任は重いです。相応の処分は間違いないでしょう」
「もう一度機会を与えることはできませんか?」
「どういうことでしょう?」
「前回の緊急招集と今回の件を見ても現場に着くまでの段取りに問題があったとは思えません」
俺が思ったのはギリアスは参謀タイプの人間なんじゃないかということだった。
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