第2章 王都滞在編
第10話
三重城壁に囲まれている王都は中心部の城郭を内側として、次に貴族街と役所関連のある第一区画、住宅街と商業関連の第二区画、城壁の外側の壁外区に分かれている。
冒険者ギルドは第二区画にある本部があり、東西の壁外区に出張所を設けている。
ツトムは西のギルド出張所にて護衛依頼の完了手続きをして、収納に入れておいたままだった魔物の死体を売却した。
王都のほうがバルーカより買い取り価格が高かったのでウハウハである。
所持金504,120ルク→662,520ルク
次に向かうのは第二区画にある商業ギルドである。
受付を済まし案内された個室で待っていると20代後半の色っぽいお姉さんが入ってきた。
「本日はようこそおいで下さいました。私オークション部門の担当をしておりますエメリナと申します」
「バルーカより来ましたツトムと言います。これ紹介状です」
「拝見致します」
身を乗り出した時に胸元がぁぁぁぁ
「ご出品なさる品をお出しください」
収納からスーツ一式を取り出す。
エメリナさんは無駄に胸元を強調しながら一品一品丁寧に見ていく。
「オークションは3日後に開催予定で展示期間が本日含めまして3日間しかございません。その次となりますと3ヵ月後の開催となりますがいかか致しましょう?」
「3日後のオークションに出品します」
さすがに3ヵ月後は長いよ。
「かしこまりました。それではオークションの説明に移らさせて頂きます。
まず出品に際し事務手数料として5,000ルクの費用が掛かります。
お客様には最低落札価格を決めて頂き3日間の展示期間を経て当日の入札形式での取引となります。
なお落札価格の5%を仲介料としてギルドに納めて頂くことになります」
「最低落札価格はどのように決めればいいのですか?」
「そうですわね、お客様のお品でしたら1ルク出品でも問題なく入札価格は高騰すると思われますが、御不安でしたらこの値段以下なら売りたくないと考える価格に設定するのがよろしいかと」
「なるほど。あと、匿名での出品は可能ですか?」
「もちろん可能でございます。
それでは……」
なぜ隣に座ってくる!?
「こちらの申し込み用紙に御記入ください」
そしてなぜ密着してくる!?
エメリナさんの無駄に吐息の多い助言と柔らかい感触を受けながら申し込み書に記入し5,000ルクを支払う。
最低落札価格は70万ルクにした。現在の所持金より多い額が入るなら王都まで来た甲斐があるだろう。
「3日後のオークションはいかが致しましょう? よろしければ出品者専用の個室を御用意して私が手取り足取りの解説を致しますが?」
なんの解説!?
「さ、さっき王都に来たばかりで宿も決まってないので3日後についてはなんとも……」
「まぁまぁ。でしたらこれから私が王都を手取り足取り御案内致しましょうか?」
案内なのに手取り足取り!?
「エメリナさんのような素敵な方にそこまでして頂く訳には、い、色々ありがとうございましたぁ」
慌てて商業ギルドを後にする。
やべぇぇぇ
あれが噂の肉食系か。
商業ギルドで奴隷商の場所を聞きたかったのにそれどころじゃなかった。
仕方ないので屋台のおっちゃんに袖の下を渡して聞く。
なんとこの王都には3件の奴隷商があるらしい。
なかなかの情報通らしく、若い娘を多く集めてるとこや戦闘奴隷が豊富な老舗、男奴隷に強い店など色々教えてくれた。
お礼の意味も込めて更に袖の下を渡してついでにお勧めの宿屋を何件か教えてもらった。
まずは近くにあることもあって戦闘奴隷が豊富な老舗店に向かう。
緊急招集や護衛依頼での戦闘を経て、他の人と狩りをするのもいいかもと思い始めたのだ。
バルーカの城壁内奴隷商の倍はあろうかという大きい建物に入っていく。
「いらっしゃいませ」
初老の男性が対応してくる。
「本日はどのような奴隷をお求めでしょうか?」
「その前に、気に入った奴隷がいた場合いくらか支払って何日か予約?取り置き?することは可能ですか?」
「はい、お支払い額によって取り置き期間が変わりますが可能でございます」
戦闘奴隷は3日後に売却金が入らないと買えないしな。
「20代後半以上の女の戦闘奴隷を見たい」
「ではこちらにお越しください」
個室に通される。
「こちらが該当する奴隷になります」
20枚以上の書類をこちらに提示してくる。
その全てに奴隷の情報が書き込まれている。
こういう形式かぁ
ぶっちゃけ年齢と外見でしか選ぶ気がなかったからこのやり方とは相性が悪い。
いや、待て。
年齢は書いてあるし身長と体重でスタイルも推測できる。
獲物の種類でもわかることがあるだろう。
1枚1枚丁寧に見ていく。
まず除外するのは魔術師である。
単純に高額過ぎて手が出ない。
次は重戦士系だ。
パワータイプの両手剣持ちも除外である。
逆に身長に比して体重が軽すぎるのも除外する。
1人の軽戦士が残ったのだが24歳だった。
「面談なさいますか?」
「いや、年齢がな……」
「左様でございますか……」
「ここは戦闘奴隷が豊富な店と聞いたが普通の奴隷は扱ってないのか?」
「少数ですが販売しております」
「30代の女奴隷を見せてほしい」
「かしこまりました」
しばらくして3人の女性を連れてきた。
お!
3人の中の1人に目が行く。
美人さんで貫頭衣からお胸様がこぼれていらっしゃる。
髪は金髪で後ろで丸くアップでまとめられている。
正面を向くと目の感じがちょっぴりキツイ感じか?
そして正面から見てもお胸様は偉大である。
「彼女と面談したい」
そう告げると初老の店員は残りの2人を部屋から出して、
「名前はルルカ、34歳。元商人で価格は40万ルクでございます」
王都の相場は高いな。
「彼女の販売期間は?」
「あと10日ほどでございます」
「これまで売れなかったのに何か理由が?」
「特別なものは何も。一般的に高齢になるほど奴隷は売れにくいのと、彼女の場合元商人ということで相場よりも高めの価格設定が原因かと」
「元商人だと商売しかさせられないとかある?」
「いいえ、一般奴隷と変わらない扱いで大丈夫でございます」
「彼女と話せる?」
「……、かしこまりました」
値切られるとでも思ったのだろうか?
高額設定して売れなかったのならその価格には感謝しかない。
もちろん彼女と話して問題なければの話だけど。
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