第6話
「一人一人挨拶させましょうか?」
「いや、戻ってもらって」
「かしこまりました」
奴隷商が奴隷を連れて出ていく。
「お気に召しませんでしたか?」
戻ってきた奴隷商が聞いてくる。
「好みの女性はいなかった」
「若い奴隷もご覧になりますか? 20人以上おりますのでお好みの女性も見つかるかと」
くっ……、若返って1週間の禁欲生活にはこの誘惑は辛い……が、
「いや、最初に買う奴隷は大人の女性と決めてるので」
意志は固いのだ!!
「さようでございますか」
「新しい奴隷はいつ来る?」
「大体一月毎に入荷しますので次回は20日後ぐらいでしょうか」
やはり奴隷はモノ扱いか……
「奴隷の販売期間は一ヵ月なのか?」
「高額な奴隷以外は二か月間の販売期間がございます」
「販売期間が過ぎたらどうなる?」
「商人や大地主が労働力として安価で買い求めます。若い女奴隷なら娼館行きですな」
「そうか……」
販売期間のうちに買われないと厳しい待遇が待ってる訳か。
ひょっとして先ほどの6人の中にも販売期間中に買い手が現れない人がいるかもしれない。
いや、確実にいるだろう。
奴隷商を出てちょっとブルーな気分になりながらギルドに向かう。
気持ちが沈んだところで自分に出来ることはないと言い聞かせる。
午前中に狩ったオークを全て出すとさすがに目立つので、半分近い30体と兎を売る。
所持金464,220ルク→611,120ルク
鍛冶屋で槍を見る。
武器は高いのは引くぐらい高額なので安いのから順に手に取って品定めしていく。
頑丈そうで使いやすい45,000ルクの槍を購入。
1週間前におまけして売ってくれたお礼を親方に伝えるよう店員にお願いした。
少し早いが狩りに行くには時間が半端なのでいつもの宿に向かう。
MPが余っているので無駄にあちこちに浄化魔法を使いまくる。
一旦戻って鍛冶屋の外見にも浄化魔法を使う。
少しは恩返しになるだろう。
所持金611,120ルク→563,620ルク
翌朝ポイントを使って『時刻』のスキルを獲得した。
異世界生活が1週間過ぎて時間がわからない不便さを克服できなかった。
LV10からもらえるポイントが増えたのも獲得決断を後押しした。
ステータス画面の右下に時間表示されるようになる。
日の出が5時過ぎで、朝食を終え6時前に宿屋を出る。
ちなみに宿屋の朝食はパンと野菜と薄味のスープで量も味も物足りない。
北西のいつもの場所で狩りを始め、小休憩する時に屋台で買い込んだ肉パンを食べる。
9時頃まで狩りをして昨日と同じように南下して北門を目指す。
昨日買った槍の使い心地は上々で、これまでなら魔法を使っていた場面でも槍で倒したりした。
今日は城壁内の奴隷商と商業ギルドに行く予定だ。
商業ギルドでは定期的にオークションが開催されてるとのことで、日本から持ち込めた(着たままだった)スーツ一式を売却するつもりだ。
以前に『金策の当てがない訳ではない』と考えていたのはこのことである。
今回はゴブリン隊の襲撃はなかった。
昨日で壊滅したのだろうか?
北門に到着し300ルクを支払い中に入る。
初めて見る城壁内の街並みは壁外区とは違い石造りの建物が多く、チラホラと3階建ての建築物も見かけることができる。中央部に内城はなく、右手の北西区画を内部の城壁が囲んでいるので角度的には見えないがそこに内城があると思われる。
『城壁内部にある大きな街』という初体験に圧倒されてしまう。大きさ自体は外から十分把握してたのだが、なんとなく千葉にあるネズミーランド的なイメージをしてた。
どうやって奴隷商を探すか? 幼女には聞けないし女性にも聞けない。男性に聞くしかないのだが……ゆっくり歩きながら聞き易そうな人を探す。
しばらくするといい匂いが漂ってきた。匂いの元に足を向けるとファミレス的な食事処の厨房でスープを煮込んでいた。
『営業は昼からなんだけどねぇ、それ以前にまだできてないし……』
渋る料理人を拝み倒してスープを出してもらった。まだ出来てないらしいがそんなの関係なく美味しかった。ビーフシチューに限りなく近い味だ。この世界の薄味な単純な味わいのスープには辟易していたので、なんとしてもこの『ビーフシチュー(勝手にそう呼ぶことにする)』を大量に確保したいと思い料理人に前金で余分に払うからとお願いした。
料理人は店長を呼び交渉の結果、店用の寸胴鍋4つ分を2万ルクで作ってくれることになった。前金で払い後で取りに来る。それまでにたくさんシチューを入れる鍋を買わないといけない。
店長に鍋を売ってる店の場所を聞くついでに奴隷商と商業ギルドの場所を聞き、鍋を買いに行く。同じ型の鍋だけでは足りず複数の種類の鍋を店員に不思議に思われながら買い込み、比較的近い奴隷商に行く。
壁外区の奴隷商の倍はある石造りの建物に期待感を抱きながら入っていく。
「いらっしゃいませ」
若い男性店員がでてきた。
「女奴隷が欲しいのだが相場はいかほどか?」
「一般的な女性でしたら40万ルクもあればほぼ購入可能でしょう。
戦闘可能な者や特殊技能持ちは倍以上でもご購入は運次第かと」
「求めてるのは一般女性なのだが、戦闘職はそんなに人気なのか?」
「それはもう。購入価格以上に稼ぐことも多々ありますので」
資金が増えたら女戦闘奴隷もありか?
「どのような女性がよろしいでしょうか?」
「最初に購入する奴隷なので色々任せられる大人の女性がいい」
「20代半ばあたりから上の女性でよろしいでしょうか?」
若返った肉体なら20代でも年上ではあるが…
「いや次買う奴隷と同世代になるのは避けたい、30代を見せて欲しい」
精神的には年下だからな、20代はないわー
「かしこまりました、こちらへ」
ここでは個室に奴隷を見せに来るのではなく奴隷がいるとこを店員が案内するようだ。
…
……
…………
現在依頼したシチューを買った鍋に移し替えて収納に入れ商業ギルドに向けてのんびり歩いている。
結論から言うと好みの奴隷はまたもいなかった。
一人だけ美人奥さんと言うのがピッタリな人がいたのだが、ひんぬーさんだった。
次の入荷は2週間後と聞いたのでその頃また行こうと思う。
よくよく考えれば入荷直後に行かないと好みの奴隷は買えないことに気が付いた。
そうなると2つの店で聞いた相場よりも高くなることを想定すべきだろう。
商業ギルドは北東区画にあり併設されてる大きな倉庫に荷馬車が出入りしている。
建物に入り受付でオークションに出品したい旨を告げると個室に案内された。
しばらくして若い男性職員が入ってきた。
「いらっしゃいませ、本日はオークションへの出品を御希望だとか」
「衣類・ベルト・靴・靴下を1セットとして出品したい」
「拝見させて頂いても?」
「もちろん」
収納からスーツ一式を取り出す。もちろん念入りに浄化済みである。
若い男性職員(と言っても24か25)が1点1点慎重に観察している。
「こちらの品々をどちらでご購入されたかお聞きしても?」
「父の遺品なので入手先はわからない」
この程度の嘘は勘弁して欲しい。
「左様ですか……」
この世界の衣類とは素材からして根本的に出来が違うからな。
手に入れられるなら欲しかろう……
ん? マズいか? そんなに重く考えてなかったが……
神様(仮)に没収されなかったから平気だと思いたいが。
「僭越ながらこれらの品々は王都で開催されるオークションに出品なさることをお薦め致します」
「王都で?」
「はい、一般的に服飾関係はお貴族様が多数おられる王都が最も高額で取引されております」
言ってることは正しいように思えるが……
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