第2話

 ギルドを出て鍛冶屋に行こうとするが空腹だったのを思い出し、近くの食堂に足を向ける。

 当然店頭にサンプルなど置いてある訳もなく、店に入りメニューを探す。


「いらっしゃい! 適当に座って! 今の時間は400ルクの定食だけだよ!」


 20代半ばの可愛らしいエプロン姿の店員さんが水を持ってくる。


「前払い?」


「うん、お願い!」


 大銀貨を渡すと小銀貨6枚返ってきた。


「はい! お待たせ!」


 定食は木のお盆に乗せてすぐ出されてきた。

 パンに肉野菜炒めと具だくさんのスープだ。

 パンは異世界定番の固い黒パンではなく白パンで日本のパンよりも固いものの十分美味しい。

 肉野菜炒めはボリュームがあり食べ応えがある。

 スープはさすがに日本の複雑な味に慣れた舌には物足りなさを感じた。


 異世界定番と言えばギルドで絡まれなかったな。

 ホッとしたような残念のような。

 なんだろう? この気持ち。


 店員さんに貨幣について聞いてみたところ、


 銅貨 10ルク

小銀貨 100ルク

大銀貨1,000ルク

小金貨 1万ルク

大金貨10万ルク


 で、1ルクに対応する貨幣はなく10ルクが最低価格とのこと。

 大金貨の上に白金貨があるみたいなのだがよく知らないらしい。



「ごちそうさま」


「ありがとうございましたぁ!」


 そこそこ腹を満たして店を出た。




 なぜ鍛冶屋に向かうのか? 皆さん疑問に思うだろう!(←食事して元気が出てきてテンションが上がったらしい)

 今の所持金2,800ルクではこれまでの貨幣価値から推察するととても武器は買えないだろう。おそらく安い剣でも1万ルク近くするのではないだろうか?

 そこで鍛冶屋で失敗したり廃棄予定の武器がないか聞くのだ!

 もしそれらがなくても最低でも尖った鉄の棒みたいなのは手に入れたい!

 さすがに木の槍や枝で戦い続ける訳にはいかないだろう。


 鍛冶屋に到着し店に入る。

 様々な武器が並べられてるがやはりどれも高額である。


 レジらしきとこにいる男性店員に話しかけよう。


「あの~」


「はい、なんでしょう?」


「廃棄予定の武器やクズ鉄はありませんか?」


「しばらくお待ちください。親方ー!」


 奥からずんぐり体型の髭親父が出てきた!

 もろドワーフ族やん!


「なんだ?」


「こちらのお客様が廃棄武器とクズ鉄をお求めのようで」


 髭親父がギロリとこちらを見ながら。


「坊主、まさかそんなもんを武器として使うつもりじゃないだろうな」


「そのつもりです。お金ないので……」


「かぁーこれだから見習いの素人は! 地道に街中の依頼を受けて金貯めろや」


「これまで木の槍で戦ってたので鉄製の獲物に変わるだけで大分違うのですが…」


「はぁ!? 木の槍だぁ? ちょっと見せてみろ」


「はぁ」


 収納から兎を仕留めてきた木槍を出して親方に渡す。


「マジかよ……」


 しげしげと木を観察してこちらに返しながら


「ついてこい」


 奥にある鍛冶場の隅に連れていかれる。


「ここにある中から好きなのを選べ」


 山盛りに積まれているクズ鉄の中から武器になりそうなものを20点ほど選んだ。


「これでいくらですか?」


「またたくさん選んだな、全部で1,500ルクといったところか」


 思ったよりも安い!


「買います!」


「まぁ木よりマシだわな、店で支払いな。オイ! 1,500だ!」


「ありがとうございます!」


「稼げるようになったらウチで武器買ってくれ、収納魔法があるならすぐに稼げるだろ」


「はい!」


 結構おまけしてくれたみたいだ。


 所持金2,800ルク→1,300ルク




 購入したのは、錆びて所々欠けてる剣に穂先が欠けてる槍、長さがマチマチな鉄の棒が18本。

 なかなかの戦力アップではないだろうか。


 このまま西に向かう。

 安いらしい繁華街の宿の相場を確認してそのまま西の森近くで狩りをするつもりだ。

 途中雑貨屋で水筒とコップ、タオルと雑巾を買った。


水筒  500ルク

コップ 300ルク

タオル 200ルク

雑巾   70ルク×2


 所持金1300ルク→160ルク


 水筒は持ち運ぶ訳ではないので大きいのを買った。水魔法で水を入れ収納にしまう。


 飲み屋や娼館の並ぶ一角を通り過ぎ、壁外区の西端に着いた。

 2メートルぐらいの高さの木組みの防柵が北に伸びている。

 城壁の北西の角と防柵の間が少し空いておりそこから出入りするようだ。


 防柵から西の森までの距離は200メートルぐらいか。

 防柵を出て森に向かっていくと犬が2匹襲ってきた!

 買った鉄の棒を投げて倒す。

 木なら使い捨てできるが鉄の棒は回収しなければならない。

 べったりと付着した血のりをどうするか。

 浄化魔法を使えば簡単なのだが回収する度にそんなことをしていたらMPが枯渇するのは目に見えているので、雑巾で拭き取ることにする。

 森犬の買い取り価格の安さもあって無駄な作業をしてる感が凄い……

 対犬用に尖った木は継続して集めるべきだろう。


 それから買った剣や槍を使って兎……ホーンラビットを倒していく。

 剣は状態が悪く突きでしか倒せないが、槍はリーチが長く兎が飛び掛かってくる前に倒せるようになった。


「グギャグギ!」


「!?」


 突然ゴブリン3匹が前方の草むらから飛び出してきた!!


 土槍3連発射!


 1匹外したが2匹倒す。


 外した1匹が木の棒を振りかぶるとこを槍で胸を深く刺す!


「グギ!」


 !!!!!!!!!!!!


 一息つく間もなく後ろからゴブリン4匹が襲ってくる!!


「くそっ!!」


 先頭のゴブが剣で斬り付けてきたのを槍を手放し剣で防御して思いっきり蹴る!


 すかさず後続のゴブ3匹に土槍3連を連続発射!


 起き上がってきた最初のゴブに向けて剣を投げて体に刺さるのを見てから後続のゴブの方を見ると3匹共土槍で倒せていた。


 槍を引き抜きまだ息のある剣ゴブに止めを刺す。


 急いでゴブリンの死体と武器を収納して防柵のとこまでいき腰を下ろした。


「あぶねええええええ!!」


 今のはヤバかった!!


 犬と兎との戦いは戦闘と言っても狩りの要素が強かった。


 ゴブリン相手は本当の戦闘、ガチの殺し合いだ。


 認識を改めなければならない。


 一番の問題は敵の位置がわからないことだ。レーダーのようなスキルが必要だ。


川端努 男性

人種 15歳

LV6


HP 38/38

MP 81/165


力  19

早さ 21

器用 23

魔力 48


LP 3P


スキル

異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv2・浄化魔法Lv1・水魔法Lv1・土魔法Lv4・投擲Lv1



 レベルがふたつも上がっているが今はスキルが優先だ。

 スキルツリーを見てくと『敵感知』があった。

 即習得!


 !


 なんとなく敵の位置がわかる感じか?

 右前方のここから見えない位置に1匹いるな。

 じっと動かないところを見ると犬や兎ではなくゴブリンだろうか?


 敵感知スキルの性能を確認しながら狩りを再開しようとした時ふと気になった。


 このゴブリンは何の為にじっとしている?


 (ざわっ)


 さっきの戦闘は最初のゴブリン3匹に手間取れば挟撃されてやられてた。


 いや、土槍の練習をしていなければ確実に殺されていただろう。


 俺が魔法を使ったことがゴブリン側の想定外だったとして、


 もし倒した7匹の中に指揮したゴブがいなかったとしたら?


 (ざわっざわっ)


 もし右前方に潜んでいるゴブが指揮官だとしたら次はどう動く?


 数を揃えて包囲しようとするのではないだろうか?


 嫌な予感がする……


 先んじて右前方のゴブを仕留めるか?


 いやいや、認識を改めると考えたばかりだろう。


 現状最大の武器である土槍で仕留められなかったらどうする?


 俺の剣や槍の腕では体格的に劣るゴブリンと言えど2匹同時に相手できるかも怪しい。


 ここは撤退すべきだ。


 そうと決まれば即城壁方向に移動開始する。


 潜んでいるゴブは…………、追ってくる様子はない。


 前方に敵反応!


 兎だった。素早く倒して防柵沿いに城壁へ。

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