第26戦記 ひとときの平穏
前日は突然のトラブルに巻き込まれて傷心に浸っていた悠理だったが、直虎に励まされ、明日美からの入学祝いを受け取ることで心の傷を癒し、また前向きに平和な日常を過ごそうという気持ちを取り戻した。
前向きに平和な日常を過ごしたい…、その気持ちはミアも同じだった。
【スペースハリウッド 撮影スタジオ】
ここはプレアデス星にあるスペースハリウッドの撮影スタジオ。宇宙からアクションスターや有名な映画監督たちが集まる、宇宙の映画の聖地である。
スペースハリウッドから主演で出演オファーを受けていたミアは、映画の撮影のためにここに訪れていた。
映画監督「よーい………、アクション‼︎」
映画監督がスタートの合図を出し、空中のカメラが回り出した。
ミアが出演する映画はスリル満点のスパイアクション映画で、ちょうど銃撃戦のシーンを撮っているところだった。
ミアは黒いスパイスーツを着て美しい金髪のストレートロングヘアーをなびかせながら、華麗なガンアクションや軽い身のこなしでバク転しながら回避、銃を撃ちながら身体を回転させて突撃するなどのアクションを披露している。
裏舞台で機甲十字軍の特殊工作員として活動しているミアなら造作もないことである。
映画監督「はーい、カットーーー‼︎ そこまで‼︎ いいアクションだったぞ、ミア‼︎」
映画監督がカットの合図をすると空中のカメラが止まった。
カメラマン「やあ、ミア‼︎ 自動追跡型の空中カメラでも追いかけるのがやっとだったよ‼︎」
ミア「そうか」
映画監督「ミア、今日はここまでだ‼︎ 次も期待してるぞ‼︎ 今から完成が楽しみだ‼︎」
映画の撮影が終わるとミアは楽屋へと向かい、着替えをした。スラリとした長身に細いくびれ、金髪のストレートロングヘアーをかき上げながら隙間から見せるメリハリのあるボディが実にセクシーだ。
着替えている途中、ミアのn phoneが鳴り出した。相手はDr.エビルであった。
ミア「Dr.エビル…、どうした?」
Dr.エビル「ミア、映画の撮影は終わったようだな…」
ミア「ああ…、撮影のスケジュールは順調に進んでいる」
Dr.エビル「宇宙連邦政府の連中が古の歌姫を手に入れたようだ…」
ミア「古の歌姫…、レムリア王国の王妃とムー帝国の王の間に生まれた王女、レムル・ムーか…」
Dr.エビル「ああ…、じきに古の眠りから目を覚まし、奴らは超越兵士計画を発動させるだろう…」
ミア「超越兵士…、厄介な敵だな」
Dr.エビル「フフフ…、だがこちらには実験体「プロトX」とジェネバスターと同等の力を持つデア・シャッテン・ローゼがある…」
ミア「そうだな」
Dr.エビル「ミア、プロトYを奪還するのだ…」
ミア「
「ピッ…」
ミア(プロトY…、今度こそ…。そして明日美…、お前との勝負もな…)
ミアはDr.エビルとの通話を終えると、着替えて地球へと向かった。
Dr.エビル「フフフ…、戦え、戦うのだ…‼︎二つの超エネルギーが戦えば戦うほど、我らの計画は実現へと近づく…‼︎フハハハハ…、フハハハハハハ…‼︎」
【天越学園】
入学式を終えた翌日の朝、悠理たちは新しいクラスに不安や緊張を抱えながらも、胸に期待を膨らませて登校し、悠理は担任の女教師に連れられて1年B組の教室へ足を踏み入れた。
担任の名前は、「
※町田麻衣子=以下、麻衣子と略。
麻衣子「みなさんより少し入学は遅れましたけど、新入生を一人紹介しますね。大和悠理くんです‼︎」
悠理「は…、はじめまして、大和悠理です…。よ…、よろしくお願いします…」
麻衣子「そんなに緊張しなくていいんですよ。他の子も入学してまだ日が浅いんですから。みなさん仲良くしてあげて下さいね‼︎」
「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ…」
生徒たちは拍手をした。B組の生徒の中には拓哉たち6人もいた。
他の生徒たちが悠理の方を見ている中、拓哉だけは頬杖をついてそっぽを向いている。
麻衣子「大和くんの席はあそこですね」
悠理「ありがとうございます」
悠理は麻衣子が指定した席に着席した。右には亜里沙、左には拓哉がいる。
亜里沙「大和くん、ケガは大丈夫?」
悠理「うん…、大丈夫」
亜里沙「よかった。私は海堂亜里沙よ。これからよろしくね‼︎」
悠理「よろしく。僕の方こそ、一昨日は…」
亜里沙「足のケガならもう大丈夫よ。気にしないで」
悠理「うん………。………っ?」
拓哉「…っ、フンッ………‼︎」
悠理が視線を感じて拓哉の方を向くと拓哉と目が合ったが、拓哉はすぐさま窓の方を向いて目をそらした。
悠理はしばらく拓哉をじっと見つめていたが、拓哉は窓の方を向いたままだった。
麻衣子「さて、ホームルームを始めますよ‼︎
北村くん…、授業中は先生の方をちゃんと見るのですよ‼︎」
拓哉「あああ…、すみません、麻衣子先生‼︎」
生徒たち「あははははははははは…‼︎」
拓哉が慌てて麻衣子の方を振り向き、教室にいた生徒たちが一斉に笑った。
ホームルームが終了して休み時間になった。
拓哉たちは教室の窓側に集まっているが、悠理は一人で机に向かって座っていた。
悠理「はぁ〜…、人と仲良くするってどういうことなんだろう…」
拓哉「ふぁ〜…、やっと休み時間だよ…」
玲「しかし、亜里沙もまたよく学級委員長を引き受けたわね」
亜里沙「私が立候補しなきゃ、みんなやらないからね」
陸翔「そう言えば、昇太は…?」
浩樹「昇太なら、ディープな会話で盛り上がってるぞ」
昇太は教室の廊下側でコンピューター部のオタク仲間である、「
三人とも昇太と同じくアイドルやロボットのオタクで一推しは麻里奈、二推しは萌ととても気が合う様子だ。
※以下三名、松山健介=松山、竹原慎=竹原、梅澤秀次郎=梅澤と略。
松山「さすがは昇太氏なり‼︎」
竹原「感服したでござる‼︎」
昇太「僕も新しいまり〜な推し仲間と、ロボットマニア仲間ができて嬉しいな‼︎」
梅澤「そう言えば昇太氏、新型アーマード・ギアの写真を入手したって本当でごわすか?」
昇太「そうなんだ‼︎ 昨日の帰り道…、マニアックなものを売っている人を見かけてさ…、見たこともない漆黒のボディにスタイリッシュなデザインでカッコよかったから思わず買っちゃった‼︎ これは、宇宙連邦政府軍の新型かなぁ…?」
昇太はv phoneを取り出し写真をオタク仲間に見せた。すると、オタク仲間たちは顔を真っ青にし、小声で話し始めた。
松山・竹原・梅澤「昇太氏…、なんと不吉な…‼︎」
昇太「え…⁉︎ どうかしたの…⁉︎」
松山「このアーマード・ギアの情報や写真は、政府や軍で最重要機密扱いされているものなりよ‼︎」
竹原「1年前の時点の所属不明機墜落事故のアーマード・ギアと同レベルの、SSSクラス扱いでござる‼︎」
梅澤「しかも、見た者に不吉と死をもたらす黒い凶星なんて二つ名がついていて、都市伝説では黒い凶星の呪いにかかり、高熱を出して寝込んだ者もいるなんて囁かれているでごわす‼︎」
昇太「えっ………、えええ〜〜〜ぇぇぇぇぇぇ………‼︎」
昇太は両手で頭を抱えて固まってしまった。
松山「昇太氏、今すぐデータを完全に消去した方がいいなりよ…」
竹原「つい最近、その写真を持っていただけで宇宙連邦政府にスパイ容疑で連行された者がいるとの話を、どこかで聞いたでござるぞ…」
梅澤「今ならまだ大丈夫でごわす…」
昇太「ロボットマニアの僕の知らない情報があったなんて…。仕方がない…、消そう…。あと…、呪われそうだからお祓いもしてこようっと…」
昇太はv phoneからアーマード・ギアのデータを完全に削除した。
竹原「昇太氏、気を取り直して我らが女神、まり〜なに会いに行こうではござらんか?」
昇太「さっき見たけど、2年F組は予約が一杯で今日は無理だったよ…。もちろん、萌ちゃんのいる1年D組もね…」
1年D組や2年F組の前では長蛇の列ができ、杏花・麻里奈・萌の周りには人だかりができていた。
男子生徒A「く〜〜〜…っ、この学園は最高だよな‼︎ 女子生徒は可愛いし、女教師も美人だしよ‼︎」
男子生徒B「おまけに有名人も集まる人気の有名校‼︎
巨乳スイマーの杏花・E・ティアーに、SGL369の神メン13の皇麻里奈に、萌系美少女作家の雪月萌と同じだなんて、夢みたいだぜ‼︎」
男子生徒C「もしかしてあの子たちとお付き合いしたりとか、グフフフフ…」
男子生徒D「ないない‼︎ 俺たちみたいな平凡な高校生なんか、相手にされるわけねぇよ‼︎ 目の保養だけにしとけ」
萌「はーい…、順番、順番。一人10秒までね…」
男子生徒たち「じゅ…、10秒⁉︎」
麻里奈「さてさて…、腕に覚えのある男子はおらぬか…?」
オタクたち「はいはーい‼︎ 俺氏、俺氏‼︎」
杏花「私の好きな人はね、背が高くてイケメン俳優みたいで男らしくて、年齢は今27歳よ」
男子生徒たち「え〜〜〜っ⁉︎ そんな〜〜〜…‼︎」
男子生徒E「でも、俺はその男に負けないぜ‼︎」
「こらこらお前たち、学校はファンイベントの会場じゃないんだぞ‼︎」
「彼女もみなさんと同じ一人の人間なんです‼︎ 少しくらい休ませてあげなさい‼︎」
2年F組の担任で体育教師である「
萌「ふ〜…、疲れた…」
杏花「毎日こんなのが続くのかしらね…? おちおち休んでもいられないわ…」
麻里奈「ほっほっほ…、有名人のさだめですな…」
一方、女子生徒たちも男子生徒についての話題で盛り上がっていた。
女子生徒A「この学園ってさ、女子生徒のレベル高いけど、男子生徒も結構いい感じじゃない?」
女子生徒B「わかるわかる‼︎ 大河内様とか、中倉先輩とか、学園長の甥っ子で芸能人の天越くんとか‼︎」
女子生徒C「今年の新入生だと、北村くんや浪川くんや真田くん…、それに藤之宮くんなんかも‼︎」
女子生徒D「その中だったら、私は浪川くんかな‼︎ 彼のバスケの試合はいつも観戦に行っているわ‼︎」
女子生徒E「私は北村くんかな‼︎ WILD WINDのライブはいつも最前席で観てるわよ‼︎」
女子生徒F「私は…、大和くんかなぁ…」
女子生徒たち「ええっ…⁉︎」
女子生徒A「意外ね…、どうして?」
女子生徒F「彼って、ちょっと優柔不断で頼りなさそうだけど、よく見たら顔はイケメンだし、謎が多くて不思議な感じが興味を引かれるのよね…」
女子生徒C「ああ〜、確かに。なんか可愛い感じで母性本能をくすぐられるところあるわよね」
「キーン…、コーン…、カーン…、コーン………」
チャイムが鳴り、生徒たちは一斉にそれぞれの教室へと入った。
悠理「はぁ…、何もしないまま休み時間が終わっちゃった…」
Gトルーパーズや直虎以外と人間関係を持ったことがない悠理は、良好な人間関係を築く方法も意義も何も分からず、戸惑っていた。
だが、そんな日常でもみんなが平和に生きていけるなら、毎日続いて欲しいと心の中で願っていた。
【次回予告】
ナレーション:ハリーマン・トルーパー
ハリーマン特将だ。おおっと、トルーパーと呼ぶのはやめていただこう。
我が軍の艦隊とギャラクシア・ヴァース帝国の艦隊がまた衝突をするそうだが、相変わらず我が軍は劣勢を強いられ、そこに神出鬼没の黒い凶星までも現れるようだ。
鬼神のようなすさまじい戦いぶり、誰か奴を止められんのか?
私も早く計画を進めなければ。
次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎
【第27戦記 宇宙に咲く薔薇】
と言う話だそうだ。私も楽しみだ。
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