第27戦記 宇宙に咲く薔薇

 シャルルとハリーマンが、レムルをコールドスリープから解き放ったと言う話は、すぐに宇宙連邦政府の上層部に伝わった。


 これによりハリーマンはますます宇宙連邦政府内での発言権を得ていくのであった。




【七賢星の間】


 月面要塞サムターでは「七賢星しちけんせい」と呼ばれる、宇宙連邦政府の最高意志決定機関の七人の老人たちが「七賢星しちけんせい」で会合を行っており、周囲は七賢星直属の親衛隊「星衛隊せいえいたい」が護衛を固めていた。


 部屋の中央には宇宙連邦政府の紋章があり、その周りには7つの国旗と星がかたどられている。


 七賢星のメンバーは、


 アメリカ人の「ラングランド・アルベルト」


 ロシア人の「マルコフ・リーン」

 

 中国人の「宗武光そうぶこう


 イギリス人の「チャールストン100せい


 フランス人の「ブラント=ベール」


 オランダ人の「スコット・ドルフ・スペルニクス」


 オーストラリア人の「ジョー・バート・ジーニアス」


 以上の7名で構成されている。


 七賢星のリーダーは、前星帝「アルル・ド・アトランディア」が急没したことで発生した後継者をめぐる争い、「天ヶ原あまがはらたたかい」で改革派の指導者・総指揮官を務めたラングランドが務めている。


 この戦いで勝利したのちの七賢星となる改革派は、当時8歳とまだ幼かったシャルルを星帝として擁立し、宇宙連邦政府の盤石な政治体制を築いたため、ラニアケア超銀河団内での絶対的な権限と政治・軍事的発言力を持つ。


星衛隊兵「申し上げます‼︎


 星帝シャルル陛下とハリーマン特将がスタン・ハーバード研究所にて、王女レムル・ムーを目覚めさせることに成功したとのことです‼︎」


※以下7名、ラングランド・アルベルト=ラングランド、マルコフ・リーン=マルコフ、宗武光=武光、チャールストン100世=チャールストン、ブラント・ベール=ブラント、スコット・ドルフ・スペルニクス=ドルフ、ジョージ・バート・ジーニアス=バートと略。


ラングランド「ご苦労。下がってよいぞ」


星衛隊兵「はっ‼︎」


ラングランド「私の右腕、ハリーマンのは正しかったようだな」


ブラント「さすがはラングランドの懐刀と呼ばれる男…」


マルコフ「だが星帝陛下などワシらが仕立てた政治の象徴…、傀儡シンボルにすぎん」


チャールストン「実権は我ら七賢星の手にある」


武光「しかし、民衆をコントロールするには崇拝の対象を与えてやるのが一番だ。のようにな」


ドルフ「問題は王女レムル・ムーが成功の鍵を握るという、超越兵士計画だな」


バート「計画が成功した暁には、この宇宙を取り巻く勢力のパワーバランスが一気に覆る」


ラングランド「ああ…。急ぐのだ…、ハリーマン」




【宇宙空間 プレアデス星宙域】


 その頃、プレアデス星付近の宙域では宇宙連邦政府軍の艦隊が駐留していた。


政府軍兵A「艦長‼︎ プレアデス星の衛星軌道上にてワームホールが出現‼︎」


政府軍艦長A「何だと⁉︎」


政府軍兵A「ワームホールの中から敵艦隊をキャッチ‼︎ 識別はギャラクシア・ヴァース帝国‼︎」


政府軍艦長A「よし、プレアデス星駐留艦隊、総員戦闘態勢‼︎


 護衛艦アラスカ級は旗艦ネバダ級の護衛を、駆逐艦「フォレストきゅう」は前線で迎撃に当たれ‼︎

 アーマード・ギア部隊はスチュアート、スカイフィッシュ、「バンガード」で出撃せよ‼︎」


 プレアデス星宙域に突如出現したワームホールから、ギャラクシア・ヴァース帝国の艦隊が現れた。


 艦隊の編成は旗艦ラードーン級を中心として、戦艦は護衛艦アンピプテラ級、駆逐艦「アジ・ダハーカきゅう」、アーマード・ギア部隊はゲイザード、ガーゴイル、「カリュドーン」で構成されていた。


政府軍艦長B「くそっ、奴らめ…。もうこんなところまで攻め込んできたのか⁉︎」


G・V軍艦長A「以上の文明を持つ我らの科学力ならば、ワームホール航法で敵の勢力圏へ突入することなど容易いこと‼︎」


G・V軍艦長B「行け‼︎ 未満の文明人に格の違いを見せつけてやれ‼︎」


 宇宙空間のあちこちで流星のようにビームが飛び交い、星が瞬くように爆発が起こり、双方が激しい艦隊戦を繰り広げている。


 宇宙連邦政府軍は一歩先に進んだギャラクシア・ヴァース帝国の科学力に少し押されているようだ。


政府軍艦長C「怯むなー‼︎ フォレスト級、旋回‼︎ プラズマキャノンで敵を駆逐せよ‼︎」


政府軍兵B「ぐぁぁぁ…、何というパワーだ‼︎ バンガードのシールドを崩されるとは…‼︎」


G・V軍兵A「はっはっはっ…、このカリュドーンのパワーをみくびるな‼︎」


G・V軍艦長C「アジ・ダハーカ級、フレア砲連続斉射‼︎ 目の前の敵を駆逐するのだ‼︎」


政府軍兵たち「うわぁぁぁぁぁ…、戦線を離脱する‼︎」


 ギャラクシア・ヴァース帝国の猛攻で次々とスチュアートとスカイフィッシュが撃墜されていった。


政府軍艦長A「くっ…、このままではまずい…‼︎」


G・V軍艦長A「はっはっはっ…、プレアデス星宙域も我らのものだな‼︎」


G・V軍兵B「艦長‼︎ 新たな敵影をキャッチしました‼︎」


G・V軍艦長A「何だ…、宇宙連邦政府軍の新型か⁉︎」

 

G・V軍兵B「違います…‼︎これは…、です‼︎」




ミア「……………。」




G・V軍艦長A「…⁉︎ 確か…、宇宙連邦政府軍が黒い凶星と呼んでいる神出鬼没の不吉と死をもたらす黒いアーマード・ギア…‼︎

 こんなところに近づくまでレーダーでキャッチできなかったとは‼︎ 総員、を最優先で撃ち落とせ‼︎」


 ギャラクシア・ヴァース帝国は、最優先目標をミアが搭乗するデア・シャッテン・ローゼに切り替え、次々とフレア砲やビーム砲を発射した。

 だが、ミアはそれを驚異的なスピードで軽々とかわしている。


G・V軍兵C「何が不吉と死をもたらす星だ‼︎ ジンクスなど恐れるな‼︎ 奴を撃ち落とせば大金星だ‼︎」


ミア「フライト・ギア形態へ移行する…。フェアエンデルング」


 ミアがレバーを手前に引くと、デア・シャッテン・ローゼは「スーパーフライト・ギア」、「デア・シュトゥルム・ローゼ」に変形し、背部の花びらのような形をしたバーニアを翼のように展開した。デア・シャッテン・ローゼは可変万能型アーマード・ギアだ。


ミア「Zシュテルン・カノーネ、発射‼︎」


G・V軍兵たち「うわぁぁぁぁぁ…、脱出する‼︎」


 ミアはデア・シュトゥルム・ローゼの先端の砲身から強力なビーム砲を発射して、ゲイザード・ガーゴイル・カリュドーンの大軍を一網打尽にし、爆風を突き抜けていった。


G・V軍艦長C「おのれ…‼︎ アジ・ダハーカ級総員、目標をブラック・メテオに定めよ‼︎ フレア砲で集中砲火を浴びせろ‼︎」


ミア「ライヒ・デア・ゼーレ…、発動‼︎ ローゼ・ヴィントシュトース‼︎」


 ミアがを放つと、デア・シュトゥルム・ローゼの機体全体が紅いバリアフィールドで包まれた。

 そしてフレア砲をかい潜りながら、そのままアジ・ダハーカ級へ突進した。


G・V軍艦長C「何だ⁉︎」


G・V軍艦長D「こっちに向かって突っ込んでくるぞ‼︎ ぐぁぁぁぁ‼︎」


 ミアはアジ・ダハーカ級を3隻、艦体を貫いて撃沈した。


ミア「……………」


G・V軍艦長A「おのれ、死神め…‼︎」



政府軍艦長A「あ…、悪魔か…⁉︎」


政府軍兵C「もうダメだ…、黒い凶星に呪われる‼︎」


政府軍艦長B「うろたえるな‼︎ たかがアーマード・ギアの一機、数で押しつぶせ‼︎」


 宇宙連邦政府軍もギャラクシア・ヴァース帝国軍も最優先でデア・シュトゥルム・ローゼに集中砲火を浴びせた。


 ミアはそれをかすり傷一つ負わず、軽々と回避しながらデア・シュトゥルム・ローゼをアーマード・ギア形態へと変形させた。



ミア「そろそろ終わりにするぞ…、ムラマサブレード‼︎」


 ミアはデア・シャッテン・ローゼの左腰部分に取り付けられた鞘から日本刀のような武器を取り出し、武士の居合斬りの構えを取った。


 ムラマサブレードは、美術品または妖刀として名高い日本の名刀、村正の如く息を飲むような美しい銀色の輝きを放ちつつも、見る者の生気を吸い取る禍々しい紅いオーラをまとっていた。


政府軍兵D「何だ…、あの機体の全身を包む紅い禍々しいバリアのようなオーラは…‼︎」


G・V軍兵D「ビームが全然効かないぞ‼︎」


ミア「いくぞ…、ハァァッ‼︎」


 ミアはバーニアを展開して加速し、驚異的なスピードで次々と宇宙連邦政府軍やギャラクシア・ヴァース帝国のアーマード・ギアを切り裂き、撃墜していった。


政府軍兵たち「うわぁぁぁぁぁ…‼︎」


G・V軍兵たち「き…、鬼神のような速さだ…‼︎」



ミア「ターゲット、マルチロック…。ブリューテンブラット…、全領域展開‼︎」


 ムラマサブレードで敵を次々と切り裂いていったあと、ミアは宇宙連邦政府軍やギャラクシア・ヴァース帝国軍の艦隊をマルチロックした。

 すると胸の部分にある紅い光球から、肩当てとバーニアにエネルギーが送られて肩当てとバーニアが紅くなり始めた。


 肩当ては右・左4枚づつ、バーニアは16枚と計24枚あり、それらは八重咲きの花のように展開し、遠くから見るとその姿は宇宙に咲く薔薇のようだった。



ミア「エネルギーフルチャージ‼︎ 死に咲け、ローゼ・エッシェルング‼︎」



 デア・シャッテン・ローゼの胸の部分の紅い光球、バーニアと肩当て一つ一つから強力なビーム砲が一斉発射され、宇宙に巨大な紅い光の柱ができた。


政府軍艦長A「宇宙に紅い薔薇が…‼︎」


G・V軍艦長A「咲いただと…⁉︎」


「ドガガガガガガガァァァァン………‼︎」


 デア・シャッテン・ローゼから放たれた巨大な紅い光の柱は大爆発を起こし、宇宙連邦政府軍の艦隊とギャラクシア・ヴァース帝国の艦隊を壊滅させた。


ミア「あっけないな…。こちら師団長コマンデュール…、今から最大戦速で地球へ向かうぞ、出撃の準備をしておけ‼︎」


十字軍兵「了解フェアアインシュタンデン)‼︎」


 ミアはフライト・ギア形態に変形すると、リング状の光を発生させ、光よりもはるかに速い速度で地球へ向かった。



 宇宙連邦政府軍とギャラクシア・ヴァース帝国の艦隊を、単騎でいとも簡単に壊滅させてしまった黒い凶星。


 そんな黒い凶星の魔手が、再び悠理たちに迫りつつあった。




【次回予告】


ナレーション:町田麻衣子まちだまいこ


 みなさん、はじめまして‼︎ 1年B組、大和悠理くんの担任の町田麻衣子です‼︎


 大和くん、人付き合いが苦手なのか、休み時間はずっと一人でいる様子で少し心配ですね。でも、そのうち他のみんなとも打ち解けるようになっていきそうな気もしますね。


 あれ…、大和くんどちらへ…? ああ…、分かりました‼︎


 大和くん、君はまだまだ若い高校生…。だけど、それと同時に世界の平和を守るヒーローでもありますからね‼︎


 先生は応援してますよ、気をつけて行って下さいね‼︎

 

 次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎


 【第28戦記 大覚‼︎ 最終殲滅兵器、阿修羅天デア・シャッテン・ローゼ‼︎】


 と言うお話だそうですよ。楽しみですね‼︎





 




 

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