第28戦記 大覚‼︎ 最終殲滅兵器、阿修羅天デア・シャッテン・ローゼ‼︎

 プレアデス星宙域で宇宙連邦政府軍とギャラクシア・ヴァース帝国軍の艦隊を、単騎で壊滅させたミアのデア・シャッテン・ローゼ。


 宇宙連邦政府軍はプレアデス星宙域艦隊壊滅の知らせを聞いて、かなり焦りを感じていた。




【月面要塞サムター 司令室】


 月面要塞サムターの司令室では作戦会議が開かれていた。黒い凶星の出現にアーサーはかなり苛立っている様子だった。


アーサー「何…⁉︎ 黒い凶星だと…⁉︎ ええいっ、プレアデス星宙域駐留艦隊はどうなったぁっ…⁉︎」


政府軍艦長「それが…、全滅させられました‼︎ ギャラクシア・ヴァース帝国の艦隊も…、黒い凶星たった一機に…‼︎」


アーサー「バカ者‼︎ たった一機のアーマード・ギアに何を手間取っておるか‼︎」


政府軍兵「申し訳ございません‼︎ あの黒いアーマード・ギアは我々の想像をはるかに上回る性能で…‼︎」


アーサー「言い訳などよいわっ‼︎ 戦闘データの収集と解析をさっさと済ませて反映しておけ‼︎」


政府軍兵「はっ‼︎」


「ダグラス中将、どうか気をおしずめ下さい‼︎」


 一人の男がアーサーに申し出た。この男の名前は「ウラジミール・ヴィッチ・コブロフ」。


 階級は大佐でアーサーの腰巾着のような男だ。金髪のロシア人で髪は少し後退している。


※ウラジミール・ヴィッチ・コブロフ=以下、コブロフと略。


コブロフ「ダグラス中将、敵は機甲十字軍のハーケンローゼス13人衆と呼ばれる一機当億の猛者、一個師団で銀河系を制圧できるほどの実力者です。」


アーサー「機甲十字軍…、確かハリーマンの飼い犬のどもが調査していた、旧世界のナチスの亡霊か…。

 1年前の所属不明機墜落事故のアーマード・ギアも、そこの量産機だったな」


コブロフ「ええ…。ですからここは一つ、ハリーマン特将と連絡を取り戦略を立て直されるのが得策かと。例の超越兵士計画の件もありますから」


アーサー「コブロフ、貴様私に意見する気か‼︎ 考古学者上がりの青二才に戦場の何が分かるっ‼︎」


コブロフ「しかし、ハリーマン特将はラングランド閣下の右腕‼︎ 天ヶ原の戦いで改革派を勝利に導いたお方ですぞ‼︎」


アーサー「それがどうした⁉︎ 奴の戦略など所詮は過去の歴史の焼き直し…、戦略に必要なのは戦術眼と、それを裏付ける軍人としての確かな実戦経験だ‼︎ 考古学者の知恵など必要ないわっ‼︎」


コブロフ「それに、ハリーマン特将が進めている超越兵士とバイオフィードバックシステムの量産化が成功すれば、我が軍の戦力は…‼︎」


アーサー「黙れっ、コブロフッ‼︎」


「バキィィィィィィッ‼︎」


コブロフ「グフゥッ…‼︎」


 アーサーは激怒しコブロフに鉄拳制裁を加え、コブロフは吹っ飛んで倒れた。


アーサー「今、七賢星より最前線の艦隊とアーマード・ギアの指揮と全権を任されているのはこの私だぞ‼︎ 中央官僚崩れの政治屋は黙っていろぉぉぉっ‼︎」


アーサー(ハリーマン・トルーパー…、いけ好かぬ男よ…。あんな青二才の手を借りずともこんな戦線、切り抜けて見せるわ‼︎)


コブロフ(くぅぅ…、融通の効かぬ単細胞め…‼︎)


 コブロフは殴られた頬を押さえつけながらじっとアーサーを睨みつけていた。




【天越学園】


 午後の昼下がり、天越学園では6時間目の授業が始まっていた。


 2年F組は数学の授業で、杏花は電子黒板を見ながら真剣に電子ノートをとっているが、麻里奈は授業の内容を分かりきっているのか、退屈そうに両手で頬杖をついてボーッとしている。


数学教師「ええー…、この公式は…」


杏花(私…、理数系はちょっと苦手なのよね…)


麻里奈(先生…、もっと効率よく解ける公式があるでござる…)



 1年D組は社会科の歴史の授業だった。萌は気持ちよさそうにぐっすりと居眠りしている。


萌「ん〜…、むにゃむにゃ…、松田潤也くん…♡」


※田中二郎=以下、田中と略。


田中「え〜、旧世界の地球ではかつて三度の世界大戦があり………⁉︎ 雪月さん、今は授業中ですよ‼︎」


 萌がゆっくりと起き上がった。


萌「ん…、何…⁉︎ どこにでもいそうな、地味な名前の地味な見た目の先生…‼︎ いい夢見てたんだから邪魔しないで…‼︎」


「バタッ…‼︎」


萌「ん〜…、むにゃむにゃ…、ただいま松田潤也くん…♡」


 萌は再び眠りについた。田中は震えて泣いている。


田中「とほほ…、地味だなんて言わないで〜。先生それ気にしてるんだから〜〜〜」



 1年B組は国語の授業だった。浩樹と昇太と亜里沙は真面目に電子ノートをとっているが、玲は麻衣子の目を盗んで手鏡を見ながら髪をいじり、拓哉は居眠りをし、陸翔はニヤニヤしながら麻衣子の方を遠くから色目遣いで見ている。

 

 悠理は授業の内容がさっぱり理解できず、何をしていいか分からないため、あくびをして眠そうにしている。


麻衣子「では、このページを誰か読んで下さい」


亜里沙「はい‼︎」


麻衣子「はい、海堂さん」


 亜里沙が手を挙げて立った。麻衣子は亜里沙を指名した。授業の題材は「芥川龍之介あくたがわりゅうのすけ」の著書、「羅生門らしょうもん」だ。


亜里沙「ある日の暮れ方のことである。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。広い門の下には…」


悠理「ふぁぁぁ…、電子ノートっていうものを渡されたけど、これに何を書けばいいんだろう…」


亜里沙「なぜかというと………⁉︎」



「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………‼︎」



拓哉「ん…、うわぁ…‼︎」


陸翔「な…、何だ⁉︎」


浩樹「か…⁉︎」


玲「ねえ、みんな‼︎ 外見て‼︎」


 玲がそう言うとクラスメイト全員と麻衣子が窓に近寄って外を見た。拓哉はびっくりした拍子に椅子が後ろに倒れてしまった。


昇太「あれは一昨日のアーマード・ギアの大軍‼︎ それにあれは…、ゲッ………⁉︎ く…、く…、黒い凶星だぁぁぁ…、呪われるぅぅぅ‼︎」


松山「ヒィィィィ…‼︎」


竹原「なんまいだー、なんまいだー…‼︎」


梅澤「くわばら、くわばら…、くわばら、くわばら…‼︎」


 昇太は慌てて逃げ出した。悠理のv phoneに緊急回線で直虎から通話がかかってきた。杏花・麻里奈・萌・明日美も同時に緊急回線に出た。



直虎「もしもし、大変よ‼︎ 黒い凶星が現れたわ‼︎」


G・T「ええっ…‼︎」


直虎「明日美は大学から直接来て‼︎ 残りの4人はすぐに隊員がそっちへ行くから、校門で準備して待ってて‼︎」


G・T「了解ラジャ‼︎」



明日美「教授‼︎ 失礼します‼︎」


大学教授「はい、どうぞ気をつけて〜」


 明日美はすぐに支度をして、校庭に置いてある車で最終自衛隊総司令部へ向かった。



悠理「先生、失礼します‼︎」


麻衣子「えっ…、どうしたのですか、大和くん⁉︎」


悠理「ちょっと用事が…‼︎」


麻衣子「ああ…、なるほど‼︎ 大和くん…、ちょっとこっちへ‼︎」


 麻衣子は悠理を教室の外へ連れ出した。



麻衣子「立花さんと言う方から事情は聞いてますよ。みんなには黙っておくから、気をつけていってらっしゃい‼︎」


悠理「はい、ありがとうございます‼︎」


 麻衣子は悠理を景気よく送り出した。



麻衣子「さあ、みなさん‼︎ 席へ戻って下さい‼︎ 授業を再開しますよ‼︎」


亜里沙「でも麻衣子先生、大和くんが…‼︎」


麻衣子「彼はちょっと体調を崩して保健室へ行きました」


 悠理たちは急いで支度をして走って校門へと向かった。学校中の生徒たちが機甲十字軍のアーマード・ギアを見て騒いでいる。



男子生徒たち「おいおいヤベェぜ‼︎ また一昨日のアーマード・ギアの大軍だぜ‼︎」


女子生徒たち「杏花ちゃんと麻里奈ちゃんと萌ちゃんは、どこ行ったの⁉︎」


※三村剛史=以下、三村と略。


三村「こらお前たち、騒ぐな‼︎ 早く教室へ戻れ‼︎」


天野「学生の本分は勉強です‼︎ みなさん、宇宙連邦政府軍と最終自衛隊を信じて待ちましょう‼︎」


田中「どうせ…、どうせ地味で影の薄い私の言うことなんか…、誰も聞いてくれないんですよ〜〜〜…」


ナオミ「ん〜、みんな子供ね♡」



悠理・杏花・麻里奈・萌「はぁ、はぁ、はぁ…‼︎」



 悠理たちが校門にたどり着くと、隊員たちがトラックで迎えに来ていた。


最終隊員A「お前たち、早く後ろに乗れ‼︎」


 悠理たちはトラックの後ろに乗り込んだ。


最終隊員B「お前たちのパイロットスーツも中に準備してある。こっちが男子でこっちが女子だ。」


杏花「悠理…、覗いたらブン殴るわよ…‼︎」


悠理「の…、覗かないよ‼︎」


 悠理たちはそれぞれ男子と女子に分かれてパイロットスーツに着替えた。




【ネオ新宿区 都心近郊】


 着替えが終わり最終自衛隊総司令部に到着すると、悠理たち5人は急いでバスターシリーズに乗り込み出動した。それに続いて隊員たちも防人・飛燕で出撃した。



G・T「最終決戦部隊Gトルーパーズ、ここに見参‼︎」



直虎「ったく…、ここまでレーダーに引っかかることなく近づくなんて…、黒い凶星のアーマード・ギアは、一体どんなステルス機能を搭載しているのかしら⁉︎」


「だいぶお困りのようだな、直虎…」


直虎「本当にそうよ‼︎ あなたもそう思わな………⁉︎ な………、ななな…⁉︎ 何でアンタがここに⁉︎」


「よっ…、久しぶり」


 そこにいたのは、直虎の元恋人で最終自衛隊員でもある福山滋だった。


富士山「おお、福山くんか‼︎ よく来てくれた‼︎」


※福山滋=以下、福山と略。


福山「ご無沙汰してます、長官‼︎ 「最終自衛隊中部方面隊さいしゅうじえいたいちゅうぶほうめんたい」から帰任して参りました‼︎」


直虎(何でよりによってコイツが…)



杏花「さて、黒い凶星はどこに…?」


萌「あっ⁉︎」


麻里奈「どうしたでござるか?」


悠理「向こうからものすごいスピードで何かが飛んで来る‼︎」


明日美「ああっ‼︎」


 黒い凶星ことミアが駆る漆黒のスーパーアーマード・ギア、デア・シャッテン・ローゼが高速で4機のハーケンローゼス仕様のパンツァーカイルを連れて、Gトルーパーズの目の前に立ち塞がった。



G・T「あれは⁉︎」



 ジェネバスターが全体的に鋭角的なフォルムなのに対し、デア・シャッテン・ローゼは全体的に丸みを帯びたフォルムで、機体の胸の部分には紅い光球、左腰の部分には刀剣、額には薔薇の茎をイメージしたようなチェーンが付いていた。


 その立ち姿はインド神話の鬼神である夜叉天または羅刹天、あるいは戦いの神である阿修羅天の化神に見えた。



ミア「バイオフィードバックシステム…、異常なし。システムオールグリーン…。」



 デア・シャッテン・ローゼのコクピット内は、悠理たちが搭乗するバスターシリーズと似た作りになっており、コントロールバーは万能型であるバスター1と同じハンドルとパネル式になっている。


 ハンドルは黒い大型バイクを模したような形をしており、それを操縦しているミアは黒いパイロットスーツとも相まって、女性ライダーを彷彿とさせた。


 ミアが調整を終えると、デア・シャッテン・ローゼの目と胸の部分の紅い光球が禍々しく光り出した。



ミア「大覚‼︎ 最終殲滅兵器、阿修羅天デア・シャッテン・ローゼ‼︎」



G・T&最終自衛隊一同「……………‼︎」



 禍々しくも美しいスーパーアーマード・ギア、デア・シャッテン・ローゼの姿に息を飲むGトルーパーズと最終自衛隊一同。


 ミアとGトルーパーズは、その互いの底知れぬを肌で感じ取り合い、対峙した。




【次回予告】


ナレーション:ナオミ・マッコーラム


 天越学園の養護教諭、ナオミ・マッコーラムよ♡ ナオミって呼んでね♡


 大和くんたち、みんな頑張ってるわね。先生、感心よ♡


 だけど敵もみんな強くて油断できない感じで、おまけによく分からないけど、戦う度にどんどん強くなるシステムを持ってるみたいね。


 なかなか刺激的♡


 次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎


 【第29戦記 戦闘帰還バトルフィードバック


 と言うお話らしいわよ。楽しみにしてたら、きっといいことあるわよ♡

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