第21戦記 大和悠理
激戦に疲れ果て、深い眠りにつく少年にまた謎の声が語りかけた。
–少年の夢の中–
「プロトY…、プロトY…‼︎」
少年「プロトY…⁉︎ それが…、僕の名前なの…⁉︎」
「それがお前の名前かどうかは知らない…。ただお前がそう呼ばれているから…、そう呼んでいるだけさ…」
少年「君は…、何故僕のことを知っているの…⁉︎」
「俺とお前は…、魂を共有する兄弟みたいなものだからな…」
少年「魂を共有する兄弟…⁉︎ よく分からない…。君は…、何て言う名前で呼ばれているの…⁉︎」
「俺か…⁉︎ 俺は…、俺は……、俺は………、俺は……………」
少年が謎の声に名前をたずねると、段々と声は太く大きくなり始め、真っ白な世界がブラックホールに吸い込まれるかのように歪み出した。
少年「う、うわぁぁぁぁぁぁ…‼︎」
少年「はっ…⁉︎」
明日美「きゃっ…⁉︎」
少年「はあっ…、はあっ…、はあっ…‼︎」
少年が勢いよく飛び起き、明日美はそれに驚いてしまった。
少年「はあっ………、はあ………。」
明日美「大丈夫…⁉︎」
少年「ええ…。また…、ちょっと変な夢を見ただけです…。ああっ…、頭が…‼︎」
明日美「ああっ…、無理しなくていいのよ。ゆっくり寝てて。今、水を持ってくるわ」
明日美は水を取りにホスピタルルームを出た。少年は少しの間仰向けになって、ボーっと天井を見つめていた。
少年「プロトY…、プロトY…」
明日美「はい、水よ」
少年「あ…、はい」
少年はゴクゴクと水を飲み干した。少年が一言お礼を言おうと明日美の方を見た時、直虎とGトルーパーズがホスピタルルームに入ってきた。
直虎「よっ…、少年‼︎ みんなでお見舞いに来てあげたわよ‼︎ 元気になったかな⁉︎」
少年「はい…」
直虎「どう、明日美…⁉︎ 少年とはいい感じ⁉︎ もしかして、お邪魔だったかしら…⁉︎」
麻里奈「ヌフフ…、これは熱愛の予感か…⁉︎」
明日美「ですから、そんなんじゃありません‼︎」
萌「とか言って、本当はちょっと気があったりして…」
明日美「も…、萌ちゃん…」
明日美は恥ずかしそうに少し顔を赤らめた。
杏花「まあ、それはさておき、少年もGトルーパーズの一員だから、みんなで挨拶くらいはしておかないとね」
明日美「そうね、杏花ちゃん」
直虎「それじゃあ、改めて軽く自己紹介といこうかしら。
私は立花直虎。日本人で階級は少佐。最終自衛隊総司令部の司令官をやっていて、小学校を卒業してすぐに入隊した戦闘のエキスパートでもあるわよ。
年齢は27歳で独身、彼氏もいないし結婚願望もないわ」
杏花「私は杏花・E・ティアー。火星生まれ火星育ちのアメリカ人と日本人のハーフで帰星子女よ。年齢は17歳で水泳の地球代表選手、格闘ならそこら辺の男なんかに負けないわ」
麻里奈「拙者は皇麻里奈。日本人で大人気アイドルグループ、Space Girls369、略してSGL369の神メン13の一角でござる。
年齢は17歳でIQ500の天才少女、全宇宙から天才が集まる「MENTOR《メンター》」の会員でもござるぞ」
萌「あたしは雪月萌。年齢は16歳なんだけど、今までずっと養護施設で育ってきたから出身は分かんない。
一応、小説家で代表作は銀閣寺とか、生まれ変わったら超イケメンだった件について…。とか。あ、一応直江賞も受賞したことがあるよ」
明日美「私は華園明日美。日本人とスイス人のハーフで年齢は23歳、グラビアアイドルをやっているわ。
出身のこととかあまり詳しいことは言えないんだけれど、幼い頃から色んな英才教育を受けてきた戦闘のエキスパートで、特に銃の腕前は一級品よ」
直虎とGトルーパーズはそれぞれ少年に軽く自己紹介をした。
少年「へえー…、みなさん、すごいんですね…」
萌「す、すごいんですねって…」
麻里奈「さてはお主…」
杏花「私たちの名前聞いたことない訳⁉︎ 私たち一応有名人よ‼︎」
少年「ごめんなさい…、僕には記憶が全然ないんです。自分の名前も出身も、全く分からないんです。ああっ…、頭が………」
頭痛が走り、少年は少し頭を抱えた。
明日美「ああっ…、大丈夫…⁉︎」
直虎「コラコラ…、そう無理に問い詰めないの…」
直虎は杏花を静止した。そして、しばらく間を置くとそっと寄り添うようにして少年に近づいた。
直虎「ねえ、君…、出撃する前に私に名前を言おうとしなかった…⁉︎ 確か…プロト…」
少年「プロトY…」
直虎「えっ…⁉︎」
少年「プロトY…」
萌「プロトY…⁉︎」
杏花「プロトY…⁉︎ そんな名前あるの…⁉︎」
麻里奈「化学物質…、元素記号でござるか…⁉︎」
少年「プロトY…、誰かが僕をそう呼ぶんです…」
明日美「プロトY………。プロトZと何か関係が…?」
少年「今の僕にあるのは…、それだけなんです…」
少年は少し寂しそうな表情をしてうつむいた。
周囲がどう言葉をかけてやればいいか分からずに黙り込んでいる中、直虎は少年に向かって話しかけた。
直虎「プロトYなんて名前じゃかわいそうね…。じゃあ少年、私が君に名前をつけてあげる」
G・T「…⁉︎」
Gトルーパーズは不思議そうな顔をして直虎の方を見た。
直虎「Yの頭文字を取って名字は大和…、下の名前は悠理…。
そう、君の名前は「
少年「大和…、悠理…⁉︎」
直虎「そう…、大和はここ日本の遠い昔の呼び名、遠い昔の旧世界で勇敢に戦った戦艦の名前でもあるの。そして悠理という名前には、永遠という意味がある。
つまり永遠の大和…、どこまでも続く日本という意味が…、私たち最終自衛隊の信念の象徴を現す名前でもあるわ‼︎」
少年「大和悠理かあ…」
少年は少しだけ微笑んだ。
直虎「どう…⁉︎ 気に入ってくれた⁉︎ ちょっと押しつけがましいかしら…⁉︎ 嫌なら違う名前を…」
少年「いや…、僕…その名前が気に入りました。大和悠理…、いい名前ですね」
直虎「よかった、気に入ってくれたのね‼︎ じゃあそういうことで、これからよろしくね、悠理くん‼︎」
※少年=大和悠理=以下、悠理と略。
悠理「はい、直虎さん」
杏花「カッコいい名前なんかつけてもらってさ…。よろしくね、悠理‼︎」
麻里奈「よろしく頼みまする、悠理殿‼︎ 拙者も「
萌「よろしくー、悠理くん」
明日美「素敵な名前ね…。よろしくね、悠理くん」
悠理「はい…、よろしくお願いします‼︎ あの…、華園明日美さん…‼︎」
明日美「なぁに…、悠理くん⁉︎」
悠理「その…、さっきはお水ありがとうございます。おかげで少し気分がよくなりました…」
悠理は顔を赤くし恥ずかしそうに明日美にお礼を言った。
明日美「ああ…、そんなのお安い御用よ。困った時はお互い様だからね。これから一緒に頑張りましょ♡」
明日美は軽くポンポンと悠理の肩を叩いた。悠理は照れくさそうに笑みを浮かべながら上目遣いで明日美を見た。
明日美(ウフフ…♡ 照れてるのね、可愛い子…♡)
悠理(華園明日美さん…、明日美さんかぁ…。綺麗な人だな………)
直虎「みんな、時間も遅くなってきたから、今日は終わりにして帰りましょう‼︎」
G・T「はーい‼︎」
直虎「とは言っても、明日美以外はお家がないのよねー…。
ま…、私がみんなを巻き込んだ責任もあるから、未成年組のみんなは私がまとめて面倒を見てあげるわ‼︎」
杏花「えっ…、本当にいいの⁉︎」
直虎「もちろん‼︎ 私はまだ仕事があるからちょっと遅くなるけど、先に私のマンションに上がってていいわよ」
麻里奈「直虎殿のマンション、楽しみでござる…」
萌「わーい、ありがと‼︎ ところで直虎さん、悠理くんはどうするの⁉︎」
麻里奈「それもそうでござるな…」
杏花「そうね…、悠理って年齢はいくつなの⁉︎ 見たところ私たちとあまり変わらなさそうだけど…」
直虎「悠理くんは16歳よ」
明日美「えっ…、何故分かるんですか…⁉︎」
直虎「GSCを照合した時に、体細胞の変化の経過やテロメアから肉体年齢は16歳と判明したわ。
それに、私はみんなの上官よ。上官が部下のことを知らないでどうするの⁉︎」
杏花「16歳かあ…」
麻里奈「拙者と杏花姫の一つ年下でござるな…」
萌「あたしと同級生」
明日美「可愛い年下の男の子なのね♡」
悠理「直虎さん、僕も大丈夫なんですか…⁉︎」
直虎「何言ってるの、いいに決まってるじゃない‼︎ 未成年は私がまとめて面倒を見るって言ったでしょ⁉︎」
悠理「あ、ありがとうございます‼︎」
杏花「ちょっと悠理‼︎ 私たちとの共同生活は結構だけど、お風呂覗いたりスケベなことしたら承知しないわよ‼︎」
悠理「し、しませんよそんなこと‼︎ というか男性って、何のためにそんなことするんですか⁉︎」
杏花「あ…、あのね…、男っていうのはみんなそういうのに興味があるもんよ‼︎ 特に私たちみたいなナイスバディーの有名人なんかはね‼︎」
悠理「へえ…、そうなんですか…⁉︎」
女性陣「……………。」
悠理の発言に女性陣はキョトンとした顔をしていた。
杏花「コ…、コイツー‼︎ 言わせておけばー‼︎」
麻里奈「まあまあ姫…、抑えて抑えて…」
直虎「さて、そろそろ仕事に戻らないといけないから私のマンションのスペアキー渡しておくわね」
杏花は直虎からスペアキーを受け取った。
直虎「マンションの住所と部屋の位置はスペアキーの超小型端末に記録されているから、それを見てナビ通りに辿っていくのよ。
お腹が空いたり喉が渇いたら適当に部屋の中にあるものを食べたり飲んだりしていいわよ。でも、お酒はダメよ。みんなまだ未成年だからね」
萌「ありがと、直虎さん」
直虎「そうだ明日美、今夜うちへ来る⁉︎ あなたはもう20歳過ぎてるから、よかったら二人で飲まない⁉︎」
明日美「すみません立花司令。今夜はちょっと用事があるんです。また今度お伺いしますね」
直虎「そう…、じゃあ気をつけて帰ってねー」
明日美「はい、お先に失礼します」
杏花「じゃあねー、明日美‼︎」
麻里奈「また明日‼︎」
萌「ばいばーい‼︎」
悠理「明日美さん、気をつけて‼︎」
直虎は仕事に戻り、明日美は家へと帰り、悠理たちは直虎のマンションへ向かった。
杏花「さあ、帰ろう‼︎」
悠理・麻里奈・萌「うん‼︎」
明日美(みんな楽しそうね…。私もちょっと行きたかったな…)
記憶も名前も何もない少年に、直虎は大和悠理と言う名前と居場所を与え、悠理は成り行きではあったが正式にGトルーパーズの一員として迎え入れられた。
悠理は心なしか、自分の中にあるポッカリと空いた穴を埋めてくれる仲間という存在に巡り会えたような嬉しさから、少し微笑んでいた。
明日美は、そんな悠理たちを微笑ましそうに振り向いて見送った。
【次回予告】
ナレーション:
阿蘇部晋太郎です。今後ともよろしくお願いいたします。
急なことではありますが、Gトルーパーズのみなさんはこの春から高校生になられるそうですよ。私にもそんな時代がございました。
いやぁ、本当に楽しみで胸が踊りますね。
私としてもこの世界が平和なら、彼ら彼女らにはごく普通の高校生や大学生として毎日を過ごして欲しいところです。
どうしてこのような世界になってしまったのでしょうかね?
次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎
【第22戦記 新春の予感】
と言うお話だそうです。私も楽しみですな。
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