第22戦記 新春の予感

 進学や就職で新生活をスタートさせ、新しい人との出会いに胸を弾ませる若者たち。


 もちろん悠理たちにも、その予兆は訪れていた。




【ネオ新宿区 新歌舞伎町】


 ここはネオ新宿区の新歌舞伎町。夜でも灯りが消えることはない。


 表向きは華やかで享楽に酔いしれる若者たちでひしめき合っているが、裏では無法者がたむろし、裏社会の組織が闇取引を行う、混沌とした街である。


 その裏路地を一人の男が歩いていた。


流山「ちくしょう…‼︎ 出所祝いで若頭に出世してアーマード・ギアまでもらったのによ…。出所早々、散々だったぜ…‼︎ あのクソガキ…、あーっ…‼︎ ムカつくぜー‼︎」


 覚醒したばかりの暴走した悠理から何とか逃げ延びた流山。機嫌が悪く周囲に当たり散らしている。


 そこへ数人の黒服の男と女が近づいてきた。


流山「あぁ…、何だぁ⁉︎ 俺に何か文句あんのかぁ…⁉︎ んっ…⁉︎ アンタらは宇宙連邦政府のエージェント‼︎

 なあ頼む…、このまま帰っても俺は星川のオヤジたちにドヤされちまう‼︎ 何とか助けてくれよ‼︎」


 エージェントたちはプラズマガンを流山に向けた。


「カチャ…」


流山「な………、どういう意味だよ⁉︎」


エージェント「お前はもう用済みだ」


流山「ま、待ってくれ‼︎」


「ビューン‼︎」


流山「うっ………、そんな………っ‼︎」


「ドサッ…」


エージェント「いくぞ」


 流山はプラズマガンで撃たれて倒れた。


 ジェネバスター奪取作戦の口封じのため、徳川が根回ししたエージェントに流山は消されてしまった。




【立花直虎のマンション】


 ネオ新宿区内にある直虎のマンションにたどり着いた悠理たち。かなりの高層マンションで驚いているようだ。


杏花「ここが直虎のマンションね」


麻里奈「50階建の4棟連結型…、立派なタワーマンションでござるな」


萌「玄関が高級ホテルみたい」


悠理「見晴らしがよさそうですね」


 悠理たちはマンションの外観や内装を一通り見回したあと、エレベーターに乗った。


杏花「直虎の部屋は173B、17階3番棟のB号室ね」


 悠理たちは直虎から渡されたスペアキーで部屋へ足を踏み入れると電灯を点けた。


杏花・麻里奈・萌「お邪魔しまーす。ゲッ………⁉︎」


杏花「何なのよ、この散らかり様は…⁉︎」


麻里奈「随分と生活感のある部屋でござるな…」


萌「空き缶だらけ…。飲みかけも残ってる…」


悠理「これが女性の部屋なんですね」


杏花「んなわけないでしょ‼︎ 直虎がズボラなだけよ‼︎

 全く、足の踏み場もないないんだから。これじゃ嫁の貰い手もなくなる訳よ」


萌「せっかくいいマンションに住んでるのにもったいない」


麻里奈「これからお世話になる部屋、綺麗にするでござる」


杏花「家賃タダで住むからには何かしないとね」


 杏花と麻里奈は部屋を掃除し始めた。



悠理「誰かな、この人…?」


萌「横に写ってる男の人、ちょっと気になるね」


 悠理は写真立てを見ていた。写真には直虎が写っており、その隣には長身のハンサムな男が写っていた。



杏花「悠理、萌‼︎ アンタたちも手伝いなさい‼︎」


悠理「あ…、すみません、杏花さん」


杏花「さん付けで呼ばないでよ、気持ち悪い‼︎ それに直虎や明日美はともかく、別に私たちにまで敬語を使わなくていいから‼︎」


悠理「分かったよ、杏花。直虎さんが写ってる写真のこの男の人が気になるなあって、萌と話してたんだ」


麻里奈「男子とな⁉︎」


杏花「ふーん…、どれどれ…」


 杏花は悠理が持っていた写真立てを手に取った。すると杏花は写真立てを手に持ったまま固まってしまった。



悠理「どうしたの、杏花?」



杏花「か………、か、キャーーー、カッコいいー♡ 長身でスタイルもよくて程よく引き締まった身体つきで、顔もイケメン俳優みたいでかっこいいじゃない♡」


 杏花は一気にハイテンションになり、目をキラキラと輝かせた。



萌「杏花ちゃん、さっきまでと全然テンションが違う」


麻里奈「これが、杏花姫がツンデレで可愛すぎる水泳選手と言われる由縁でござるか」


悠理「女性ってみんなこういう男性が好きなんだね」


杏花「はぁぁぁ…♡ この人、名前はなんて言うんだろう? 年齢は、出身は、趣味は、特技は、好きなタイプは? 直虎の彼氏、婚約者?

 あ、でも直虎は彼氏もいないし結婚願望もないって言ってたから元彼かな?


 気になるなぁ…、この人♡ 直虎が帰ってきたらこの人のこと聞いてみよーっと‼︎」


萌「杏花ちゃん…、一人ではしゃぎすぎ…」


麻里奈「掃除に手がついておらんでござるよ…」


 直虎が仕事から帰ってきた。


直虎「ただいまー‼︎」


悠理「お帰りなさい、直虎さん」


直虎「みんな、帰りに飲み物や晩ご飯買ってきてあげたわよ‼︎」


悠理「ありがとうございます」


直虎「あら、掃除やってくれてたのね。助かるわ」


麻里奈「お安い御用でござる」


直虎「ところで、杏花? そこで何してるの?」


悠理「それが…」


萌「偶然直虎さんと男の人が写った写真を見て…」


直虎「まさか…⁉︎」


 直虎の姿を見た杏花は一気に距離を縮めてきた。


杏花「ねえねえ、直虎♡ 直虎とこの人ってどういう関係なの⁉︎」


直虎「私の元彼よ。それがどうかしたの…?」


杏花「私この人すごくタイプだから、思わず一目惚れしちゃった♡ 名前は、年齢は、趣味とか特技は⁉︎」


萌「女子だねー、杏花ちゃん」


直虎「ちょ…、ちょっと、近いってば‼︎」


 直虎は杏花を少し引き離した。


直虎「その人は「福山滋ふくやましげる」って言ってね、私が一時期休隊して大学へ行ってた頃の知り合いで、3年くらい付き合ってたの。

 彼もどこかで戦術アドバイザーをやってるって聞いてるけど、私は別に未練も何もないわ」


杏花「そうなの。じゃあ、私彼女に立候補しても大丈夫かな?」


直虎「別にいいわよ」


杏花「やったぁ‼︎ どこかで会えないかな、福山さん♡」


直虎「さっ、みんなお腹も空いてるでしょう? 晩ご飯にしましょう‼︎」



全員「いただきまーす‼︎」



直虎「はーーーっ、仕事のあとの一杯は最高ね‼︎ 毎日この瞬間のために生きてるって感じ」


 直虎はあっという間に缶ビールを1缶飲み干してしまった。


麻里奈「ほお、いい飲みっぷりでござるな、直虎殿‼︎」


杏花「そんなに飲んで大丈夫なの? 明日も朝早いんでしょ?」

 

直虎「大丈夫、大丈夫‼︎ こんなのいつものことだから」


萌「ん〜、「24《トゥエンティーフォー》マート」の抹茶せんべいは最高だね」


悠理「この緑茶っていうのも美味しいね」


杏花「そういえば、戦闘がない日は私たちはどうすればいいのかな?」


麻里奈「拙者たちも、戦闘シュミレーションや訓練に参加するでござるか?」


直虎「あ〜、そうそう、大事なことを言い忘れてた‼︎ あなたたち未成年組は、学校生活をしてもらうわ‼︎」


悠理・杏花・麻里奈・萌「学校生活⁉︎」


直虎「あなたたちは兵士でも、年齢は高校生だからね。戦いだけじゃなく、普通の高校生として平和な日常を過ごすことも必要よ」


杏花「学校か…。そういえば私、学校行ったことないのよね」


萌「私も」


麻里奈「拙者は中学校までなら。それ以降は、アイドル活動に専念していたでござる」


悠理「僕はいまいちイメージがつかめないな」


直虎「学校の名前は私立高校、天越学園。新中野区にある学校で、ここからけっこう近いわよ」


萌「天越学園?」


麻里奈「途中入学の手続きはどうするでござるか?」


直虎「それなら、長官がしてくれてるから大丈夫よ。それに有事の際の戦闘や芸能・スポーツ・創作活動などを最優先できるコースに編入してあるから、戦闘が始まったら授業を抜け出したり、ライブや大会があったら休みを取ってもO Kだわ。


 あと、これはあなたたちのv Phoneよ。隊員専用の緊急回線が入っているから、何かあったらそれで私に連絡してね。青春の思い出をいっぱい作って、楽しんでくるのよ‼︎」


 悠理たちは直虎から渡されたv Phoneを手に取った。


杏花「何だかちょっと楽しみね」


麻里奈「新生活の始まりに胸が踊るでござる」


萌「私も一度制服着てみたかったんだよね」


悠理「上手くやれるといいなあ」


直虎「晩ご飯が終わったら片付けて、お風呂に入って寝る支度をするのよ。私はまだちょっとやることがあるから、みんな先に寝ててね」


悠理・杏花・麻里奈・萌「はーい」


 楽しく会話をしながら食事をする一同。食事や入浴を済ませると寝る支度をし、これから始まる新生活に期待を膨らませて眠りについた。




【華園明日美のマンション】


 明日美は新港区の富裕層ばかりが住む100階超えの超高級タワーマンションで一人暮らしをしている。


 悠理たちが寝始める頃、明日美はとベランダで夜景を見ながら誰かとv Phoneで電話をしていた。



明日美「もしもし………」


「………………」


明日美「そう…、それならよかった…」


「………………」


明日美「私は何とか上手くやってる…」


「………………」


明日美「そっか…、はまだ私のことを………」


「………………」


明日美「私も頑張ってみるね…。じゃ、おやすみ…、母さん…」


 明日美は通話を終えた。



明日美「はあ…、そろそろお風呂にでも入ろうかな…」



 明日美はシャワーで身体を流し髪や身体を洗ったあと、湯船に浸かった。とても綺麗で豪華な内装の浴室で、辺りはアロマのいい香りに包まれている。


明日美「ふぅー………、フンフフ〜ン…♪」


 明日美は気持ちよさそうに鼻歌を歌い、ゆっくりと手足をマッサージし始めた。

 ピンと真っ直ぐに伸びた白く美しい手足がお湯で濡れると、さらに色気を増してより美しく見える。


 明日美は湯船から上がると、もう一度シャワーで軽く身体を流し浴室から出て、身体をバスタオルで拭いた。


明日美「はあ………」




-明日美の過去の回想-




父「明日美、その手紙は何だ?」


明日美「ああ…、これはね、高校の同級生の…」


父「恋文か…」


明日美「生まれて初めて出来た彼氏なの‼︎ 私、今まで全然男の子と縁もなかったし、勇気を出して告白してくれたがすごく可愛いくて…、つい嬉しくって…」


父「破り捨てなさい…」


明日美「えっ…?」


父「今すぐ破り捨てなさい‼︎」


明日美「でも………」


父「いいか…、人間には付き合う価値のある人間とそうでない人間がいる。一般庶民の男など取るに足らん‼︎」


明日美「確かには一般家庭の生まれだけど、必死に努力して私と同じエリート校に入学したのよ。だとか…、一般庶民だとか…」


父「関係ないと言いたいのか? その男がどれほど努力したかは知らないが、一般庶民は一般庶民、のエリートはのエリート、お前とは生まれた時からすでに次元が違うのだ‼︎


 その男もどうせ財産、そしてお前の美貌と身体だけが目当てで近づいて来たに違いない…。私はそんな風に甘い汁を吸い尽くす、俗物のような男を何度も見てきた‼︎」


明日美「父さんは…、いつもそればっかり…‼︎」


父「これは、お前のためでもあるのだぞ‼︎ なら、それにふさわしい付き合いをしなさい‼︎」


明日美「父さん…、もう止めて…………」




明日美「はぁ………」


 明日美は少し憂鬱な気分になっていた。


 明日美は風呂から上がると丁寧に髪の水滴をタオルで拭き取り、ドライヤーで乾かしたあとはしっかりと保湿やスキンケアをし、寝る支度をしてベッドで眠りについた。



 悠理たちが学校生活に期待を膨らませる一方で、明日美は辛いを思い返して感傷に浸っていた。


 明日美の、それは彼女が最終自衛隊へ入隊をしたことと何か関係があるのだろうか?




【次回予告】


ナレーション:アーサー・ダグラス


 アーサーだ‼︎ 私の名はすでに知っておろう。


 Gトルーパーズの連中は明日から学校生活が始まるそうだな。


 兵士ともあろう者が、学校などと言うぬるま湯に浸かっていてどうする‼︎ と言いたいところだがそれもよかろう。


 何…、入学早々トラブルだと…⁉︎ 貴様それでも兵士か⁉︎


 兵士の男が、一般人の男なんぞにやられてどうする‼︎


 次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎


 【第23戦記 兵士たちの青春】


 と言う話らしいな。楽しみにしておけ‼︎

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