第24戦記 傷心

 亜里沙にケガを負わせたことで不本意にも拓哉の恨みを買った悠理。


 杏花たちは拓哉を説得できるのか?




【天越学園】


拓哉「テメェは亜里沙にケガさせたんだ‼︎ 幸い軽い傷だったけどよ、亜里沙に…、亜里沙にもしものことがあったら…‼︎」


悠理「……………」


 悠理は返す言葉がなく、黙り込んだ。


拓哉「おい、何とか言えよ‼︎」


陸翔・浩樹・翔太・玲「拓哉っ‼︎」


 陸翔たちが駆けつけて拓哉を止めに入った。


浩樹「やめろ、拓哉‼︎」


陸翔「拓哉、やりすぎだ‼︎」


昇太「拓哉くん、暴力じゃ何の解決にもならないよ‼︎」


玲「そうよ、拓哉‼︎」


拓哉「離せ‼︎ 亜里沙の痛みに比べれば‼︎」


悠理「もし…、なんて言ったら…?」


陸翔・浩樹・昇太・玲「…⁉︎」


拓哉「はあっ…⁉︎」


悠理「もし…、僕には何もと言っても…、君は信じてくれないんだろう…?」


拓哉「テメェ、ふざけっ…‼︎」



杏花「やめなさいっ‼︎」



 拓哉が陸翔たちを振り払い、再び悠理を殴ろうとした瞬間、杏花たちが駆けつけて拓哉を静止した。


昇太「まり〜な…‼︎」


玲「萌ちゃん…‼︎」


浩樹「それに、杏花さん…‼︎」



杏花「話すと長くなるけどね、そいつがって話は本当よ‼︎」


陸翔「先輩たちはどうゆう関係で…⁉︎」


麻里奈「それも今は割愛でござる…」


拓哉「アンタらとコイツがどういう関係かは知らねえが、コイツは俺の大事なダチをケガさせた‼︎ だから俺はコイツを殴らねえと気が済まねえ‼︎」


萌「亜里沙ちゃんが許すって言っても…?」


拓哉「何っ…⁉︎」



亜里沙「拓哉っ…‼︎」



 亜里沙が足を痛そうに引きずりながら現れた。足には包帯を巻いている。


亜里沙「お願い、拓哉‼︎ もうやめて‼︎」


拓哉「亜里沙、コイツはお前を…‼︎」


亜里沙「杏花さんたちから少し話は聞いたわ‼︎ 大和くんにはて、自分の過去も出身も、名前すらも分からないんだと‼︎」


拓哉・陸翔・浩樹・昇太・玲「…⁉︎」


拓哉「………」


亜里沙「それにあの時私にケガをさせた少年は、すごく暗くて恐ろしい…、冷たい目をしていた‼︎ だけどそこにいる大和くんは、すごく暖かくて優しい綺麗な目をしている‼︎


 あの少年と大和くんは…、あの少年はここにはのよ、拓哉…‼︎」


拓哉「亜里沙…」


 亜里沙の説得で拓哉は握り拳をほどき後ろへ振り返った。


拓哉「亜里沙がそこまで言うなら、この辺で勘弁してやる…。悪かったな…。ただし、次はただじゃおかねえからな…」


玲「亜里沙、歩ける…?」


亜里沙「大丈夫…」



拓哉(記憶がどうとか…、あの時の少年とは別人だとか…、さっぱり訳わかんねえ…。何者なんだよ…、あの新入生…)


 亜里沙は玲に肩を貸してもらいながら歩いた。



麻里奈「悠理殿、大丈夫でござるか⁉︎」


萌「保健室行った方がいいんじゃない?」


 悠理は痛そうにしながら頬に手を当てた。


悠理「………っ、大丈夫だよ。このぐらい…」


杏花「ったく、アンタも少しはやり返しなさいよ‼︎ 男でしょ⁉︎」


悠理「いいんだよ…、僕が悪いんだ…」


 悠理は杏花たちに連れられて保健室へ行った。



 杏花たちに保健室へ連れられた悠理は、養護教諭の女性に手当てを受けた。


 養護教諭の名は、「ナオミ・マッコーラム」。黒髪のストレートロングヘアーで、長身・端正な顔立ちをした、「アンタレス星人」の女性だ。

 白衣をまとって胸を強調した服を着ており、スラリと伸びた長い足が色気を感じさせる。


※ナオミ・マッコーラム=以下、ナオミと略。


ナオミ「入学早々、喧嘩しちゃった?」


悠理「いっ………‼︎」


杏花「そのぐらい我慢しなさいっ…‼︎」


ナオミ「ウフフ…、杏花ちゃんは手厳しいのね」


 ナオミは消毒綿で悠理の傷をポンポンと軽く何度か押さえると、湿布を顔に貼って手当てした。


ナオミ「これで大丈夫よ」


悠理「ナオミ先生、ありがとうございます」


 悠理たちはお礼を言うと保健室をあとにし、職員室へ向かった。



男性教師「ティアーさんと皇さんは2年F組、雪月さんは1年D組、大和くんは1年B組にそれぞれ編入してもらうね。

 今日はこれで終わり。明日、担任の先生から学園のことや授業のことは詳しく説明してもらうから」


悠理・杏花・麻里奈・萌「はい‼︎」


 男性教師から自分たちのクラスを教えてもらうと、悠理たちは直虎のマンションへ帰宅した。




【新東京大学】


 ここは新文京区にある新東京大学、略して「新東大しんとうだい」。かつて旧世界の日本に存在した東京大学を新しく建て直したものである。


 旧世界から変わらず各地から各分野のエキスパート・天才が集まる超難関大学であり、ここに通っていること自体が一種のステータスである。


 明日美はこの大学の女子大生で今年で四年生。昨年は芸事を磨くために一年休学し、プレアデス星へ星間留学していたが、来年からは院生となるため勉強も忙しくなりつつある。


 新東大では今、二限目の講義が終わり、ちょうど昼休みになったところであり、明日美

は仲の良い二人の女子大生、「佐藤絵梨香さとうえりか」と「ユリ・ラフォーレ」とキャンパスを出て昼食に出かけた。


※佐藤絵梨香=以下、絵梨香と略。


絵梨香「ねえ明日美、お昼どうする?」


明日美「そうね…、最近近くにできたっていう新しいレストランなんてどう?」


※ユリ・ラフォーレ=以下、ユリと略。


ユリ「いいねぇ、行く行く‼︎」



男子大学生A「いつ見てもいいなぁ、この大学の女はハイレベルな天才美女揃いで…」


男子大学生B「特に華園明日美…。あの長身でくびれたダイナマイトセクシーボディ…、それに23歳とは思えない色気と包容力がたまらんぜ…」


男子大学生C「分かる分かる‼︎ あんな女が俺の彼女になったら…」


男子大学生D「やめとけ、やめとけ‼︎ お前じゃ釣り合わねぇって。それに華園明日美は今や大人気グラビアアイドル。しかもだぜ。

 そんなお嬢様で一流芸能人の女、俺ら一般人の男なんか絶対釣り合わねえって」


 男子大学生たちが明日美たちに見惚れながら会話をしていると、お金持ちでキザな男が高級車に乗って現れ、明日美たちに近づいた。



男子大学生E「ハァーイ、君たち‼︎ 今からお昼の時間かい⁉︎」


明日美「ええ…、そうですけど…」



男子大学生A「出た、ボンボン野郎…‼︎」



男子大学生E「だったらいいお店が近くにあるよ‼︎ 僕のパパが高級レストランを経営していてね、新文京区を一望できる景色のいいところなんだ‼︎

 今から僕の車で4人でどうだい⁉︎ もちろん僕のおごりだよ‼︎」


 そう言うと、キザな男は目をキラキラと輝かせながら、明日美に近づき手を握った。



男子大学生E「特に、華園明日美さん…‼︎ 僕は宝石のように…、いや…、宝石よりも美しい君と、素晴らしい景色を見ながら優雅なひとときを過ごしたいんだ…」


明日美「はぁ…?」


 明日美はキョトンとした表情をしていた。


明日美「ああ、分かりました‼︎ 華園グループのところですね‼︎ 私もよく行ってますよ‼︎ 景色もよくてとても美味しいですよね‼︎でも私、今はみんなと普通の食事を楽しみたいんです。


 せっかくお誘い頂いたのに、すみません。お父様に美味しかったですと、伝えて下さいね‼︎」



男子大学生E「な………、んな…、バカな…⁉︎」


 キザな男はショックで地面に膝をついた。



男子大学生B「さすがはお嬢様…」


男子大学生C「断り方も一流ってか…?」


男子大学生D「あのボンボン程度じゃ釣り合わねぇって…」



絵梨香「明日美やるぅ‼︎」


ユリ「さすが「華園財閥はなぞのざいばつ」のお嬢様、男のあしらい方も上品ね‼︎」


明日美「えぇ…、そうかしら…?」




【立花直虎のマンション】


 直虎のマンションへ帰宅した悠理たち。時刻は夕方を過ぎていた。


悠理「はぁ………」


麻里奈「どうなされた、悠理殿?」


萌「まだ頬が痛むの?」


悠理「そうじゃないさ…。僕が知らない間に誰かを傷つけたと知った時から、胸の辺りがモヤモヤするんだ…」


杏花「アンタに記憶がなかった時に、海堂亜里沙って子を傷つけてしまったことをまだ引きずってるのね…」


悠理「うん…」


杏花「いつまでも引きずってても仕方がないわよ。あの子は幸い軽いケガで済んだし、もう大丈夫だって言ってたじゃない」


悠理「でも、もしも軽いケガで済んでなかったらと思うと…‼︎」


杏花「気にしすぎなのよアンタは…。いちいち気にしてたらこれから先、戦っていけないわよ」


麻里奈「杏花姫…」


萌「今はそっとしといてあげようよ…」


杏花「そうね…、今日は直虎も早く帰ってくるそうだけど、そろそろかな?」


直虎「ただいまー‼︎」


悠理たち「お帰りなさい‼︎」


直虎「みんな、初めての学校生活はどうだった?」


麻里奈「今日は短い時間でござったが、これから楽しくなりそうでござる‼︎」


杏花「初日から休み時間にファンが集まってきて大変だったわ…」


萌「忙しくて毎日疲れそう…」


直虎「そうだったのね、悠理くんはどうかしら? あれ…、悠理くん…⁉︎」


 直虎は悠理の頬のケガを見て驚いていた。


直虎「悠理くん、どうしたの⁉︎ そのケガ⁉︎ 誰かとケンカしちゃったの⁉︎」


悠理「そうじゃないんです…」


 悠理は直虎に今日のできごとを話した。



直虎「そう…、そんなことがあったのね…」


悠理「はい、僕が全部悪いんです…、僕が…」


直虎「悠理くん…、そんなに気負わなくったっていいのよ」


悠理「えっ…⁉︎」


直虎「私にも昔はそんなことがあったわ…。作戦途中に戦いに巻き込まれた一般人を救うため、上官の命令を無視したの。

 何とか救うことは出来たけど、私が早とちりしてしまったせいで相手はケガをしてしまったわ。


 そのあとは上官に酷く怒られて、ご飯抜きにされたり、教官室に呼び出されて3時間くらい説教されたりしちゃった。


 誰かを守るつもりが、逆に誰かを傷つけてしまう…、そういうことって兵士じゃない一般人の日常でもあることよ。

 あの時の悠理くんだってきっと、ただ無闇に破壊を繰り返すばかりだっただけじゃなく、無意識の中でも何かを守るために戦っていたんだと思うわ。


 だって、悠理くんはこんなにも優しいじゃない‼︎」


悠理「直虎さん…」


直虎「気持ちだけじゃ守りたいものも守れない…、そういう厳しい現実もあるわ。

 だけど、そういうのは経験を積み重ねていくうちに身についてくるものよ‼︎


 悠理くん、君はもっと自信を持っていいのよ‼︎ 君はもう立派な世界を守るために戦う兵士なんだから‼︎ 悪ガキなんかに負けてんじゃないわよ‼︎」


 直虎が悠理の肩を景気よく叩くと、悠理は明るい表情になった。


悠理「直虎さん…、ありがとうございます‼︎」


直虎「さあ、悠理くんが元気になったところで、今夜は入学祝いにみんなを美味しいところに連れて行ってあげるわ‼︎」


杏花「本当に⁉︎」


麻里奈「楽しみでござる〜‼︎」


萌「何だろう、お肉? お寿司? イタリアン?」


直虎「今夜はヴィーガンレストランで、明日美の紹介で教えてもらった高級レストランなの‼︎

 料理は動物由来の食材を使わない人にも動物にも環境にも優しい料理で、夜景も最高の場所よ‼︎」


悠理「ヴィーガン…? 初めて聞くけど、何か美味しくて身体によさそうですね‼︎

 明日美さんの紹介ってことは明日美さんも来るんですか?」


直虎「そうねえ…、そろそろ来るんじゃない?」


 その時、直虎の部屋のインターホンが鳴った。


直虎「明日美、入って」

 

杏花「明日美‼︎」


麻里奈「明日美殿‼︎」


萌「明日美ちゃん‼︎」


悠理「明日美さん‼︎」


明日美「みんな、改めて入学おめでとう‼︎ 今夜は私もご一緒させてもらうわね‼︎」


直虎「さて、全員揃ったところで出発しますか‼︎ 今夜は私のおごりよ。みんなたくさん食べて栄養と力をつけてね‼︎」


悠理・杏花・麻里奈・萌・明日美「はーい‼︎」


 悠理たち6人は、明日美の紹介の高級レストランへ向かった。



 常に守る立場にいることばかりが兵士ではない。


 それを直虎から教わった悠理であった。




【次回予告】


ナレーション:徳川家人とくがわいえひと


 私は徳川家人。次期総理となる男だ。


 宇宙連邦政府は超古代に栄えた王国の姫を蘇らせるそうだな。


 そして、極秘裏に進められているという計画。その計画が実行された暁には一体何が起こるのか?


 今の私には想像もつかんが、実に興味深い話だ。


 次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎


 【第25戦記 古の歌姫】


 と言う話だそうだ。楽しみだ…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る