(四)-5(了)

「でもまあ、それでも、私たちが使える活動資金が増えることは確かなわけだし」

「そりゃそうですけど……。でも納得できません」

 そう言うと吉見さんは席につき、仕事に戻った。

「まあ、そうだよね……」

 益田は、スチール椅子の背もたれをギシギシ言わせながら背中を押し付けて、大きくため息をついた。

 すると、椅子の背もたれが音を立ててはずれ、益田は床に転げてしまった。

 吉見さんが「大丈夫ですか」と覗き込んできた。

「なあ、吉見さん、新しい椅子を買うお金、あるかな?」

 益田は、苦笑いとともに、自身の無事をそう報告した。


(了)

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バーター 筑紫榛名@9/8文学フリマ大阪 @HarunaTsukushi

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