(三)-5

「人が来るのはともかく、なんなんですか、あの態度。個室が欲しい? うちにそんな余裕はないでしょ! あの人、九時に来て、席に案内してからそんなことをずっとブツブツ言っていましたよ。ずっとですよ、ずっと。聞かされる身にもなって下さい」

「はあ、まあ、でも補助金を受けるにはそれが条件で……」

「そんなことはわかっています。他に人はいなかったんですか! どうしてあんな常識のない人にしたんですか」

「いや、こちらは人を選べなかったし……」

 益田は吉見さんの追求にしどろもどろにならざるを得なかった。吉見の言うことは真っ当だと思ったからだ。

 益田は、椅子の背もたれをギシギシいわせながら背中を押し付けると、大きくため息をついた。


(続く)

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