(三)-4

 そう言われて、益田は「はあ」と気のない返事をした。自宅で仕事というのはともかく、現場の仕事も見ないつもりなのか。厚生省にいたとはいえ、こういう介護施設は自分とは関係ないと思っているのだろうか。

「では、私は外で会議がありますので、失礼」

 そう言うと田端はスポーツバッグを肩にかけ、入口でゴルフバッグを抱えて事務所を出て行った。

 本当に会議なのだろうか、と思いながら益田は入口の方を見ていた。

 パソコンへの入力の仕事をしていた事務の吉見が音を立てて立ち上がり、益田の方を向いた。

「代表。なんなのです、あの人は」

 吉見が強い口調で言った。

「以前話した例の人だよ」


(続く)

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